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元阪神タイガースの新人王・上園啓史監督のBCリーグ初勝利!

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
初勝利を挙げ、ナインとともにスタンドに挨拶する上園啓史監督 (撮影:城 裕一郎)

■開幕2戦目で監督初勝利

こちらも帽子を取ってのご挨拶 (撮影:城 裕一郎】
こちらも帽子を取ってのご挨拶 (撮影:城 裕一郎】

その瞬間はすぐにやってきた。開幕戦を落とした上園啓史監督は、2戦目にして“監督初勝利”を手にした。

初勝利の感想を尋ねると、なんとも複雑そうだった。「嬉しいけど…嬉しかったんだけど…なんか変な感じ(笑)」。飛び上がらんばかりに歓喜しているかと思いきや、意外な反応だった。

喜びは感じながらも「継投も難しいし、自分でプレーするのと違ってもどかしい。すごく神経を使うし、悪い方、悪い方に考えてしまう。ダメだったら…と考えながら先に進めていく」と、“産みの苦しみ”からくる疲労感に支配されているようだ。

「あぁ、これが自分の仕事なのか…とか、ふと考えちゃいました、帰りのバスで」。しみじみと語る。

公式戦に入ってまだ1勝1敗だが、監督として勝ちと負けの両方味わったことで、上園監督の中に何らかの感慨が芽生えたようだ。

しかし、「面白いのは面白い。一番上でやらせてもらっているので」と、生来のポジティブな気質から、開幕までと変わらず楽しめてもいるという。

■西村憲投手を信じていた

オランダ時代の上園啓史監督 (写真提供:ご本人)
オランダ時代の上園啓史監督 (写真提供:ご本人)

独立リーグのルートインBCリーグは今年、8チームから2チーム増えて10チームになった。新規参入した滋賀ユナイテッドBCの初代監督である元阪神タイガースの上園啓史氏は、ルーキーイヤーの2007年に新人王に輝いている。

東北楽天ゴールデンイーグルスに移籍し、その後、海を渡ってオーストラリアやオランダでもプレーした。帰国後、指導経験もほとんどないまま滋賀ユナイテッドの初代監督に就任し、指揮官としての初めてのシーズンを迎えた。

(これまでの経緯は関連記事で⇒上園啓史1上園啓史2上園啓史3上園啓史4

富山アルペンスタジアム 両チームのオーダー (撮影:城 裕一郎)
富山アルペンスタジアム 両チームのオーダー (撮影:城 裕一郎)

「最初の10試合くらいが大切だから。ここで負けが込むと早くも終わってしまう」。そう考え、開幕戦にエース・鈴木志廣投手を立て、「初戦に負けたときを考えて」と第2戦の先発にはタイガース時代のチームメイトでもあった西村憲投手を配した。

初戦は「勝てる展開だった試合を落とした」と、非常に悔しい思いをした。絶対に負けられなくなった2戦目は、ビジターで富山GRNサンダーバーズと相まみえた。

必死で腕を振る西村憲投手 (撮影:城 裕一郎)
必死で腕を振る西村憲投手 (撮影:城 裕一郎)

開幕直前の練習試合で西村投手は古巣のファーム相手に打ち込まれ、コンディション不良が心配された。しかし上園監督は信じていた。「ニシならやってくれる」と。西村投手の経験と根性に賭けていた。

立ち上がり、一死二塁から3番・ジョニー選手のタイムリーで失点すると、続く4番、5番に3連打されたが、なんとか1失点で踏みとどまった。

「3~4点取られそうなところを、よく耐えてくれた。ニシも本調子じゃない中、投球術で抑えてくれた」と讃えた。

投手交代の場面でマウンドへ向かう上園監督 (撮影:城 裕一郎)
投手交代の場面でマウンドへ向かう上園監督 (撮影:城 裕一郎)

するとその裏、先頭の泉祐介選手が三塁打を放つと、初戦に2本のタイムリーを記録した5番・杉本拓哉選手の打席でショートがエラー。すぐに同点に追いついた。

二回以降は西村投手がひたすら粘りのピッチングだ。七回一死で降板するまで、散発の3安打に抑えた。

■オーダーがドンピシャ

2点タイムリーでスタメン抜擢に応えた石川浩選手 (撮影:城 裕一郎)
2点タイムリーでスタメン抜擢に応えた石川浩選手 (撮影:城 裕一郎)

滋賀は四回にも加点した。開幕戦でチーム初安打となる三塁打を打ち、初得点のベースを踏んだ北本亘選手を9番から6番に昇格させ、まだ出番のなかった石川浩選手を初スタメンで9番に据えた。すると、そのオーダー変更がズバリ当たったのだ。

ごにょごにょ…無死一、二塁。上園監督から桑田真樹選手選手に耳打ち (撮影:城 裕一郎)
ごにょごにょ…無死一、二塁。上園監督から桑田真樹選手選手に耳打ち (撮影:城 裕一郎)

四球で出塁した杉本選手、北本選手を桑田真樹選手が犠打で進めて二、三塁とし、石川選手の中前打で2人をホームに迎え入れた。

「四球でもらった少ないチャンスをしっかりモノにできた。オーダーを替えて初スタメンがたまたま打ってくれて…」。

こんなにきっちり応えてくれるなんて、これはもう監督冥利に尽きるだろう。

■継投も大成功

強気の投球で好リリーフの保田拓見投手 (撮影:城 裕一郎)
強気の投球で好リリーフの保田拓見投手 (撮影:城 裕一郎)

七回からは逃げ切り体勢に入った。初戦の教訓から「ピッチャーを引っ張りすぎないようにしようと。ニシも久しぶりの公式戦先発だし、100球をメドと考えていた。みんなも開幕の緊張感から疲れもあるだろうし。とにかく継投を早めにしよう」と決めたという。

「ランナーがいないところで代えたい」と七回、西村投手が先頭をセカンドゴロに打ち取ったところで交代を告げた。103球だった。

サイドスローの守護神・平尾彰悟投手 (撮影:城 裕一郎)
サイドスローの守護神・平尾彰悟投手 (撮影:城 裕一郎)

初戦は一死三塁から登板してタイムリーを許した保田拓見投手も、この日は難なく2アウトを取り、次の回も併殺打によって結果的に3人で終わらせた。

最終回は「抑えを任せたい」という平尾彰悟投手が無失点で終え、スコアは1-3

滋賀ユナイテッドの記念すべき1勝目とともに上園監督も初勝利を手にした。

■この喜びを、次は県民と分かち合いたい

快勝しつつも上園監督は「これからじゃないかな、采配での未熟さが出てくるのは。細かい試合をモノにできるかとか、そのへんはまだわからない。黙っていても何もしなくても勝つときは勝つだろうし。まぁ、とにかくピッチャーの交代が一番難しい」と、これから待ち受けるであろう幾多の試練に思いを馳せていた。

「県民に愛される球団に」―上園監督が掲げるスローガンだ。次はホームで滋賀県民に勝利を届ける。

フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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