再増加する子供のコミュニティサイト上での被害
警察庁は2013年9月12日付で、2013年上半期における「出会い系サイト」「コミュニティサイト」(SNS、プロフィールサイトなど、ウェブサイト内で多人数とコミュニケーションがとれるウェブサイトのうち、出会い系サイトを除いたものの総称)で児童(17歳以下)が関係した諸犯罪に関する現状の報告書「平成25年中上半期の出会い系サイト等に起因する事犯の現状と対策について」を発表した。それによれば、ここ数年減少傾向にあった両サイトの事件検挙件数、被害児童数について、「コミュニティサイト」の事例が増加していることが明らかになった。
2013年上半期の「出会い系サイト」での事件検挙件数は368件となり前年同期比でマイナス80件、被害児童数はマイナス51人。ところが「コミュニティサイト」では、検挙件数はプラス260件、被害児童数はプラス89人と、こちらは増加の動きを示している(割合ならば検挙数では43%、児童数では17%の増加となる)。
これはスマートフォンをはじめとした各種モバイル機器の若年層への急速な普及に伴い、ソーシャルメディアの利用者数が急増していること、そして「LINE」に代表される無料通話アプリの浸透で、そのIDを交換する掲示板をトリガーとした事犯が「件数的に」多発したのが原因(発生確率が同じでも、対象となる人数が増えれば、「事犯発生数」は増加してしまう)。
2010年以降「コミュニティサイト」事業者によって本格化した各種対策は今なお続行中。しかし新興勢力ともいえる無料通話アプリの急速な利用者の増大と、それを用いた犯罪の急増が、各種対策による漸減分を吹き飛ばしてしまったのが実情。実際報告書でも固有名の明記は避けているものの、「無料通話アプリのIDを交換する掲示板に起因する犯罪被害により」と特記をし、警告を発している。
警察庁ではこれに先立つ事2013年の5月に「コミュニティサイトに起因する児童被害の事犯に係る調査分析について(平成24年下半期)」を公開しているが、それによれば2012年全体では被害件数は減少しているものの、下半期に限ると上半期との比較で1割以上の増加を示しており、2012年下期から状況に変化が生じた可能性を示唆している。
また規制強化に対し、暗号めいた隠語(番号・数字の平仮名化、略語の利用、当て字、アドレスの分割・多数回の送信、文字列の写真貼り付けなど)の活用率も増えており、手口が巧妙化していること、スマートフォンの利用率上昇に伴い手段も複雑化していることなどを挙げ、警戒を強めている。
コミュニティにおいて問題を完全に防ぐことは難しい。また確率論的には、対象人数が増えるほど事犯「数」も増加する。だが「比率として低いから『仕方ない』と妥協する」わけにはいかないのが犯罪であり、その防止対策である。
携帯キャリア、そして携帯電話上で運用される各種サービスを提供する業界としては、とりわけ急速に若年層にも普及するスマートフォン向けのサービスにおいて、十分過ぎるほどの安全性を確保し、今回対象となった「問題」の発生確率を極力下げ、ゼロを目指す最大限の努力を継続する必要がある。
同時に保護者や教員など児童の周囲に居る人達もまた、啓蒙・周知を徹底しなければなるまい。
■関連記事: