4年連続65試合以上登板を目指す楽天イーグルス・福山博之投手にとって、「投げる」ということ

キャップ大好き福山投手の珍しいニット帽姿

■3年連続65試合以上登板という偉業

「投げたいという気持ち。投げたがりなんです」。東北楽天ゴールデンイーグルス福山博之投手の思いはシンプルだ。ただただ投げたい、抑えたい、チームの勝ちに貢献したい。それだけだ。

3年間トータルで199試合に登板
3年間トータルで199試合に登板

2014年から3年連続65試合以上に登板している。昨年は70試合登板を目標に掲げ、1試合及ばなかったが実に69試合、マウンドに上った。

どんな場面でも登場する。僅差でリードしていようが大差で負けていようが、ランナーがいようがいまいが関係なしだ。スクランブル登板もイニングまたぎも厭わない。そして出たらビシッと抑える。これほど“使い勝手のいい”投手がいるだろうか。

いつでも準備OK!
いつでも準備OK!

昨年、もっとも早い登場は6月8日の三回だった。2-4と東京ヤクルトスワローズに勝ち越され、なおも無死一、二塁の場面で登板すると、後続を絶ってピンチを切り抜けた。さらに次の回もマウンドに上がり、山田バレンティン川端のクリーンアップをピシャリと三人斬りにした。

通常、三~四回にはブルペンに行き、毎試合、肩を作る。昨今、どのチームでも投手の疲弊を防ぐため、個々にノースローデーを設けるなどブルペンでの無駄なピッチングを回避するという方針もあるが、福山投手はお構いなしだ。「いつでも試合で投げたいし、準備しておきたいんです」とキッパリ。試合中、ブルペンの電話が鳴ると即、自身のスイッチを入れる。

これほどまでに彼を衝き動かすものとは何なのだろう。

■投手でやれる自信

ピッチャーをしてみたかった
ピッチャーをしてみたかった

高校までは内野手だった。大学に入る頃、「ピッチャーもやりたいなぁ」と思い始めた。「でも野手もやりたいしなぁって、気持ちは半々やったんすよ」。そこで高校時代の友だちに相談すると「ピッチャーやってみたら」と勧められ、志願して投手をすることとなった。

すると「これまでと練習内容も違ったりして新鮮やったし、元々投げるのが好きやったんで。高校のときもバッティングピッチャーを結構やったりもしていたし」と、楽しくてしかたなく、投手の魅力にはまっていったという。

2010年のドラフトで横浜ベイスターズから投手で指名され、プロ入りした。が、2年目のシーズンが終了したあと、ベイスターズから提示されたのは「野手としての契約」だった。

雪降る中でのキャッチボール
雪降る中でのキャッチボール

しかし福山投手は首を縦には振らなかった。飲まなければ契約はしてもらえないのに、だ。「まだまだピッチャーとしてやれると思った」と語るとともに、意外なことを口にした。「打てるという自信がなかったんです」。

身体能力が高く、野手としても大いに活躍できるだろうと球団が見込んだのに反して、本人の考えはそうではなかった。「1年(野手を)やって、また1年で首切られるんやったら…」と思案し、それなら初志貫徹しようと決めていた。「元々ピッチャーで入ったし、このままどこの球団にも拾ってもらえんかったら、それもええか」と腹を括ったのだという。

野手としての不安もあったが、それ以上に投手としてやれる自信があったのだ。

■チームのために投げたい、抑えたい

自らを「投げたがり」という
自らを「投げたがり」という

そしてイーグルスから声がかかった。2013年の優勝に貢献し、2014年にはオールスターゲームにも出場した。そしてその年から3年連続で65試合以上に登板した。

しかし現在も“働き場所”は変わらない。セットアッパーとして“勝ちパターン”だけに投げるわけではない。冒頭に触れたように、“どんなとき”でも投げるのだ。それはチームから求められていることではあるが、何より本人がそう望んでいるのだ。

スクランブル登板に関しても「ボクは投げられるんで、それで抑えたらチームのためになるんで」と、進んで引き受ける。

イーグルスで花開く
イーグルスで花開く

そこまで「投げたい」と思わせるものとは、いったい何なのだろう。

「何なんですかね…」と少し考えたあと、福山投手は「シンプルに投げて抑えたい。投げて抑えたあとの嬉しさというか。嬉しさ2倍…みたいな(笑)」と答えた。

どんなシチュエーションでも、どんなポジションでも、そして複数回でもドンと来い、だ。「チームのために身を粉にして…(笑)」と冗談めかして話すが、本当にチームのために0点に抑えることだけを考えている。だから、投げたいのだ。

■えっ?身体能力は高くない・・・?

重りの入ったベストは自ら購入
重りの入ったベストは自ら購入

今年も昨年以上に投げるべく、自主トレでも連日ハードな練習で追い込んだ。数年前に購入した“重りの入ったベスト”も活用した。

重りは500グラムから20キロまで重さ調節が可能だが、福山投手は6キロに設定し、これを着て走ったりアジリティートレーニングをしたり、ときには後輩と相撲を取ったりもした。

ハードなメニューで追い込む
ハードなメニューで追い込む

ランメニューでは高い心肺機能で周りをリードし、バッティングをしてもノックバットでサク越えを披露。シャトルランではひときわキレのある動きで終始、ポテンシャルの高さを見せつけた。福山投手の動きを見た人は必ず口をそろえる。「なんて身体能力が高いんだ!」と。

しかし当の本人は「ボク、そんなに身体能力は高くないですよ」と、耳を疑うようなことを言う。どうやら謙遜ではないようだ。聞けば小学生のころ一緒に野球をしていたメンバーの中には、福山投手より身体能力が高い友だちがかなりいたそうだ。「ボクより足も速かったし、何やってもボクより上手かった。その子らと一緒にやっていたから、自ずと負けたくないっていう気持ちが出てきて、こうなったのかも」。

「アスリート・福山博之」のルーツはここにあるようだ。それにしても福山投手の動きを目の当たりにしながら、これ以上の身体能力って…と想像すると、ただただ驚くしかない。

■唯一のこだわりは帽子

福山投手にこれだけのベストコンディションを保つ秘訣を尋ねても、特に意識してやっていることはないという。食事にしても「食べたいものを食べることによって、体にストレスを与えないようにするってことくらいかな」と、こだわりはない。

後輩の大塚投手に選んであげたキャップには「47」の数字が入っている!
後輩の大塚投手に選んであげたキャップには「47」の数字が入っている!

こだわりがないのが、こだわりなのか。すると練習中、ボソッと呟いた。「ボク、練習中も必ず帽子をかぶるんですよね」と。そう言われて見てみると、ほとんどの選手が帽子をかぶらずに練習している。「だって試合では絶対に帽子かぶるでしょ。練習でも同じ状態にしたいから」。

なるほど。そこが彼なりのこだわりなのか。そう感心していると、「まぁでも、帽子が好きってのもありますけどねー。いや、9割は好きだからなんですけどね~(笑)」と、はぐらかす。照れもあるのかもしれない。どこまでが本気でどこからが冗談かわかりにくいように見せているが、全てが本気で、そして常に全力で楽しんでいるのだ。

ちなみに好きだというキャップのコレクションは40個ほどにも上るという。特に赤いものがお気に入りだ。

■ふざけているようで真面目

こんなこともあった。雪が積もった日のことだ。野手が室内でバッティング練習している間、福山投手はグラウンドに飛び出した。突如、靴を脱ぎ靴下を脱ぎ、そして上着を脱ぎ捨てた。上半身裸と裸足になって雪の上に駆け出し、短ダッシュを繰り返した。なんだかとても楽しそうに見えた。

雪上トレーニング?
雪上トレーニング?

「特に意図はないけど、雪があったんでやってみようかなと。たまにテレビとかで寒稽古とか言って海に入っているのを見たことあったんで、やってみました。気合いと根性を出すみたいな感じです」と説明してくれたが、ふざけているようで真面目。真面目だけど、やはりどこか楽しんでいる。

昨年は先輩の藤江均投手とともに練習したが、今年は後輩の大塚尚仁投手を伴っている。「やることは変わらない。藤江さんから教わったことやボクが感じたことを教えたり。ベースは変わらないけど、教える分、自分もちゃんとせなあかんと思う」。厳しく、ときには笑いも交えながら、愛情たっぷりに大塚投手を鍛え上げている。

■サブちゃん流の表現

大塚投手に愛情を込めてアドバイス
大塚投手に愛情を込めてアドバイス

今季の目標にまず挙げたのは「日本一」。そして自身も「70試合登板」を目指す。

70試合登板を実現するためにと尋ねると「ケガをしない。シーズンでケガしないよう、今(自主トレ中に)しておく(笑)」と、“サブちゃん流”の冗談で返してきた。さらに「痛みに耐えられれば何とかなる。痛くなければ、それはもうケガじゃなくなるんで」と重ねる。

断っておくが、本当に自主トレ中にケガをするつもりではない。極端に表現しているだけで、発言はすべて“サブちゃん流の覚悟”の表れなのである。

ときには発した言葉の真意が正しく伝わらず、報道があらぬ方向にひとり歩きしてしまうこともある。だが、福山投手の思いは一つ。ただただチームのために、そして勝つために、腕を振るうことだ。

■チームメイトの、裏方さんの人生を背負って投げる

最後に福山投手にとっての「ピッチャーの魅力」を訊いてみた。

「1球で人生とか色んなものを背負えるじゃないですか。その1球がチームメイトだったり、裏方さんだったりの色んなものを背負う。そういう気持ちで準備して、マウンドに上がっています」。

昨年投じた1036球。すべてにその思いを込めて投げた。今年も、そしてこれからも、福山投手はその思いを込めて投げ続ける。