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メキシカンリーグに挑戦中の元DeNA・乙坂智、新興球団レオン・ブラボズへ

阿佐智ベースボールジャーナリスト
メキシコウィンターリーグ時代の乙坂(写真提供・オブレゴン球団)

 メキシコの名門、メキシコシティ・ディアブロスロッホスのキャンプに参加しながらも、開幕ロースターに漏れ、その去就が注目されていた元DeNAの乙坂智外野手の移籍先が決まった。新たなプレー先は、ディアブロスと同じメキシカンリーグ南地区に属するレオン・ブラボズ。2017年からリーグに参加した新興球団だ。

 DeNA時代の2017年オフから2シーズン、メキシコのトップ・ウィンターリーグ、メキシカン・パシフィックリーグオブレゴン・ヤキスでプレーした経験をもつ乙坂に対するメキシコ球界の評価は高い。とくにメキシコでの初シーズンとなる2017-18年シーズンには、シーズン途中に帰国するまで、レギュラー外野手として.410の高打率をマーク。その実績も買われてのディアブロスへの移籍だったが、メキシコ球界は「外国人助っ人」に長距離砲を求める傾向が強く、そのため、リードオフマンタイプの乙坂が漏れてしまったのだろう。ディアブロスの外野には、メジャーでの2本を含むプロ通算97本塁打のベネズエラ人の長距離砲、ラモン・フローレスとメキシカンリーグ通算115本のベテランスラッガー、イバン・テラッサがおり、残りを同じプレースタイルの若手選手と争った結果、開幕ロースターに入ることができなかったようだ。

メキシコシティのベテランスラッガー、イバン・テラッサ(筆者撮影)
メキシコシティのベテランスラッガー、イバン・テラッサ(筆者撮影)

 メキシカンリーグには、アメリカ・カリフォルニア州と接するソノラ州を中心に展開されるファームリーグがあるのだが、乙坂としては、ここで「一軍」からの声を待つより、他球団への移籍を模索した方が得策だと判断したのだろう。

 乙坂の移籍先のブラボズの本拠レオンは、メキシコ中部のグアナファト州最大の都市で人口は170万人を数える。近年は日系企業も多数進出しているという。

 この町のメキシカンリーグ球団は、1979年に誕生した。最初のニックネームはカチョロス(子犬)というものだったが成績は芳しくなく、2シーズンで北部アメリカ・テキサスとの国境の町、レイノサに移転してしまった。

 メキシカンリーグは、選手会のストライキの影響で一時期分裂状態に陥るのだが、1981年にはレチュゲロスという、かつてメキシカンリーグとは別個に存在したメキシカン・セントラルリーグのチームの名を冠したチームがレオンに復活した。

 「ブラボズ」は、1983年に誕生した。しかし、成績の方はやはり不振が続き、1980年代の終わりになってようやくポストシーズンに顔を出すようになった。そして1990年には、ついに南地区7チーム中3位となりポストシーズンに進出。同地区を2位で通過したディアブロスロッホスをプレーオフで破ると、続く地区シリーズを勝ち抜き、チャンピオンシップへの切符を手にすると、これも制して球団史上唯一の「メキシコチャンピオン」に輝いている。

 しかし、このチームも、翌1991年限りで石油産業で賑わう大西洋岸ベラクルス州のミナティトランへ移転。その後、長らくレオンから野球の灯は消えてしまった。

 現在の3代目チームは、2017年にレイノサ・ブロンコス(先述のチームとは別系譜のチーム)を地元企業グループが買収し、復活。以後、現在まで続いている。

 このブラボズでは、すでに2人の日本人選手がプレーしている。球団史上初の日本人選手は、アトランタ・ブレーブスのマイナーやルートインBCリーグでプレーしていたスラッガー、島袋涼平で、シーズン途中に加入し、すぐにスタメンに名を連ね安打も放ったが、短期間でリリースされている。

 もうひとりは、ロッテや阪神そしてDeNAで通算97勝を挙げた久保康友(関西独立リーグ・兵庫)である。2019年シーズンに加入し、先発の柱としてチーム最多の8勝を挙げ、154奪三振でタイトルも取っている。乙坂はこのDeNA時代の同僚に続く3人目の日本人選手ということになる。

カルロス・リベロ(2020年カリビアンシリーズ)
カルロス・リベロ(2020年カリビアンシリーズ)

 今シーズンのブラボズには、2017年にヤクルトでプレーしたカルロス・リベロもロースターに入っている。心強いのは、DeNA時代の同僚のピッチャー、ギジェルモ・モスコーソがいることだ。幸い外野陣は手薄でまだレギュラーも固まっていないようなので、チーム合流後はすぐに出番があるだろう。

 すでにレオンは、4月22日に開幕を迎えているが、現在3勝6敗と苦戦している。乙坂がチームの起爆剤となるか。

(文中の写真は特記のない限り筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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