2019年 NPBドラフト会議―石川ミリオンスターズ(BCリーグ)

石川ミリオンスターズのドラフト候補選手(右から神谷塁、喜多亮太、永水豪、矢鋪翼)

■石川ミリオンスターズのドラフト候補選手

ドラフト会議をモニターで見る(写真提供:石川ミリオンスターズ)
ドラフト会議をモニターで見る(写真提供:石川ミリオンスターズ)
チームメイトも駆けつけてくれた
チームメイトも駆けつけてくれた

 2019年のNPBドラフト会議が終了した。

 ドラフトには光と陰がある。指名されて破顔一笑する選手がいれば、指名から漏れて涙に暮れる選手もいる。

 指名を待つのは、12あるNPBのいずれかの球団から「調査書」が届いた「ドラフト候補選手」だ。

 その調査書は1球団だけの場合もあれば、2ケタに上る複数球団から受け取っている場合もあり、選手によってさまざまだ。

 ごく稀に調査書が届いていない球団から指名されることもなくはないが、基本的には調査書をもらった球団から指名されることになる。

ドラフト会議に見入る選手たち
ドラフト会議に見入る選手たち

 BCリーグ・石川ミリオンスターズにも今年、ドラフト候補選手が4人いた。

 エース・永水豪、クローザー・矢鋪翼、正捕手・喜多亮太、盗塁王・神谷塁だ。

 午後5時から始まるドラフト会議に合わせて、ファンも一緒に立ち会えるパブリックビューイングの会場に、4選手も次々と現れた。

選手たちの後ろで「どうか…」と祈る武田勝監督
選手たちの後ろで「どうか…」と祈る武田勝監督

 大型モニターの前に座る選手たち。その後列では武田勝監督端保聡球団社長らが見守る。選手たちの前にはカメラがセッティングされ、リアルタイムでのネット中継も行われていた。

 石川では毎年、同じ会場でパブリックビューイングという形式を行っているが、今年はちょっと様相が違った。例年と比べてメディアの数がとても少ない。

 わけはこうだ。いつもなら来るであろう近隣の報道陣は同じ金沢市内の星稜高校奥川恭伸投手の元に集結していたのだった。

固唾を飲む
固唾を飲む

 さて、会場の人々が息を詰めて見つめる中、指名はどんどん進んだ。しかしスピーカーからは一向に「石川ミリオンスターズ」という声が聞こえてこない。

 やがて本指名が終了し、休憩を挟んで育成選手の指名に移った。もちろん石川の選手たちは育成指名であっても厭わない覚悟でいる。

緊張が続く
緊張が続く

 調査書が届いている球団の番になると、選手もやや表情が硬くなり、力が入るのが窺える。報道陣もその瞬間の表情をとらえようとカメラを構える。

 しかし違う名前が読み上げられると、みな小さく嘆息して落胆の面持ちになる。それを何度も繰り返した。

 そして、すべての球団が「選択終了」を告げた。

■武田勝監督の思い

終了後、インタビューに答える武田勝監督
終了後、インタビューに答える武田勝監督

 2年間、監督として指揮を執った武田監督にとっても、NPBで十二分に活躍できると自信をもって育て上げた4選手だった。

 「非情ですね、ドラフトは…」と、その顔に影を落とした。

 「ここに座っていたのは、今年結果を出した4人だった。今年に関しては行けなかったけど、やはりそこまで目指したことだけは事実なので。

 野球を続ける者、辞める者に共通して言えることは、これを必ず次の人生で生かすってことだけは忘れちゃいけないということ。そこを目指して頑張った自分を否定してほしくないということ」。

 最も近くでその努力を見てきて、そしてその力を知っているだけに、武田監督自身も悔しくてしかたないのだ。

ずっと見守ってきた
ずっと見守ってきた

 ただ、ドラフトの難しさを痛切に感じたという。

 「よく頑張ったから行けるっていう世界じゃないっていうのを、あらためて僕らも気づかされた。BCリーグ自体は何名か指名された。そういう意味ではミリオンスターズの4名は縁がなかったというしかない」。

(注:BCからは武蔵2新潟2富山1の計5名)

 上位指名されるくらいの圧倒的な実力やポテンシャルがある選手は別として、指名されるかどうかは縁や運、タイミングといった如何ともし難い力が影響することは事実だ。

社会人を辞めてまで飛び込んできた喜多亮太選手(左は永水豪投手)
社会人を辞めてまで飛び込んできた喜多亮太選手(左は永水豪投手)

 それだけに「もっと自分にも何かできることがあったんじゃないか」と、武田監督は自らを責めていた。

 4球団から調査書が届いていた喜多選手には、足繁く通っていたスカウトも強く欲している旨を口にしていた。しかし蓋を開けてみると、その球団はほかの捕手を指名していた。

祈り続けたが…(写真提供:石川ミリオンスターズ)
祈り続けたが…(写真提供:石川ミリオンスターズ)

 「本人もそのつもりでBCに来て、この1年に懸けているっていう思いが伝わってきていたので、なんとか行かせてあげたかった。僕らのサポート力が不足していたという意味では、すごく反省している。

 僕ら自身もまたこれを生かして、こういう思いをさせないような環境作りをしなきゃならない。もっともっと強いチームになって、もっと目立って違う形を目指さないと選ばれないのかなとか、そういうことも課題になってきたのかもしれない」。

 武田監督自身も強い手応えを感じていただけに、受けたショックは大きかった。

常に選手ファーストで考えてきた指揮官
常に選手ファーストで考えてきた指揮官

 「関わった子たちにあんな思いをさせてしまって…。今後、自分自身ももっと力をつけたいと思った。色々考えさせられた」。

 武田監督も思うところが多々あったようだ。

 4選手には「今後、ほかの仕事でも同じことの繰り返しだ」と説く。

 「今年チャレンジして、ドラフトでは結果は出なかったけど、違う道でもまたチャレンジはしていかなきゃいけない。これを教訓や糧、経験に繋げて、必ず生かしてほしいと思う」とメッセージを送っていた。

■端保聡球団社長が描く今後の戦略

パブリックビューイングの会場
パブリックビューイングの会場

 球団社長である端保聡氏にとっても落胆が大きかった。これまで幾多の選手をNPBに送り出してきた端保氏にとって、今年はかなりの手応えがあったはずだ。

 スカウトとの連携を密にし、有望選手をどんどん売り込んできた。NPBとの選抜試合でも、BC11球団の中で最も多い5人が選出されたこともあり、3選手の本指名を得た2017年以来2年ぶりの指名に期待した。

ラストイヤーと腹をくくっていた喜多亮太選手と神谷塁選手(右)
ラストイヤーと腹をくくっていた喜多亮太選手と神谷塁選手(右)

 「今年最後っていう思いで2人(喜多選手、神谷選手)はいたので、なんとかして…いや、なんとかしてできる話でもないけど。やることはやったけど、こんな結果だった」。

 そう言って、肩を落とした。ラストイヤーに懸ける気持ちは痛いほどわかっていただけに、彼らにかける言葉も失っていた。

 「2人には、なんとかこの悔しさを別のものに替えてほしい。永水くんと矢鋪くんに関しては、来年ぜひ支配下で指名されるような圧倒的な数字とパワーを見せつけて、なんとかリベンジしてほしい」。

落ち着かない
落ち着かない

 今年の結果を受けて、端保氏が痛感したのは「年齢」だったという。

 石川のドラフト候補4人の今年度の満年齢は、永水24歳、矢鋪23歳、喜多24歳、神谷23歳だった。

 「(指名されたのは)全般的に若手というか、高校生が多かったかな。そういうとこですわ、残念ながら」。

 12球団から指名された全選手の内訳を見ると、たしかに大学生36人(うち育成11人)、社会人11人(育成はなし)、独立リーグ9人(うち育成6人)に対して、高校生は51人(うち育成16人)で最も多い。割合にすると、高校生が全体の48%を占めた。

(詳細な内訳は後述)

今年に懸けていた神谷塁選手
今年に懸けていた神谷塁選手

 BCリーグを担当するスカウトも度々「年齢」を口にする。実際に入団したときのことを考えるので、「来年○歳」という見方をする。よって、対象として見るのは、はたち前後までだという。

 そして大学生、もしくは大学を卒業した社会人と比べて、同じ年頃の独立リーガーを見る目はより厳しい。リーグのレベルという問題もあるのだろうが、その年頃の独立リーガーに対する評価は総じて低いのが実際のところだ。

武田監督は笑いで緊張をほぐしてくれていた
武田監督は笑いで緊張をほぐしてくれていた

 「NPBに(指名が)かかるのに、独立リーグで大卒以上ってやっぱり難しいなっていうのをひしひしと感じている。大学を卒業して独立リーグに来る選手は、NPBの同じ年の選手と比較して、それ以上(の実力)じゃないとなかなか獲ってもらえない」。

 比較対象が既存のNPB選手という高いハードルが設定されていることを、端保氏も感じている。

 そこで今後の選手獲得においても、考えざるを得ないという。

 「ポテンシャルの高い高校生…たとえば足がめちゃくちゃ速いとか、球がめちゃくちゃ速いとか。それだけでも“伸びしろ”っていうところで、NPBに入れる可能性がかなり高くなると思う」。

 まとまっている即戦力よりも、“一芸”に秀でた未完の大器というわけである。

祈る思いだった
祈る思いだった

 目指したいのは地元の“有力高校生”の獲得だ。

 「独立リーグの、石川ミリオンスターズの歴史の中で、地元の高校生が『どうしてもミリオンに入りたい』というようにはまだまだなってないので、そうなるように頑張っていきたい」と力を込める。

 高校を卒業するにあたって、NPBに行けなかったときに大学や社会人よりもミリオンスターズを選んでほしい―。そう、端保氏は願っているのだ。

 そのためには、チーム力のアップも必須要素になる。強い魅力あるチームでなければ、地元の高校生が入団したいとは思わないだろう。

最終戦で挨拶する端保聡球団社長
最終戦で挨拶する端保聡球団社長

 石川は今年、前後期ともに2位に終わった。

 「3年優勝していない。あと1勝(で優勝できた)とか、そんな感じだった。また主力が抜けていくけど、それは独立リーグの使命ではあるので。毎年毎年10人くらい選手が替わって、それでも今までやってきている。なんとか来年こそは…」。

 地元の“ダイヤの原石”を獲得して、既存選手と融合しながら優勝を。そして1年後のドラフトでは笑いたい―。

 それが石川ミリオンスターズとしての願いだ。

 ドラフト会議が終わった瞬間から、もう翌年のドラフトは始まっている。指名される側も指名する側も、与えられた時間は等しい。

 石川ミリオンスターズもすでに来年に向けて動き出している。

【2019年ドラフト 指名内訳】

指名選手107人(うち育成選手33人

[高校生51人(うち育成選手16人)、大学生36人(うち育成選手11人)、社会人11人(育成選手なし)、独立リーグ9人(うち育成選手6人)]

東京ヤクルトスワローズ

6人(育成なし)…高3、大3、社なし、独なし

オリックス・バファローズ

13人(育成8)…高8(育5)、大4(育2)、社なし、独1(育1)

中日ドラゴンズ

7人(育成1)…高3、大3(育1)、社1、独なし

千葉ロッテマリーンズ

7人(育成2)…高2、大5(育2)、社なし、独なし

広島東洋カープ

9人(育成3)…高5(育2)、大3、社なし、独1(育1)

北海道日本ハムファイターズ

10人(育成3)…高1、大4(育1)、社3、独2(育2)

阪神タイガース

8人(育成2)…高5、大3(育2)、社なし、独なし

東北楽天ゴールデンイーグルス

11人(育成4)…高6(育3)、大3(育1)、社2、独なし

横浜DeNAベイスターズ

7人(育成なし)…高4、大3、社なし、独なし

埼玉西武ライオンズ

9人(育成1)…高2、大1(育1)、社3、独3

読売ジャイアンツ

8人(育成2)…高5、大なし、社1、独2(育2)

福岡ソフトバンクホークス

12人(育成7)…高7(育6)、大4(育1)、社1、独なし

*社会人の指名がなかったのは6球団

(指名したのはソフトバンクと巨人と中日が1、楽天が2、西武と日本ハムが最多の3)

*独立リーグの指名がなかったのは7球団

(指名したのは広島とオリックスが1、巨人と日本ハムが2、西武が最多の3)

(表記のない写真の撮影はすべて筆者)