若者のコミュニケーションは主にソーシャルメディア…意思疎通のメディア利用の実情をさぐる
もはや固定電話はほとんど使われず
自分の意志を特定少数、あるいは不特定多数に、即時、あるいは時間をおいて伝える手法をコミュニケーションと呼ぶが、各種メディアはそのために用いられることが多い。電話も手紙もインターネットのさまざまなサービスも、突き詰めれば自分の意志を誰かに伝えるための道具に他ならない。今回は総務省が2017年7月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)を通じ、個人が意思発信のために用いるメディアの利用状況について、利用時間の観点から確認する。
次に示すのはコミュニケーションメディア、具体的には携帯電話(従来型、スマートフォン双方。通話)、固定電話(通話)、ネット通話(Skype、LINEなどの音声通話(ビデオ通話含む))、ソーシャルメディアの利用、電子メールの利用、計5種類のメディアの利用時間を示したもの。使わない人も利用時間をゼロとして、合算した上での平均利用時間なので、全体としての動向の把握が可能となる。つまり大よそ利用者の利用時間と利用されている度合いそのものを推し量ることができる。
緑系は直接音声によるもの、赤系はデジタル系のもので色を区分しているが、赤系統の棒がよく伸びており、全般的に音声を用いたコミュニケーションの時間より、デジタル系の方が長いことが分かる(今件調査はインターネット経由のものでは無いことに注意。デジタルギャップによる調査結果のぶれは生じない)。
音声通話のみで動向を調べると、10代から20代まではネット通話が多用されている。これはLINEなどによる無料の通話が多用されているからと考えられる。30代以降はネット通話が落ち込み、携帯電話が優勢となる。60代に至っても固定電話はほとんど使われず、携帯電話の利用時間の方が長い。
デジタル系では全体においては電子メールの方が利用時間が長いものの、10代から20代に限ればソーシャルメディアの利用の方が長い。30代以降で一気に逆転の動きがある。若年層におけるデジタルコミュニケーションは、電子メールよりもソーシャルメディアが主流のようだ。もっとも30代以降になるとソーシャルメディアの利用時間は大きく減退し、電子メールによるコミュニケーションがまだまだ主流であることも事実には違いない。
1年間の変移を探る
同じような条件下で行われた前年分、つまり2015年分調査の結果と見比べ、その動きを算出した結果が次のグラフ。マイナスはそれだけそのメディアが使われなくなったことを意味する。
30代で音声通話がいくぶん、20代でネット通話が大きく伸びているなどの特異な動きもあるが、大よそ音声通話系は利用が減り、デジタル系が増えている。若年層から中堅層まではソーシャルメディアが大きく増加し、中堅層以降では電子メールの利用が伸びている。
20代ではソーシャルメディアの増加と共に電子メールが減ってはいるが、30代ではソーシャルメディアと電子メールが共に大きく増加している。両者は大よそ機能的に似通っており、どちらかを多用するようになれば、もう一方との距離を置くのがよくあるパターンなのだが、双方とも増加する動きは興味深い。また20代のネット通話の利用増加はLINEの普及に合わせてのものの可能性はある。
直近年における単年の各メディアの利用状況の比較としては、「若年層がソーシャルメディア主流、中堅層以降は電子メールがメイン」「固定も携帯も音声通話はほとんど使われない」に変わりは無いものの、今後は年次変化にも注目すべきかもしれない。
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※平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
2016年11月26日から12月2日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳から69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時併行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。