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「NINJA TOKYO」が12月22日移転オープン 妥協のないテーマレストランの秘訣とは

千葉哲幸フードサービスジャーナリスト
「NINJA TOKYO」は忍者がお客をアテンドする(ウィルプランニン提供)

「忍者テーマのレストラン空間でディナーコースを楽しむ」というコンセプトで人気を博していた東京・赤坂の「NINJA TOKYO」は、2023年10月1日に休業に入り、2カ月半ほどたった本日、12月22日東京・大手町に移転オープンした。

https://www.ninja-tokyo.jp/

「NINJA TOKYO」は忍びの里や屋敷の中で、忍者がアテンドしてコース料理を楽しむことができるということで、観光目的の外国人客や、海外ビジネスマンを日本人がもてなす接待需要などが9割を占めていて、予約が取りづらい店であった。

同店が移転することになったのは入居していた東急不動産赤坂ビルが老朽化によって解体することになったため。「NINJA TOKYO」を運営するウィルプランニング(本社/東京・港区、代表/横川毅)では、移転先を検討。新たな営業場所として、新大手町ビルの地下に161坪100席という大箱の空間を獲得した。

昭和30年代の外観の中に「忍びの世界」

筆者は、移転オープンの前の12月19日、同社代表の横川氏の案内で内覧をさせていただけるということで、朝10時30分に待ち合わせ場所として指定された「大手町B3出口直結」の「たばこ屋さん」に伺った。「地下街のたばこ屋さん?」と不思議であった。周りにごく一般的なインドカレー店、夜居酒屋営業となる和食店が入居している。

大手町駅B3出口と直結した地下1階にある「たばこ屋さん」が目印。この昭和30年代のイメージのフェイクショップの中に「NINJA TOKYO」がある(筆者撮影)
大手町駅B3出口と直結した地下1階にある「たばこ屋さん」が目印。この昭和30年代のイメージのフェイクショップの中に「NINJA TOKYO」がある(筆者撮影)

ここから横川氏の解説を元に記事を進める。

この移転先の新大手町ビルは、第二期工事が1959年2月に竣工して64年が経過している。そこで、契約した161坪の外側壁面は、竣工した当時の昭和30年代の街の風景を表現している。そこでたばこ屋さんの隣は「愛刃理髪店」「スナックしのぶ」「バー・リバーサイド」「錫木不動産」「篠尾写真館」と続く。

ちなみに、このビルの路面と、地下1階にある飲食店街の案内板には「NINJA TOKYO」の表示があるが、同店があるはずの地下1階にはその表示がない。しかしながら、このフェイクの店名は「NINJA TOKYO」の存在をにおわせるネーミングになっている。つまり、スナックの「しのぶ」は「忍び」、写真館「篠尾」は「忍び」と読む。この「忍び」につながるネーミングはまさに「忍びの世界」ではないか。

入店するためには、フェイクショップの突き当りにある「篠尾写真館」の入口に隠されたインターフォンで、お客自身が店に到着したことを店内のスタッフに伝える。ちなみに同店は基本的に予約客を対象としていて、このインターフォンの存在は予約客に伝えるが、ウォークイン(予約なし)のお客はこの場所が分からない。同店では予約をホームページの予約フォームで受け付けている(電話予約は受け付けない)。お客のほとんどが海外からと前述したが、これはみな海外から予約フォームで予約をしている。

同店では11月5日より予約を受け付けていて、来年の1月中旬までランチ、ディナー共に予約で満席となっている。

高度な芸術集団による妥協のない効果演出

同店が予約客として想定している人数は、2人から7人まで、4人が理想とのこと。8人以上のお客に対するオペレーションを用意していない。団体客は受け付けない。予約客はインターフォンで店のスタッフに到着したことを告げると、写真館の中に入ることになり、その空間の中でこれから「忍びの里」に入ることを音声で説明を受ける。この狭い空間に響く低い男性の声は、これから異空間に入るワクワク感を十二分にもたらしてくれる、

説明が終わると、お客をアテンドする忍者が現れる。それも思いがけない隠し扉から登場する。いきなりのサプライズである。

ここから忍びの里にいざなわれていく。水が流れる暗い洞窟の中をはね橋を渡るなどして、忍者の説明を受けながら進んでいく。そして「里」(エコノミーエリア)の中に入る。ここには水をたたえた小さな池があり、オープンキッチンがある。オープンな客席のほかに、個室が配されている。さらに進むと「屋敷」(エグゼクティブエリア)になっている。ここではワインセラーが設置され防音機能が施されたカラオケができるルームもある。

赤坂時代の「NINJA TOKYO」に対し、滝、アート盆栽、唐破風屋根、濃霧などの店内効果演出は一層進化させている。この妥協のない演出のために、東京ディズニーリゾートなどの美術・造形を手掛ける「異人館企画開発」、美術セットのエキスパート「東宝映像美術」、明治神宮をはじめとした社寺の銅板技術集団「望月板金」などの芸術集団が参画した。

「NINJA TOKYO」を運営するウィルプランニング代表の横川毅氏が「NINJA」のコンセプトである妥協のないエンターテインメントについて解説してくれた(筆者撮影)
「NINJA TOKYO」を運営するウィルプランニング代表の横川毅氏が「NINJA」のコンセプトである妥協のないエンターテインメントについて解説してくれた(筆者撮影)

エンターテインメント性溢れるコース料理

メニューはコース料理のみ、単品料理の提供はしない。このコース料理も「忍びの里」のエンターテイメントだ。コース料理はどちらもメインが近江澤井牛。ディナーは1万3200円(税込、サービス料別、以下同)、1万9800円(税込サ別)で9品。ランチはステーキがメインで1万3200円から1万8700円で5品をラインアップしている。ベジタリアンに対応した「菜食健美」1万3200円もある。サービス料10%で客単価は1万7000円を想定している(現在ディナーは通常のフルエンタメコースで9品、ランチは仕込みの関係上ステーキメインの5品を提供している)。

コース料理はどれも「近江澤井牛」をメインに組み立てて、食事としてのエンターテインメントを表現している(ウィルプランニング提供)
コース料理はどれも「近江澤井牛」をメインに組み立てて、食事としてのエンターテインメントを表現している(ウィルプランニング提供)

コース料理のメインディッシュを終えてデザートまでの間に「上級忍者」に扮するプロのマジシャンがマジックを披露する。これが異空間の雰囲気を一層高めてくれる(店からのお願いとして、マジシャンがパフォーマンスをしているときは、動画撮影などをしないでマジックをライブで楽しんでいただきたいとのこと)。

コース料理のメインとデザートの間に「上級忍者」に扮したプロのマジシャンがマジックを披露して、異空間の雰囲気を高めてくれる(ウィルプランニング提供)
コース料理のメインとデザートの間に「上級忍者」に扮したプロのマジシャンがマジックを披露して、異空間の雰囲気を高めてくれる(ウィルプランニング提供)

「NINJA TOKYO」の世界観は、既存の飲食業の枠組から超えている。「NINJA」という世界的にたぐいまれな日本のコンテンツをテーマとして、それによってワクワクさせる妥協のないエンターテインメント効果演出を施し、食事を楽しむ組み立てにも「NINJA」コンテンツをフルに生かしている。

「NINJA TOKYO」を就労の場として捉えると、自分の新しい可能性を発見できるのではないだろうか。実際に、スタッフとして就労している人は、現場でお客に接しているとき、普段の自分とは異なる「NINJA」になり切っている。「コスプレイヤー」に似た世界観があるようだ。いわゆるテーマレストランの概念を超えた「NINJA TOKYO」は、レジャービジネスを切り拓く存在となるだろう。

個室の一例。装飾・美術は日本が誇る一流の芸術集団が担当している(ウィルプランニング提供)
個室の一例。装飾・美術は日本が誇る一流の芸術集団が担当している(ウィルプランニング提供)

大手町エリアの膨大なメリットを視野に

「NINJA TOKYO」が誕生したのは2001年11月のこと。同店を発案したのは、すかいらーくホールディングス(HD)の創始者、横川四兄弟の一人である横川紀夫氏と、空間プロデューサーの相羽高徳氏(「新横浜ラーメン博物館」が作品の一例)で、すかいらーくで企画を担当していた鈴木彰氏が、新たに設立したウィルプランニングの初代代表を務めた。すかいらーくの要人が名を連ねるが、すかいらーくHDとは無縁である。

発案した狙いは、フランチャイズ方式によって「世界の主要都市に展開する」ことであった。しかしながら、東京と同時オープンする予定であったニューヨークでは、同時多発テロが起こり、オープンが2004年となった(2020年にコロナ禍で閉店)。その後、日本の東京・西新宿、京都・四条河原町で展開するが、コロナ禍やビルの閉鎖などで、東京・赤坂の直営店1店舗だけで営業していた。その赤坂もビル解体となった。

「NINJA TOKYO」の移転に際しては、同店がランドマーク的な存在となるエリアや、活性化に大いに役立つ施設内などを検討していたが、この新大手町ビルと契約することになってから「NINJA TOKYO」の展望を大きく切り拓くことができるようになった。

まず、この場所は江戸時代、江戸城下のお屋敷跡地である。「NINJA」のストーリー性は抜群に高い。日本の上場企業のほとんどがこのエリアに集中している。「NINJA TOKYO」の主要顧客である海外ビジネスマンの接待需要が多い。名だたるシティホテルもここに集中しているので、コンシェルジュから「楽しい食事の場所」として紹介していただく可能性が高い。

また、新大手町ビルからJR線路を挟んですぐのところに「TOKYO TORCH」のプロジェクトが進んでいる。東京駅の前、3.1平方メートルの街区の中に、高さ390メートルのタワーと7000平方メートルの広場を有する東京の新たなシンボルが誕生する。タワーの上層階にはウルトララグジュアリーホテルがオープンする。このエリアが完成するのは2027年で、ホテルのオープンは2028年となっている。このプロジェクトが完成すると「NINJA TOKYO」は地下でつながることになる。

同店は移転したことで、新しい大きなステージに立っている。また、現在マレーシアにおいて「NINJA KUALA LUMPUR」FC事業の開業準備を進めている、

レジャービジネスの新しい世界観を切り拓く「NINJA」レストランの国内外における躍進に期待したい。

世界的にたぐいまれな「NINJA」のコンテンツをエンターテインメントとしてフルに活かして世界の主要都市に展開する意向だ(ウィルプランニング提供)
世界的にたぐいまれな「NINJA」のコンテンツをエンターテインメントとしてフルに活かして世界の主要都市に展開する意向だ(ウィルプランニング提供)

フードサービスジャーナリスト

柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』とライバル誌それぞれの編集長を歴任。外食記者歴三十数年。フードサービス業の取材・執筆、講演、書籍編集などを行う。

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