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最近の自動車は大地震時にも大いに役立つ その活用法は?

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長
(写真:ロイター/アフロ)

CASEとMaaS

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として、自動車のCASEやMaaSが良く取り上げられます。CASEは、「Connected」「Autonomous」「Shared & Services」「Electric」の頭文字をつなげたものです。

 「C」は通信機能で、常時、車の位置や状態がモニタリングできます。平時にはクルマの中で映画や音楽などが楽しめ、交通事故のときには自動通報ができます。今後、車間での通信や道路との通信ができれば、安全性がさらに向上しそうです。「A」は、自動運転につながる技術で、最近の車には、自動ブレーキやステアリングアシストなどの運転支援が付いており、これらを実現するため、様々なセンサーが装備されています。「S」は、クルマの新しい使い方を意図していますが、私は、さらにSecureやSurviveを加え、災害時にも活用したいと思います。「E」は、ハイブリッド車や電気自動車などを通した地球環境対策の取組みにつながります。

 これに対して、「MaaS」は「Mobility as a Service」の略です。 移動することをサービスとしてとらえるという考え方で、車に加えあらゆる移動手段を活用した便利な移動サービスを実現してくれます。

コネクテッドでセンサー情報を災害対応に活用

 最近の車には、カメラ、3D-LiDAR、加速度センサー、GPSセンサーなど、様々なセンサーが装備されています。これらに加え、走行速度、ハンドル操作、ブレーキ操作、ワイパーの動作など、常に車の状態がモニタリングされており、情報の多くはデータセンターにリアルタイム送信されています。

 これらは災害時にも有効な情報を提供してくれます。既に利用されているのは、走行車両の位置情報を活用した「通れるマップ」です。その他にも、ワイパーの動作データを収集すれば、高密度の降雨情報を得ることができます。私たちも、車の加速度センサーの記録から高密度の震度分布を推定したり、車の揺れの強さと運転動作の関係を調べたりして、加速度センサーを地震対策に使えないか模索しています。さらに、地震後にカメラの情報が活用できれば、即座に被害状況を把握することができ、適切な災害対応活動にも活用できます。

様々な災害情報を活用して安全走行を実現

 逆に、ナビゲーションシステムなどを利用して、緊急地震速報(揺れの到達時間や予想震度)や、津波の到達予想時間や予想浸水深を受信したり、土砂崩れや家屋倒壊などの被害推定情報を入手したりできれば、危険を回避することも可能になります。とくに、南海トラフ地震の発生危険度が高まり、南海トラフ地震臨時情報が発表されたときに社会活動を止めないためには、これらの情報を活用して安全に運転できることが基本になります。

 切迫する南海トラフ地震や日本海溝・千島海溝沿いの地震などの海溝型地震では、地震発生後揺れが到達するまでにある程度の猶予時間を確保することができます。このため、緊急地震速報は極めて有用な情報になります。先月21日に気象庁がまとめた「緊急地震速報評価・改善検討会利活用検討作業部会(報告書)」には、緊急地震速報の将来像が示されていますが、リアルタイムに揺れが伝わっている状況がモニタリングできるようになれば、揺れの到達時間や揺れの強さに応じて、車の制御も可能になると思われます。その際に重要となるのは、確実な通信確保です。これらが実現すれば、地震が発生しても心配のない自動運転になります。

災害時の電源確保と住まい

 南海トラフ地震のような巨大地震では、多くの人が住まいを失い、ライフラインも長期間途絶するため、避難所も不足します。家が無事なら、自宅で生活を続けることが望まれます。その時に役に立つのが太陽光発電などの再生可能エネルギーと蓄電池です。電気自動車は大容量の蓄電池にもなります。さらに、プラグインハイブリッド車は、蓄電池の機能に加え発電にも使えます。ガソリンが調達できれば、動く発電機とも言えます。

 自動車はエコノミークラス症候群などの対策を十分に行えば、自宅のガレージで、快適な車中泊にも使えます。アウトドア用品も揃えておけば、まさにフェーズフリーの災害対策になります。

災害時の自動車産業への期待

 日本を支える自動車産業ですが、大地震などが起きれば、サプライチェーンなどが途絶して、しばらく自動車生産は滞ります。ですが、逆に、そのとき、自動車産業に従事する皆さんは災害対応に大きな力を発揮できると思います。大きな工場には多くの従業員と重機があり、敷地も豊かですから、災害時には様々な形で周辺地域を支援できます。

 また、各地にある自動車販売店は、各地の災害対応に大いに役立ちます。技術を持った機械や電気が得意な整備士さんの活躍の場は多いと思います。土地勘のあるセールスマンは、地域の皆さんを様々な形でサポートできます。災害対応に活用できる車も沢山あります。地域に開放できる広いスペースもありますから、普段から地域防災活動の場として活用していれば、災害時には防災拠点機能も果たすことができるはずです。

 行政の力は、大規模災害時には限界があります。とくに自衛隊や消防士は、巨大災害時には全く不足します。自動車産業の皆さんが組織的に災害対応できるようになれば、日本の防災にとって大きな力になると思います。

名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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