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阪神タイガース安芸キャンプ・新人選手のはじめての休日

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
内野原陶芸館にて、陶芸初体験の横山、守屋、植田の3選手

■恒例の「はじめての休日」。今年はどこへ・・・?

2月1日、プロ野球の春季キャンプが一斉にスタートした。「ブルペンで〇球投げた」とか、「サク越え〇本」とか、各地から届くニュースに野球ファンは胸を躍らせていることだろう。

春季キャンプ中の様々なニュースの中で、どの球団も毎年恒例になっているのが「新人選手のはじめての休日」という企画だ。不安と期待が入り混じった中でスタートしたキャンプ。肉体的にはもちろん、精神的にもグッタリであろう第1クールを終えて迎えた初休日に、新人クンたちにはその地の名所や名産品を訪ねて出掛けて頂く。

練習でしごかれている顔とは違った“素の表情”を発信し、顔を覚えてもらい、親しみを持ってもらうのが狙いだ。

阪神タイガースの2軍キャンプ地は高知県の安芸市営球場だ。これまで、名産品のちりめん丼を食したり、地元の名士・坂本龍馬に扮したり、色々な企画に歴代の新人選手たちがトライしてきた。今年チャレンジするのはドラフト1位の横山雄哉投手(新日鐵住金鹿島)、4位の守屋功輝投手(Honda鈴鹿)、5位の植田海選手(近江高)の3人の新人選手だ。

今年は「陶芸に挑戦!」と、安芸市内にある「内原野陶芸館」へ赴いた。安芸の内原野は約200年前、焼き物に最適な土が出ることから城主の五藤家の命で焼き物が始まり、瓶や鉢など大きな生活雑器を生産していた地。近年は陶板やベンチなど幅広い創作活動が行われているが、16年前、一般人も陶芸を体験できる「内原野陶芸館」が建てられたのだ。ここで今年の新人クンたちの「はじめての休日」が披露された。

講師の説明に聞き入る3人
講師の説明に聞き入る3人

まず、講師の西邨出さんから説明を受ける。「ろくろを回す時は体幹が大事なんです。体の軸がブレないようにしてください」。これは野球に通じるではないか。心なしか選手の表情も引き締まった。

いよいよ電動のろくろが回転し始めた。3人は両手を添え、教わった手順通りに作業を進めていく。見ていると三者三様だ。いつも何をする時でも楽しそうな最年少の植田選手。真ん中を掘り下げていく工程でも、物怖じせずグイグイと大胆に親指を入れていく。

横山投手もニコニコと、時折キョロキョロ両隣に目をやりながらいい形に仕上げていく。

守屋投手の手つきに驚く横山投手
守屋投手の手つきに驚く横山投手

注目を集めたのは守屋投手だ。ピンと背筋を真っ直ぐに伸ばした姿勢に厳しい目つき。そしてその指先から形作られていく器の美しいこと!まさに「陶芸家」の風情を醸し出している。どうやらかなりの“凝り性”と見たゾ。そして相当、器用だ。

予め、土をこねるなどの準備をしてくださっていたこともあり、選手たちはものの20分ほどで器を完成させた。仕上がりも三者三様である。このあと、好みの色を選んで焼いてもらい、1ヶ月後に手元に届く。3選手とも陶芸は初めての体験だったそうだが、なかなかの出来ばえだった。

色選び。横山投手「お前、ピンクにしろよ〜」植田選手「ピンクなんてイヤですよ〜」
色選び。横山投手「お前、ピンクにしろよ〜」植田選手「ピンクなんてイヤですよ〜」

■「図工は苦手」と言い切る植田選手

出だしはよかったけど、途中から苦心した植田選手
出だしはよかったけど、途中から苦心した植田選手

入寮の時、信楽焼の狸を持ち込み話題になった植田選手は焼き物の本場・信楽の出身だが、陶芸には馴染みがなかったという。「(土は)変な感じでした。触り心地がムニュムニュして。中学の時、沖縄への修学旅行に向けて粘土でシーサーを作ったことはありますけど…苦手なんですよ、絵とかも」と言いつつ、作品には「100点!」と満点の自己評価を与えていた。

焼き上がって届いたら「置物にします」とのことなので、狸の横に並べるのかな。

「初日が一番しんどかった」と第1クールを振り返った植田選手。「わからんことあって、緊張もして、体もパンパン」。そう言いつつも、しっかり動けているし、新井選手や横田選手ら先輩のフリーバッティングを見学して「パワーや間、タイミングの取り方を見ました」と、決して浮き足立つことなく冷静に観察もできている。

第2クールにはシートバッティングも行われるが、「とりあえず、あまり考えない。頭、爆発するんで(笑)」と、変わらずガムシャラに取り組むつもりだ。そして2月11日は今季初の対外試合、西武ライオンズとの練習試合だが、古屋ファーム監督はショートでデビューさせることを明かしている。「自分のできることをやれるようにしたい。塁に出たら走りたい」。18歳ルーキーは、持ち味を存分に発揮することを誓っていた。

■雰囲気、手つき、作品・・・どれをとっても陶芸家っぽい守屋投手

“陶芸家”守屋投手
“陶芸家”守屋投手

“陶芸家”の雰囲気を漂わせていた守屋投手は、やはり自身の作品のデキに「初めてだけど上手くできた」と満足そう。「おじいちゃんが板金塗装しているんで、一緒に木の箱を作ったりしていました」と、学生時代から図工が好きだったとか。

見るからに手先が器用そうだが、牽制の練習時に久保ピッチングコーチからも「器用だから生かせよ」とお墨付きをもらったそうだ。

第1クールでは4連投し「疲れはスゴイ」と言うが、宿舎の大浴場で交代浴をして疲れをとっている。Honda鈴鹿時代に教わった「4分冷水、1分温水」がいいらしい。

守屋投手も11日の練習試合で登板の可能性がある。「アピールしたいと思うと気負って自分の力が出ない。いつもと変わらずやる方がいい」。“プロ初登板”を奥様も見に来る予定だ。

■自分に厳しい横山投手

横山投手、楽しんでます
横山投手、楽しんでます

「50点くらいです」と自己採点が厳しい横山投手。「軸は意識しなかったけど、難しかった。なんか、プロの人が作ったのと比べてムラがあった。少し力を入れただけでデコボコになって…力加減が大事じゃないかな」と、自分に課すハードルが高いようだ。

左胸鎖関節の炎症で出遅れたが、第1クールではキャッチボールの距離も伸ばし、強度も上げた。「だいぶ腕も強く振れてきた。フォームのバランスがまだ日によって違うので、そこを修正しながらやりたい」と話す。「朝の早出練習で周りの筋肉をほぐして、負担がこないよう毎日ケアしている」と患部ももう心配ない。

しかし「早く投げたいという気持ちが強いけど、まだ焦らずしっかりやりたい」と念には念を入れて、そう遠くはないであろうブルペン入りの日を見定めていく。

ちなみに3選手が体験した「内原野陶芸館」は安芸市営球場から北東方向へ車で20分ほど。約200年の歴史を誇る内原野焼き。その焼き物の里にある内原野陶芸館では、誰でも陶芸のろくろや絵付け体験ができる。キャンプ見学とともに楽しんでみてはいかがだろうか。【お問い合わせ⇒(0887)32-0308 内原野陶芸館】

上から「横山・作」「守屋・作」「植田・作」
上から「横山・作」「守屋・作」「植田・作」
フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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