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自衛隊への国内好感度は92.2%、過去最高値を更新

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 先の震災でも自衛隊は縦横無尽な活躍を見せた(陸自公式HPから引用)

高齢者で好意度が高め

震災や周辺各国の外交姿勢の変化を受け、その存在感をさらに強める自衛隊。内閣府が定点調査を行っている世論調査「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」の結果が先日発表されたが、それによると日本国民が自衛隊に抱く好感度について、過去最高値を示していることが分かった。

「全般的に見て」自衛隊そのものに回答者自身が良い印象を持っているか、悪い印象を持っているかに関し、「良い」「どちらかといえば良い」(以上「良い派」)「わからない」(意見留保派)「どちらかといえば悪い」「悪い」(以上「悪い派」)の5段階評価で尋ねた結果が次のグラフ。全体では92.2%の人が「良い派」に該当する回答を示した。「悪い派」は4.8%留まり。

↑ 自衛隊に対する印象(2015年、内閣府調査)
↑ 自衛隊に対する印象(2015年、内閣府調査)

男女別では男性の方が、世代別では高年齢ほど良い印象を示している。特に70歳以上は半数に相当する49.6%が強度の好意的意見を持っている。また「良い」が「どちらかといえば良い」を唯一上回る属性でもある。若年層ほど強度の好意的な回答は減るが、その分弱度の好意回答は増え、「悪い派」の動向にはさほど変化はない。

「悪い派」は30代から40代で弱度の悪印象が高めに出ていることから大きめな値が出ているものの、それでも1割を切っている。女性、高齢層では多少「分からない」の回答率が大きいが、こちらもまた少数に留まっている。

この「良い派」「悪い派」の動向について、前回調査(2012年1月実施)の結果と比較し、「良い派」から「悪い派」をそのまま引いた値と、「分からない」の回答率それぞれについて、その変化を見たのが次のグラフ。「良い-悪い」の値がプラスならその属性は3年間で好印象派が増え、マイナスなら悪印象派が増えたことになる。「分からない」がプラスなら評価を留保する人が増え、マイナスならば自衛隊などに対する評価を固めた人が増えたことを意味する。

↑ 自衛隊に対する印象(属性別、2012年→2015年の変移)
↑ 自衛隊に対する印象(属性別、2012年→2015年の変移)

30代から40代にかけて好感度がやや後退しているように見えるが、他方20代は大きく伸び、50代以降も好感度はアップしている。特に20代、50代と70歳以上は意見留保派も減った上で「良い派」が増え、明確な意志の表明の上で自衛隊などへの印象を良くしていることが分かる。

過去からの流れを見ると……

性別・世代で多少の差異はあれど、青系統色=「良い派」が圧倒的なのがひと目で分かるが、これは経年の上でも特筆すべき傾向。「良い派」「悪い派」に単純化した上で、1969年以降の推移をグラフ化したのが次の図。

↑ 自衛隊に対する印象(内閣府調査)
↑ 自衛隊に対する印象(内閣府調査)

「良い印象」が異常値的に減り、「悪い印象」が増えた年を調べると、軍事関係で大きな歴史的出来事が起きているのが確認できる。繰り返しテレビや新聞で報じられ、多かれ少なかれ直接に関連する形で、あるいは印象的に自衛隊との連動イメージ(概して悪い方)が刷り込まれ、結果として調査にも反映する面があったものと思われる。また2009年の減少はリーマンショック直後であることから、景気悪化などから生じた社会体制への不満が飛び火したようだ。

一方、前回調査分となる2012年の調査結果における「良い印象」の大幅な上昇は、言うまでもなく東日本大地震・震災における自衛隊の活躍によるところが大きい。活動を行ったのは自衛隊だけでは無いのだが、今調査では自衛隊への印象のみを聞いており、このような結果が出て当然の話。

最新の2015年分調査結果では、震災から4年近くが経過し、やもすると震災後の自衛隊の活動ぶりへの印象が薄れている面もあるものの、さらに「良い派」が増えている。これは近隣諸国の軍事的圧力の増大や政情不安定化に伴い、国防の観点で必然性を認識した人が増えたのが一因だと考えられる。

また中長期的に見ると、自衛隊の印象は良い方向に移行している。現状認識・認知がなされ、浸透が進んできたということだろう。

今後は震災対策で損耗した各方面の備品などの充足整備はもちろんのこと、実績や意義、責務に見合うだけの環境整備が求められるのは言うまでもない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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