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「テレビを観ながらネットする」はどこまで浸透しているのか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ テレビを観ながらスマホで情報収集や実況、さらには突っ込みまで

テレビを観ながらネットする、その人たちはどれほどいるのか

最近では双方向性のテレビ受信機による番組も提供される機会が増えてきたが、今でもテレビ(放送)はそのほとんどが一方向性、視聴者は放送される番組を観るだけの「提供される」タイプのメディア。直接のリアクションを求められないことから、いわゆる「ながら」行為が容易なメディアでもある。その特性を活かし、食事をしたり雑誌や新聞を読みながらテレビを観るスタイルも数多く見受けられたが、昨今では携帯電話(従来型とスマートフォンの双方を含む。以下同)などを用いた「テレビ観ながらネットする」様式が増えており、それを前提としたビジネスや番組も登場するようになった。それでは実際に、テレビのリアルタイムでの視聴とインターネットを併用した利用はどれほどまでに行われているのだろうか。総務省の調査「平成27年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(2015年11月14日から11月20日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリングによって抽出し、訪問留置調査方式により実施。13歳から69歳の1500サンプルが対象。アンケート調査と日記式調査を同時併行で実施し、後者は平日2日・休日1日)の結果の公開値を基に、確認していくことにする。

今件において「テレビ(生=リアルタイム)」とはテレビ(テレビ受信機に限らず、パソコンのチューナー接続によるものや、モバイル端末でのワンセグ視聴も含む。要はテレビ番組の視聴)で番組を放送中に観賞すること、「インターネット利用」とは機種・用途を問わずインターネットを使ったサービスを活用することを意味する。

テレビの行為者(連続して10分以上の利用)率は朝食時、昼食時、夕食時とその後の3つの時間帯でピークが生じる。

↑ テレビ(生)の時間帯別行為者率推移(2015年、平日、年齢階層別)
↑ テレビ(生)の時間帯別行為者率推移(2015年、平日、年齢階層別)

それではテレビ番組と相性が良いと言われているインターネットの利用を「併用」している、つまり「テレビ視聴とインターネット利用の並行行為」者率、言い換えれば「テレビ番組を観ながらネットを使っている」人の割合はどのような推移を示しているのだろうか。それぞれの時間帯の全体比を、世代別で見たのが次のグラフ。当然、まずはテレビを観ていなければ回答には該当しえないので、テレビ行為者率そのものの変移と大きな類似関係が生じる。

↑ テレビのリアルタイム視聴とインターネット利用の並行行為者率(平日、年齢階層別、2015年)
↑ テレビのリアルタイム視聴とインターネット利用の並行行為者率(平日、年齢階層別、2015年)
↑ テレビのリアルタイム視聴とインターネット利用の並行行為者率(休日、年齢階層別、2015年)
↑ テレビのリアルタイム視聴とインターネット利用の並行行為者率(休日、年齢階層別、2015年)

まずは平日。全体的な流れとして3つのピーク時間帯に変わりはない。一方でテレビ視聴そのものは若年層よりもシニア層の方が高い行為者率を示しているが、インターネットを利用する割合が低いことから、シニア層の並行行為者率は低め。むしろ若年層の方が高い値を示している。特に20代から30代がずば抜けて高値を示しており、若年層におけるテレビとインターネットの相性の良さがうかがえる。

10代はお昼時は学校に居ることが多いために低めにとどまるが、朝と夕方以降夕食前、そして夜は高め、そして朝は30代が、夜は加えて20代と40代が高めに出るのも興味深い値動き。

休日となると、就学・就業のしばりが無くなり、テレビ視聴そのものの自由度も高まることから、「ながら利用」の値も大きく変化する。午前中では朝食時のピークが1時間ほどずれ、さらにその後もお昼過ぎまでさほど下がらない。午前中はゆっくりとテレビを観ながらネットをすると言った形で、のんびりと時を過ごすスタイルの人が一定率いるのだろう。

午後に入るとテレビ視聴そのものが減ることもあり、並行行為者率も減る。そして夜半は夕食時とそれ以降に高い値を示すものの、10代は就寝が早いために早めにピークと減少を迎える動きは、テレビ行為者率の動きと変わらない。

テレビ視聴者のうちどれぐらいの割合でネットをしているのか

それでは全体に占める「テレビ観ながらネット」率では無く、「テレビを観ている人のうち、ネットも同時にしている人の比率」はどれ位なのだろうか。いわばテレビの「ネットながら率」ともいえるこの値だが、そもそも論としてインターネットを利用していなければ「ながら利用」は不可能なため、若年層の方が高い値を示している。またテレビ・インターネットそれぞれの行為者率が低い時間帯では誤差が大きくなることから、2015年分は双方の値が高めに出る19時台から22時台限定での値のみが公開されている。

↑ テレビのリアルタイム視聴にインターネット並行利用が占める割合(平日、年齢階層別、2015年)
↑ テレビのリアルタイム視聴にインターネット並行利用が占める割合(平日、年齢階層別、2015年)
↑ テレビのリアルタイム視聴にインターネット並行利用が占める割合(休日、年齢階層別、2015年)
↑ テレビのリアルタイム視聴にインターネット並行利用が占める割合(休日、年齢階層別、2015年)

おおよそ「若年層ほど高率」「高齢層ほど低率」の傾向がある。10代がやや低めなのは、インターネット利用端末を有していない場合がある(今件調査の10代における下限年齢は13歳)のと、早めに寝てしまう可能性があるため。直上の通りインターネットの利用機会の多い少ないも一因だが、テレビとインターネットの相性は各世代の全体人数に占める割合だけでなく、テレビの視聴者に限った割合においても、若年層の方が相性は良いようだ。

中でも20代の高さには注目したい。平日ではテレビを観ている人の4割強、休日でも1/4から5割強が、インターネットを併用している。平日においてはニュースやドラマが放映される機会が多い21時台・22時台に限れば、10代も近い値を示す。いわゆるテレビ視聴の「実況」が若年層に流行っていることを裏付ける材料の一つとして挙げられよう。

テレビとインターネットの相性の良さを認識してか、最近では生放送などで連動企画の類をよく見かけるようになった。現在はまだ試行錯誤の部分が多いが、賢明な企画によって視聴者の関心を引く構成を創り上げることができれば、双方のメディアの特性を活かし、大いに盛り上がりを見せることになるだろう。

特にテレビ離れが進んでいると言われている若年層への効果が期待できることから、今後の企画担当者の腕の見せ所でもあることは言うまでもない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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