銃の効用と弊害と…ジレンマの中にあるアメリカの人達
銃保有は守られる権利か、制限を設けるべきか
一般民間人にも自衛のためとして銃保有が認められているアメリカ合衆国。しかし同国内でも銃の所有に関しては様々な想いがあるようだ。その実態を同国の民間調査会社Pew Reseach Centerが2015年8月に発表した、銃所有と規制問題に関する調査結果「Continued Bipartisan Support for Expanded Background Checks on Gun Sales」から探る。
同調査において2015年7月時点の調査結果では、個人の銃所有に関し、肯定派・否定(規制強化希望)派がほぼ均衡する状況にある。
そこでこの銃所有に関する権利の維持・制限の意見について、属性別で詳細を確認したのが次のグラフ。
大よそ青は銃所有賛意派、赤は反対派となるのだが、性別では男性、学歴別では低学歴、支持政党別では共和党、居住地域別では地方、現在所有状況では所有世帯の方が、銃所有に賛成する人が多い。男女の差異は武器アレルギー(肉体的ではなく精神的)な面もあるのだろう。居住地域別では必要性のあるなしが大きく関与していることは容易に想像できるし、世帯所有の有無ではズバリ、必要性がある・権利を行使しているからこそ、その権利を守るべきだとの認識が高いものと考えられる。
興味深いのは支持政党別で、現在のオバマ大統領が所属する民主党の支持者ではわずか1/4しかない賛意派が、共和党では7割を超していること。来年の大統領選挙の結果次第では、アメリカの銃規制に関して少なからぬ動き(もちろん緩和方向)が生じる可能性がある。
銃所有は役に立つ? トラブルの元になる!?
個人の銃所有はアメリカ合衆国の憲法解釈の上で認められている権利であるとする他に、主に銃犯罪の被害を防ぐとの主張・認識がある。犯罪者が銃で武装しているのであれば、対抗措置を持たないといけない、一方的に被害を受けるだけだとするもの。あるいは対抗措置を有していれば、犯罪者も手出しを躊躇するかもしれないのと意見である。他方、そのような状況こそが銃犯罪そのもののリスクを上昇させるだけでなく、さまざまなトラブルの場面での銃利用を促進させ、人々を危険にさらしてしまうとの意見もある。
そこで銃の所有そのものについて、「犯罪被害を防ぐのに役立つ」「人々を危険にさらす」2つの効用・可能性に関して、どちらをより強く認識しているかを尋ねた結果が次のグラフ。大よそ予想している通り、上記の銃所有に関する意見に近い値が出ている。
銃所有に対する規制への意見同様、男性、低学歴、共和党支持者、世帯銃所有者ほど、銃における犯罪抑止効果への期待の方が強く、女性、高学歴、民主党支持者、世帯銃非所有者ほど、銃の所有は人々をより危険にさらすと認識している。それらの信念を抱いているがために、銃を所有し、権利を主張すると考えれば、筋の通る結果。
性別や学歴、所有世帯か否かはさておくにしても、支持政党でこのような大差が出ている状況は、やはり大いに注目すべきもの。その観点でも、来年の大統領選挙には注目したいところではある。
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