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高齢者のネットアクセス機器の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ シニアも気軽にネットライフ。その実情は(写真:アフロ)

パソコンがメイン、スマホもガラケーも大活躍

団塊世代が定年退職を迎え、人口構成比率上でもさらに高齢層の割合が増加し、高齢化社会が進む中で、高齢層のインターネット利用状況に注目が集まりつつある。就業時と比べて多分にプライベートの時間を取れるメリットがある一方、新しい技術には腰が引ける傾向がしばしば見受けられること、さらには身体的な老化に伴い操作に難儀する事例もあることなど、年齢階層間ギャップの原因要素となる点も指摘されている。今回は総務省が2017年6月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を基に、「高齢者のインターネットアクセス機器」を介して、インターネットの利用状況を確認する。

次に示すのは60歳以上に限定して年齢区分を細分化し、「携帯電話」を「従来型携帯電話(フィーチャーフォン)」と「スマートフォン」に分割し、インターネットを利用する際の機器の利用実情を確認したグラフ。他にも主要なネットアクセス機器も併記し、利用実情を把握する。

↑ インターネット機器としての個人の携帯電話やパソコン利用率(年齢階層別/2016年)(全体と高齢者限定)
↑ インターネット機器としての個人の携帯電話やパソコン利用率(年齢階層別/2016年)(全体と高齢者限定)

全体では58.6%と昨年(54.4%)からさらに増加した「スマートフォンによるネットアクセス者」。60代前半ではそれに近しい値にまで達しているが、60代後半以降は値がおとなしめとなる。そしてパソコン経由の利用が60代以上のすべての階層でトップではあるが、従来型携帯電話の利用率も高い。60代後半で両者はほぼ競る形となり、70代以降は従来型携帯電話がスマートフォンを抜いている。

これは「今まで使っていた従来型携帯をそのまま愛用し続けている」「スマートフォンへの買い替えに合わせ、多くの新しい操作を覚えるのは面倒」「メールや簡単なソーシャルメディアへのアクセスができればそれで十分」など、シニア側の利用実状が理由であると考えられる。

「それらの機能のみで十分ならば、どのみちすべての機能が使える、新型のスマートフォンでも特に弊害はないではないか」との意見もあるだろう。しかしスマートフォンは従来型携帯電話と比べて多機能=覚えねばならないことが多い。その上、タッチパネル製品が使いにくいといった、シニア層ならではの問題点が理由として挙げられる(無論スマートフォンの普及がこの数年の間の出来事なので、「昔から愛用」の事例はごく少数のものとなる)。さらにいえば機能を使わなくても料金体系の上で、スマートフォンは従来型携帯電話と比べて割高になるのも、シニア層でスマートフォンが敬遠される一因でもある。

もっとも昨今ではいわゆる「格安スマホ」の展開により、料金面でのスマートフォンのハードルは以前よりも低くなりつつある。ただしその分、利用時のハードルが高く、その点で高齢層にとっては難儀するかもしれない。

1年間で結構変化が見られるシニアのネット事情

直近分の調査結果となる2016年においても、パソコンと並び従来型携帯電話が、シニア層にとって重要なインターネットへの窓口であることに違いは無い。しかし少しずつ情勢は変化を迎えている。次に示すのは前年2015年の状態との差を算出したものだが、高齢層におけるインターネット事情の変化がすけてみえる内容となっている。

↑ インターネット機器としての個人の携帯電話やパソコン利用率(年齢階層別・2015年から2016年への変移)(全体と高齢者限定)
↑ インターネット機器としての個人の携帯電話やパソコン利用率(年齢階層別・2015年から2016年への変移)(全体と高齢者限定)

80歳以上を除けば全体的に、特に60代以降は従来型携帯電話の利用率が大きく下がり、その分スマートフォンとタブレット型端末の利用率が上昇している。これらの層で若年層同様にインターネットの利用端末に関するシフトが生じているのがわかる。

他方80代歳ではスマートフォンやタブレット型端末同様に、従来型携帯電話の値も増加しており、インターネットの利用へ積極姿勢を示しつつも、スマートフォンへは踏み切れない人が少なからずいることがうかがえる。もっともこの層の有効回答数自身が少なめであることから、誤差による結果の可能性も否定できないのだが。

インターネット接続型テレビの利用率は60代で上昇中。興味深い値動きである。テレビの画面の大きさに操作のしやすさを見出したのだろうか。

上記で触れたタッチパネル周りの問題に関して技術的な解決報道はまだ見聞きしていない。一方、料金体型とスマートフォンとの関係については、「使い勝手や外観は従来型」「OSなどはスマートフォン」「料金体系は従来型かそれに近い」様式を有する、ガラホなるカテゴリの端末が登場し、普及が始まっている。さらに上記で言及の通り、「格安スマホ」も大いに注目され、急速に利用者が増えている。今調査でどのような取り扱いがなされるかは現時点では不明だが(回答者の認識としては、ガラホは従来型、格安スマホはスマートフォンに属することになる)、高齢者におけるインターネット利用事情にも、少なからぬ影響を及ぼしそうではある。

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※通信利用動向調査

2016年11月~12月に世帯向けは都道府県及び都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に、企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に対し、郵送・オンラインによる調査票の配布及び回収の形式によって行われている。有効回答数はそれぞれ1万7040世帯(4万4430人)、2032企業。調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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