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mixiの会員・アクセス情報詳細、再び開示されず

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ かつては日本最大級のソーシャルメディアだったmixiだが……

2013年11月8日、ミクシィは2013年度第2四半期決算を発表、同説明会を開催し各種資料を公開した(ミクシィIRニュース一覧ページ)。しかし今四半期決算短信・説明会資料においても、同社の主事業として運営されているソーシャルメディア「mixi」のアクセス動向、会員性向を精査するための情報はほとんど開示されなかった。この傾向は今年に入ってから今回も含め3四半期に渡って続いている。

今回の発表資料で金銭面以外のmixiの動向を直接知れる開示データは2つのみ、「ミクシィグループ アプリ会員数」「ミクシィグループ スマホMAU(月間アクセスユーザー数。1か月以内に1度以上アクセスした人の数)」のみ。前者はアプリのダウンロード数の積算値であることから、アプリの勢いを知ることはできるものの(こちらは右肩上がり)、利用率までは分からないのも合わせ、mixiそのものの動向全体を推し量るには用が足りない。

↑ ミクシィグループスマホMAU(万人)
↑ ミクシィグループスマホMAU(万人)

昨年までは年々公開情報の項目数は減っていったものの、それなりにmixi全体の会員に関する情報は開示されており、どのようなユーザー構成で勢いがあるのはどの年齢層か、そしてそれらの蓄積動向からmixiそのもののすう勢を推し量ることができた。

↑ 昨年末時点でのmixiの年齢階層別比率
↑ 昨年末時点でのmixiの年齢階層別比率
↑ 昨年末時点でのmixiのMAU推移
↑ 昨年末時点でのmixiのMAU推移

しかし今年に入ってから、同社が注力すると宣言したスマートフォン・アプリに関連する一部データをのぞき、ほぼすべてがシャットアウトされてしまう。そして今四半期決算でもその傾向は続いている。

公開資料や決算発表会における報道(例えば「ミクシィ第2四半期決算、純利益13億円超の幅赤字に(C-NET)」)などを見るに、「一般携帯電話からスマホへ、ブラウザからアプリへの移行を継続中」「でもそれが上手く行っていない」「mixiをベースにした周辺領域への進出、他事業の展開も頑張っていく」など、努力は続けている、施策を次々打ち出していることなどが語られている。一方説明会資料に「再成長に向けて」との文言があることから、現状が縮退状況にあることの認識は持っているようだ。

他事業への展開はともかく、mixi自身、そしてmixiをベースにした事業展開をアピールする以上、そのmixiの「現状」を詳しく精査できないことには、ミクシィ内部以外の人が「今後」を推し量ることは難しい。美辞麗句を並び立てたプロモーション資料だけでは無く、現実の数字を基にした現状と、そこからの延長線となる事業展開との連動性によって、はじめて未来展望がイメージできる。ところがその精査材料がほとんど無い。これではいくら可能性、将来性、展望が並べ立てられていても、それらの確実さを確かめることは難しい。むしろ「現状がヤバいので敢て公開しないのでは」と勘繰られても仕方がない。

第三者調査機関によるデータ分析はあるが、上場企業において投資家が判断をしたい主事業の詳細が企業自身から語られることなく、第三者機関経由の情報に頼るしかない(しかも基本的に有料情報で、オープンにされた値はその有料情報を基に書かれた記事である)状況はいかがなものだろうか。

「会員構成をはじめとした各種情報は、会社内の方針(アプリ中心、周辺領域への積極展開)とは合わない部分もあるので、公開する必要性はない」「誤解されるかもしれないので公開しない方が無難」、その判断は一理ある。しかし一方で、基軸・根幹事業となるmixiの現状を推し量る十分な情報が開示されない状況で、どれだけの人が将来を見通すことができるのか、疑問視せざるを得ない。

かつてmixiは日本最大の、そして多くの人にとって唯一のソーシャルメディアだつた。しかし今では多数がひしめき合い、ツイッターやFacebook、そして(厳密にはソーシャルメディアとは異なるが)LINEが普及しつつある。ミクシィ、そしてmixiに今必要なのは、誰もが現状を確認し、見据えることができるための十分な情報開示に他ならない。そしてその上で「どこかで見たような」「他でも出来るような」ものではなく、「mixiでしかできないもの」「mixiだからこそ出来るもの」を探し、それを育てていくことにある。

そうでもない限り、補足資料などで語られている未来への展望も、mixiの会員の現状に関する情報と同じ程度の透明度にしか見えなくなってしまう。そう感じるのは当方だけだろうか。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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