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低下する新聞への信頼感、その理由を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 新聞への不信感の高まりは多くの人が覚えるところだが……

情報を伝える媒体としてのメディアに対する信頼感は、国内外を問わず漸減する傾向にある。その理由はさまざまで、品質自身の低下、競合メディアの創生・展開に伴う実状の露呈などが挙げられる。とりわけ新聞に対する信頼感の凋落は著しい。その理由は何だろうか。財団法人新聞通信調査会が発表したメディアに関する全国世論調査から、直近の動向に関して確認をしていくことにする。

現時点で最新分となる2014年度において、この1年間で各メディアに対して信頼感は変化したのか否かを聞いた結果が次のグラフ。前年2013年度に同様の問いをした結果も併記してある。

↑ 各メディアへの信頼感は変化したか(前年度と比べて)
↑ 各メディアへの信頼感は変化したか(前年度と比べて)

信頼感の上下度合は回答者それぞれで一概には言えないが、大よそ「上昇」が「下落」より多ければ信頼感は増加し、逆なら減少と見ることが出来る。その観点で結果をチェックすると、全面ディアで信頼感は減少していることになる。

メディア毎の動向を見ると、特に新聞、民放テレビ、雑誌で、「下落」が「上昇」を大きく上回る結果が出ている。信頼感が損なわれた、失望した人が多かった次第。

前年度との差を見ると、新聞における「下落」の大幅増加が目に留まる。朝日新聞における誤報・捏造・誤報に対する再精査への意図的な無作為による放置の数々が取りざたされたことが、大きく影響したものと思われる。

それを裏付けるのが次のグラフ。新聞の信頼感が増した人は3.9%、下落した人は10.2%との値が出ているが、それぞれの回答者に、なぜそのような選択をした・思ったのかを聞いた結果によるもの。

↑ 新聞の信頼感が高くなった理由(該当回答者)
↑ 新聞の信頼感が高くなった理由(該当回答者)
↑ 新聞の信頼感が低くなった理由(該当回答者)
↑ 新聞の信頼感が低くなった理由(該当回答者)

「新聞をより信頼するようになった人」の理由だが、情報の正確性や根拠に基づく情報を報道したこと、公正・中立さへの評価が主なものとなっている。ドラマや映画で新聞社に勤める主人公が語りそうな「政府や財界に迎合しない」との意見は2.4%でしかない。

前年度との比較では情報の正確さモラルに関する評価が増え、根拠に基づいた情報の配信などが減っている。また「何となく」が大きく減少したのも印象的。

他方「信頼が損なわれたと感じる人」のトップ意見は「誤報があった」で28.7%。前年度比で大きく増加しており、上記にある通り朝日新聞の複数事案が大いに影響したものと考えるのが道理だろう。また、特定の勢力に偏った報道をしているからとの意見も多く、1/4に届いている。今件は択一回答のため、誤報選択肢に大きく数字を吸い取られた形となったが、モラル低下や政府・財界の主張通りのみとの意見も少なくない。

さらに多くの項目が誤報関連で値を吸い取られているのに対し、「憶測による情報も流している」は前年度比で増加している点も注目に値する。半ば誤報と同じような意味合いもあるが、こちらの方がより悪質には違いない(多分に意図的なものだから)。

新聞は主要メディアの中ではNHKテレビに次いで高い信頼感を獲得している。しかしそれはこれまでの先人諸氏の努力によって構築された「信頼」という名の資産を食いつぶしているに過ぎない。その実情を認識し、行動を律する事が出来なければ、「信頼感は下落した」との回答者は来年度以降も高い値を維持したままとなるに違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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