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「気遣い不要」介護ロボットは高需要、求められる仕様は…

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ トヨタの生活支援ロボット「HSR」。家庭内での私立生活をアシストする

魅力はこころとからだの負担減、求められるのは操作性と低価格

加速化する高齢社会化の中で問題視されている社会問題の一つが「介護問題」。急増する介護需要に対応し、介護する側のサポート、さらには一部作業の代替役を期待し、既存のロボット技術などを活用した、介護(支援)ロボットの開発が各企業で進められている。

↑ 理研と東海ゴム工業が共同開発中の介護支援ロボットRIBAシリーズ

次以降のデータは内閣府が2013年9月に発表した、その介護ロボットに関する調査結果によるもの。介護ロボットに関する魅力として、多くの人が認知しているのは「介護する側の負担減」「介護を受ける側の気兼ねが減り、自分自身で出来ることが増える」。

↑ 介護ロボットの魅力点(複数回答)
↑ 介護ロボットの魅力点(複数回答)

視点を変えると、現在の介護において一番の問題は「介護をする側の心身的な負担が大きすぎる」と見ることができる。また、その負担を「介護を受ける側」も十分認識しているからこそ、気を多分に使ってしまう。その配慮が要らない介護ロボットの存在は、介護を受ける側にも大きな負担減となりうる。

サポート系の介護ロボットは特に、介護を受ける側自身の意志で活動が可能なのもポイント。「自分で出来ることが増える」ことで、「やらされている」「任せてしまっている」感を払しょくし、自分で生活しているとの意識・活力を維持することが可能となる。さらに自分の身体の一部を活用しながらの行動となるため、その部分の利用が繰り返されることで、老化進行の緩慢化にも役立つ。

他方、「費用負担の軽減」「安全性」については、回答率が低め。現時点ではこれらの点は「魅力」というよりは不安要素が大きいことの表れといえる。

実際、介護ロボットを選ぶ場合の重視点でも「操作性」「低価格」「安全性」関連の項目が上位を占めている。

↑ 介護ロボットを選ぶ際の重視点(複数回答)
↑ 介護ロボットを選ぶ際の重視点(複数回答)

操作しやすさと価格の安さ、そして安全の保障。実働するとなれば日々繰り返し使うため、それこそ家電と同じような取り扱いが出来ることが求められる。求められている要素も家電と同じとなるのも必然といえる。

介護する側・される側、どちらからの需要が多いか

介護をする・受ける双方の立場についていない人にとって、今後のことを想像した場合、どちらかといえば「介護を受ける際の気兼ね」の負担の方が大きいと判断している。そのため、介護ロボットの利用意向も「受ける側」の方が多い結果となっている。

↑ 介護ロボットの利用意向(介護する際・受ける際)
↑ 介護ロボットの利用意向(介護する際・受ける際)

無機質な介護ロボットの活用で、介護をする側・される側双方への負担が軽減され、さらに介護を受ける側の自立性が期待でき、老化進行の緩慢化も推し量れる。しかし価格や操作性、メンテナンスのしやすさ、そしてなによりも実用性の高さなど、介護ロボットの普及において超えねばならないハードルは多く、そして高い。一般家電のレベルにまで落とし込むには、相当な努力が求められる。

とはいえ、需要が多分にあることも事実であり、さらに社会的貢献度も大きい。その上、身体能力が衰えた人をサポートするという観点で、医療と介護の接点は多く、応用・活用も容易。関連各企業はその需要におけるハードルをクリアすべく努力を重ねてほしいし、各方面もその努力を後押ししてほしいものである。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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