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活断層がずれ動いた三河地震から75年、兵庫県南部地震から25年を迎える

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長
地震調査研究推進本部のHPより

1月13日は三河地震から75年

 1945年1月13日未明に、深溝断層や横須賀断層などが活動して、M6.8の三河地震が発生しました。戦時下のため詳細ははっきりしませんが、2,306名の死者が出たとも言われます。この地震の37日前の1944年12月7日には、南海トラフ沿いで昭和東南海地震が発生しており、東南海地震の誘発地震とも言えます。

 深溝断層や横須賀断層は、数万年に1度しか活動しない活動度の低い活断層ですが、近くで巨大地震が起きたことが引き金になって地震を起こしたようです。東南海地震で損壊した家屋に再度強い揺れが襲ったため、被害が拡大したと考えられます。空襲を避けて名古屋市内から疎開していた児童が、疎開先の寺院の倒壊で多数亡くなるなど、戦時下ゆえの痛ましい出来事もありました。

 この地震の後、日本の戦況は悪化を辿り、3月に東京大空襲、6月に沖縄陥落、8月に原爆投下と続いて敗戦を迎えます。東南海地震と三河地震の前後5年間には、1943年鳥取地震、1946年南海地震、1948年福井地震も起き、死者千人を超す大地震が5つもありました。1923年関東地震から福井地震まで、西日本を中心に内陸直下地震が多発する地震の活動期だったようです。

1月17日は兵庫県南部地震から25年

 三河地震から50年後の1995年1月17日の未明に、明石海峡の地下を震源とするM7.3の兵庫県南部地震が発生しました。六甲・淡路島断層帯が活動した地震で、福井地震の後に作られた震度7が初めて適用されました。死者と行方不明者を合わせると6,437人に上り、ほとんどは兵庫県下で家屋倒壊によって亡くなりました。住家被害は、全壊104,906棟、半壊144,274棟にも及びます。この甚大な被害に対し、阪神・淡路大震災という災害名称がつけられました。

 阪神・淡路大震災以降、震度7の地震は6つありますが、これほど多くの被害を出した地震は他にはありません。直下の活断層が動いて強い揺れが発生し、阪神地区に多く残る耐震性が劣る古い家屋を襲ったことが、大被害の主たる原因でした。このため、家屋の耐震性と活断層が、地震後の大きな注目点になりました。また、2か月後に起きた地下鉄サリン事件とともに、日本の危機管理の在り方を問うことにもなりました。これ以降、日本は失われた10年に突入していきます。

 地震被害を反省し、東海地震の予知に偏していた地震対策が見直され、地震防災対策特別措置法が制定されました。そしてこの法律に基づいて地震調査研究推進本部(地震本部)が設置されました。

活断層による地震

 4枚のプレートの動きによって、日本列島には東西方向に圧縮力が働いています。この力によって、陸域の岩盤に生じたひび割れが活断層です。活断層は、数十万年前以降に繰り返し活動し、将来も活動すると考えられる断層と考えられており、現在、日本には2,000以上の活断層があるといわれます。

 活断層による地震は、(1)おおむね一定の時間で繰り返して活動する、(2)いつも同じ向きに断層がずれる、(3)ずれの速さは断層ごとに異なる、(4)活動間隔は千年以上と極めて長い、(5)長い断層ほど大地震を起こす、などの特徴をもっているそうです。

 活断層による地震は、プレート境界で発生する地震と比べて、地震の発生間隔が長く、地震の規模もやや小さめで、千年~数万年の間隔で発生するM7 クラスの地震が多いようです。ですが、日本全国には多数の活断層がありますから、日本全体でみると比較的よく地震が発生します。とくに、プレート境界で大地震が発生する前後には、内陸にひずみがたまりやすいためか地震が良く起きるように見えます。

 南海トラフ地震の発生が懸念される西日本で過去25年間に内陸直下で起きた地震には、1995年兵庫県南部地震(M7.3)、2000年鳥取県西部地震(M7.3)、2004年新潟県中越地震(M6.8)、2005年福岡県西方沖地震(M7.0)、2007年能登半島地震(M6.9)、新潟県中越沖地震(M6.8)、2011年長野県北部の地震(M6.7)、2014年長野県北部の地震(M6.7)、2016年熊本地震(M7.3)などがあります。

活断層による地震の長期評価

 兵庫県南部地震以降、地震調査研究推進本部は、トレンチ調査などにより活断層調査を精力的に進め、全国約100の主要活断層帯について将来の地震発生の長期評価を行っています。扉絵にも記してありますが、2019年1月1日時点で公表された評価結果が地震調査研究推進本部のホームページに公開されています。中でも、今後30年間に地震が発生する確率が高い活断層帯はSランクと評価されています。

 この中で最大確率が高い断層を10個挙げると、糸魚川―静岡構造線断層帯(中北部区間14-30%、北部区間0.01-16%、中南部区間1-9%)、日奈久断層帯(八代海区間ぼぼ0-16%)、境峠・神谷断層帯(主部0.02-13%)、中央構造線断層帯(石鎚山脈北縁西部区間ほぼ0-12%)、阿寺断層帯(主部/北部6-11%)、三浦半島断層群(主部/武山断層帯6-11&)、安芸灘断層帯(0.1-10%)、森本・富樫断層帯(2-8%)、山形盆地断層帯(北部0.003-8%)、高田平野断層帯(高田平野東縁断層帯ほぼ0-8%)となっています。いずれも最大確率が8%を超えています。

 兵庫県南部地震発生直前における六甲・淡路島断層帯主部の確率は0.02~8%でしたから、これらの活断層は、兵庫県南部地震が起きたとき以上に心配な状況にあることが分かります。とくに、中部~西日本に多くの活断層がありますので、南海トラフ地震の発生前後に活動することが心配されます。活断層の近くにお住まいの方は、十二分の注意が必要だと思います。

名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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