育児や食事の準備は時給換算するといくらになるか、女性自身に尋ねてみた
育児や家事は世帯維持には欠かせない行動である一方、その行為に具体的な対価が現金の形で支払われることは無い。そこでソニー生命保険が2015年3月に発表した調査報告書「女性の活躍に関する調査2016」(2016年2月5日から6日にかけて20歳から69歳の女性に対し、インターネット経由で実施。有効回答数は1000人。20代から10歳区切りで均等割り当て)をもとに、女性自身に家事などの行動に関する時給換算をしてもらった結果を確認していくことにする。
女性が世帯で行う家事や育児、さらには居住地域近辺におけるさまざまな付き合いの行動を、仮に現金対価の発生する就労と見なし、時給換算するといくらぐらいになるかについて調査対象母集団の女性自身に尋ね、その結果の平均値を算出したのが次のグラフ。6項目のうちもっとも高い価格がつけられたのは「未就学児の育児・世話」で1315円。
同じ子供の育児・世話でも小学生以上を対象した区切りでは200円以上低い1109円。これは乳幼児の方が手間がかかり、負担が大きいとの認識が回答者にあるのが原因。乳幼児まで含まれていれば夜泣きに係わる負担が金額換算の際に大きく加わるのは間違いなく、また幼い時の健康管理は非常に神経を使うものに相違ない。
次いで「食事の準備・後片付け」が997円、「掃除・洗濯」が883円。「お買いもの」は804円、そして町内会の寄り集まりや共同での草むしりなどの「地域社会での貢献」は803円。今件はあくまでも平均額だが、高低を含め色々な意見が寄せられそうな値に違いない。
ほぼ同一条件下による調査は3年前の2013年、そして前年の2015年に行われており、その結果と比較すると、子供の育児・世話系は一様に上昇を続ける一方で、それ以外の雑務は2015年にかけて上昇し、2016年では低下している。しかし2016年の低下分はごくわずかで、誤差の範囲に留まっており、実質的には「育児・世話系は大きく上昇」「雑務系は相場安定」と読むことができる。
育児・世話系の時給換算額が増加の一途をたどっているのは、「比較対象となり得る一般就労の時給相場が上昇している」「男性の家事参加要求機運の高まりの中で、女性の育児に対する自己評価の見直し」、そして「雇用市場の改善で子供の育児・世話について悩む機会が増え(幼稚園・保育所への預け入れも含む)」などが考えられる。
なお、前回2015年の回答値との差異について、その変移率を算出すると次の通りとなる。
育児・世話系が上昇、それ以外は下落。実質的には「地域社会での貢献」のみが減退していると見られる。とはいえ、前年比でマイナス値を示した項目も2013年比ではすべて増加しており、実質的にはぶれの範囲なのは上記の通り。期間をあけてもう数回同じ調査を行えば、はっきりとした傾向が見られるに違いない。
今件を受けて実際にこの金額を支払うべき、そもそも論として対価を考える類のものでは無い、相方の実労働への評価の過小化にならないかなど、多様な意見が生じ得る。しかしこれらの値はあくまでも自由回答の結果によって算出された指針、目安のようなもの。参考値としての活用が望まれよう。
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