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2024年に節目を迎える地震は? 昭和東南海地震を始め多くの南海トラフ地震が起きていた

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長
(提供:イメージマート)

 新年あけましておめでとうございます。2024年がスタートしましたので、今年に節目を迎える地震について明治時代以降の地震を中心に時代を遡りながら紹介してみます。

2014年の長野県北部の地震

 11月22日に長野県北部で起きたマグニチュード(M)6.7の地震です。糸魚川・静岡構造線の北部にある神城断層などが活動しました。ちなみに、糸魚川・静岡構造線の牛伏寺断層は、内陸活断層の中で最も発生確率が高い活断層です。

2004年の紀伊半島南東沖地震と新潟県中越地震

 9月5日に三重県の南東沖でM7クラスの地震が続発しました。19時7分にM7.1の地震が、さらに23時57分にM7.4の地震が起きました。津波に加え、各地で長周期の揺れが観測されました。

 10月23日には、M6.8の新潟県中越地震が起きました。新潟県川口町で最大震度7を記録し68人の方が亡くなりました。そのうち52人がエコノミークラス症候群などによる関連死でした。この地震では、中山間地の被害が顕著でした。

 そして、12月26日にインドネシアでM9.1のスマトラ島沖地震が起き、22万人もの犠牲者が出ました。この年は、風水害も多かったことから、「今年の漢字」は「災」でした。

1994年の北海道東方沖地震と三陸はるか沖地震

 10月4日に北海道東方沖でM8.2の巨大地震が発生しました。さらに、12月28日にM7.6の三陸はるか沖地震が起き、3人の死者が出ました。翌1995年1月に阪神・淡路大震災が起きたこともあり、これらの地震被害が忘れられがちです。

1984年の日向灘の地震と長野県西部地震

 8月7日に日向灘でM7.1の地震が発生しました。この場所は、南海トラフ地震の震源域周辺に位置するため、今、同じ地震が発生すると、南海トラフ地震臨時情報が発表されます。

 9月14日にはM6.8の長野県西部地震が発生し、29人の死者・行方不明者が出ました。この地震では御嶽山が山体崩壊すると共に、石の跳躍現象が話題になりました。御嶽山はこの地震の前後、1979年と1991年に噴火をしています。

1974年の伊豆半島沖地震

 5月9日にM6.9の伊豆半島沖地震が起き、石廊崎断層が出現しました。山崩れが顕著で、30人の死者が出ました。この地震の2年後の76年に東海地震説が発表され、78年に伊豆大島近海地震が発生したこともあり、静岡県民の不安は大きく、政府は78年に直前予知を前提にした大規模地震対策特別措置法を制定しました。

1964年の新潟地震

 6月16日にM7.5の新潟地震が発生し、死者26人でした。信濃川周辺で大規模な液状化や側方流動が発生し、アパートが横倒しになったり、昭和大橋が落橋したりしました。また、長周期の揺れで143基の石油タンク群が炎上しました。地震後、新潟選出の田中角栄大蔵大臣が中心になって地震保険制度が整備されました。新潟県で開催される予定だった夏の国体は中止されましたが、東京オリンピックは10月に予定通り実施されました。

1944年の東南海地震

 12月7日に発生したM7.9の南海トラフ地震で、震源域の東側で起きました。死者・行方不明者1,223人で、太平洋岸では津波被害が甚大でした。戦時下だったため、名古屋周辺の軍需工場が大きな被害を受けました。1か月後には誘発地震ともいえる三河地震が、46年には震源域の西側で南海地震が発生しました。東南海地震では、駿河トラフ周辺が活動しなかったため、1976年の東海地震説に結び付きました。また、1854年の安政東海地震との時間差が90年と短いことも特徴です。

1924年の丹沢地震

 1月15日に起きた大正関東地震の余震で、M7.3、死者19人でした。

1914年の桜島地震と仙北地震

 桜島地震は1月12日の桜島大噴火に伴う地震で、死者29人でした。また、3月15日には秋田県でM7.1の仙北地震が起き、94人の死者が出ました。

1894年の根室半島沖地震、明治東京地震、庄内地震

 3月22日にM7.9の根室半島沖地震が起きました。6月20日にM7.0の明治東京地震で死者31人を出した後、7月25日に日清戦争を開戦します。さらに、10月22日に山形県でM7.0の庄内地震が起き726人の死者が出ました。

江戸時代以前の著名な地震・火山噴火

 1854年7月9日に伊賀上野地震が発生し死者約1800人が出ました。さらに半年後の12月23日に安政東海地震が、翌日24日に安政南海地震が起きました。両地震で5000人程度の死者が出たようです。26日には豊予海峡地震も起きました。

 グレゴリオ暦の1454年12月21日には、東日本大震災と同様の大津波を伴う享徳地震が起きました。同様の巨大地震は、869年にも起きており貞観地震と言われています。その5年前の864年には、青木ヶ原樹海を作った富士山の貞観噴火と阿蘇山の噴火がありました。

 更に遡って、グレゴリオ暦の684年11月29日には、古文書で確認される最古の南海トラフ地震の白鳳地震が起きています。

 このように、本年は、昭和東南海地震、安政東海・南海地震、白鳳地震といった南海トラフ地震の節目を迎える年に当たります。春には中央防災会議から南海トラフ巨大地震の新たな対策方針が示される予定なので、地震対策が更に本格化する年になりそうです。

名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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