女性の若年層と高齢層でパート・アルバイトが大幅増加…非正規社員の現状をさぐる(2024年公開版)
労働市場に関する状況の変化において、注目を集めている事象の一つが非正規社員(職員・従業員)問題。先日総務省統計局から発表された労働力調査の2023年分の結果を基に、現状を確認していく。
最初に取り上げるのは、雇用形態別で区分した、非正規社員に関する直近と近年の人数推移。直近分となる2023年においては、2020年春先から流行が続いている新型コロナウイルスの影響で経済活動が大きな規制を受け、人員調整を受けやすい立場にある非正規職員・従業員が少なからず解雇され、職を失っていた2020年以降の減少傾向が、2022年で転じて増加傾向となっていたが、それが継続する形で前年比で増加を示す結果となった。
具体的にはパート・アルバイト、派遣社員は前年比で増加、契約社員・嘱託は前年比で減少した。
パート・アルバイトは前年比でプラス15万人と大幅な増加を示している。この増加の原因は、詳しくは後述するが、主に女性の若年層と高齢層でパート・アルバイトの数が大きく増加したことによるものである。
「派遣叩き」の影響が薄れた2011年には派遣社員の前年比がプラスマイナスゼロとなり(それまでは「派遣叩き」が世間を騒がせた2009年以降大きなマイナスを示していた)、この期間には同時にパート・アルバイトや契約社員・嘱託が増えているところから、単に労働力が過剰で非正規社員が減らされたのではなく、「派遣社員がバッシングで雇用し難くなったのなら、同じような作業はアルバイトや契約社員に任せよう」との意図を企業が実践していたことが分かる。もっとも2012年にはさらに数は減るものの、その年が2009年以降の動きでは底となる。
2013年では労働力そのものの不足に加え、景況感の回復に伴い労働市場の活性化が生じ、さらに団塊世代の定年退職を受けて高齢層の非正規雇用希望者としての供給が大幅増加。その上、それら高齢層の離職の穴を埋めるための非正規雇用としての求人も増え、いずれの様態でも非正規社員は大きく増加した。ただし雇用者全体数は微増しているが、正規社員は減少し、その分非正規社員は増加していることから、労働の様式そのものの変化(非正規化へのシフト化)が進んでいる現状が改めて見て取れる(正規社員の高齢者が定年退職して非正規として再就職するのだから当然の話なのだが)。
2015年以降は正規社員でも前年比で増加の動きを示しており、同時に非正規社員も増加を継続している。労働市場の回復ぶりや内部構造の変化に加え、企業側の求人内容の変化が生じている実態がつかみ取れる。派遣社員が増えているのは、正規社員・従業員の求人をしても人手を集められない企業が、派遣社員で代用するという需要があるのも一因ではある。
直近の2023年では前年比でパート・アルバイトが大幅に増加したが、派遣社員も、そして正規社員も増加している。素直に解釈すれば労働市場が回復期を迎え、まずは流動性の高い非正規社員が雇われ、さらに正規社員にも雇用の動きが生じていると読める。
2023年時点では職員・従業員全体の62.9%が正規社員、残りがパートや派遣社員、契約社員などから成る非正規社員との計算になる。もっとも上記グラフにある通り、非正規社員は兼業主婦によるパート・アルバイトが多分に含まれていることに注意しなければならない。各算出値はあくまでも老若男女すべてを合わせた結果である。
このグラフを見ると、単純に非正規社員の割合が増加の一途をたどっているように見える(2020年以降で減る動きが生じているのは、新型コロナウイルス流行による非正規社員の大量解雇が生じたのが主要因)。しかし、先の実数のグラフと照らし合わせると、景気後退の影響が出る2008年までは「正規社員数は横ばいか微減」「非正規社員数は増加」との構図、言い換えれば企業は「景気拡大期は非正規社員の増加で、業務拡大に対応していった」のが大きな流れであることが分かる。ちなみに「世間が派遣社員制度を叩き正規雇用を求める動き」と、「不景気で雇用調整が行われ、正規社員が減る時期」「不景気に加えて派遣叩きの世論で派遣市場が縮小する時期」、さらに「パートやアルバイトの増加時期」はほぼ一致する。
直近2023年において非正規社員の雇用にどのような動きがあったのか、その実情が分かるのが、次の男女別・年齢階層別における非正規社員の増減動向。
2023年においては女性の15~24歳と55~64歳・65歳以上、そして男性の65歳以上のパート・アルバイト、男性の55~64歳での契約社員・嘱託・その他で大きな増加が確認できる。一方で女性の35~45歳・45~54歳のパート・アルバイトと契約社員・嘱託・その他で大きな減少が生じている。前者の動きは景況感の回復による業務拡大に伴い、フレッシュな若年層や経験豊富な高齢層の非正規社員を雇う動きか、あるいは高齢層に限れば正規社員を定年退職後に非正規社員として再雇用する流れかもしれない。
大きな減少の動きは男性では生じていないことから、前年に続く形で飲食店や小売店で働いていた兼業主婦が、新型コロナウイルス流行の影響で生じた店舗の休業や業務縮小によって解雇されたのではないかとの推測ができる。あるいはその解雇された人員の代替として、若年層や高齢層が新たに雇われたまでがひとつながりの動きだろうか。
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