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ノコギリのような口で血を吸う「ブユ」にご注意 夏のキャンプなど野外で刺されないための対策

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:アフロ)

「ブユ」という虫を知っていますか? 地域によっては「ブト」「ブヨ」と呼ばれることもあり、ハエを小さくした姿で、吸血してきます。刺されている時はまったく気付かず、皮膚が腫れてくることで、あとから気付くという厄介な虫です。今回は、どこで刺されるのか? 刺されないためにどうしたらいいか? ブユの傾向と対策をお教えします。

ブユってどんな虫?

ブユは、2~5mmの小さな虫で、形はハエによく似ています。卵、幼虫、蛹(さなぎ)は流水の中で生息しているので、生息に適した渓流等があるところに世界的に広く分布しています。蚊と同様、雌だけが卵に必要な栄養分を摂るために吸血してきます。ただ、吸血方法は蚊とは大きく異なります。

ブユに刺されるとどうなる?

蚊は、口針を皮膚に刺して吸血しますが、ブユは、ノコギリ状の口器で、皮膚と毛細血管を傷つけ、表面ににじみ出た血液を吸い取るという形で吸血します。そのため、刺された場所には点状の出血や内出血が残ることがあります。刺された直後はかゆみや痛みが出ないことが多く、通常は、半日程度経った頃からかゆみと紅斑が出て腫れてきます。ブユに刺されて出る皮膚の症状はアレルギー反応なので、個人差が大きいのですが、強いかゆみと腫れ、ただれた紅斑が数日~10日程度続き、発熱を伴う人もいます。またかゆみが強いことから掻き続けてしまうと、慢性痒疹(ようしん)になることもあります。

いつどんな場所で刺されるの?

ブユは、春から秋にかけて活動しています。主にハイキングやキャンプなどで訪れる渓流沿いや高原で遭遇します。吸血する時間帯は、日中で、特に早朝と夕方に多く、夜間はほぼ刺してきません。ブユの吸血時間は1~2分程度ですが、小さい上に羽音がほぼないことから、近づいてくるのに気付かないことが多いのです。

刺されないようにするには?

ブユは人の吐く息に含まれる炭酸ガスや皮膚から出ている汗の中の乳酸などに寄ってきます。

ブユがいそうな野外へ行く時は、長袖、長ズボンを着用しましょう。ボタン留めの服では隙間からブユが潜り込む場合もあるのでファスナー付きのほうがいいでしょう。特に足元が狙われやすいので、靴下を履き、ズボンの裾から入らないように隙間を作らないことも大事です。顔の周りは、額、耳、あごや首の後ろが刺されやすいので、タオルやスカーフを巻いたり、フードで覆ったりすることも必要です。

色は暗い色に寄って来るので、白っぽい明るい色の服がよいでしょう。

長袖、長ズボンを着用していない時は、市販の虫よけ剤を露出部に塗布すると効果的です。長ズボンをはいていても、隙間がある場合は塗布してください。虫よけ剤は、汗をかくと効果が薄まるので、塗り直してください。日焼け止めの前に虫よけ剤を塗ると効果が半減するので、日焼け止めを塗ったあとに虫よけ剤を塗りましょう。塗り直しの場合もその順番にしてください。

長時間、野外にいる場合は、ピレスロイド系薬剤を使用した、携帯用の電池式の虫よけ器具が役立ちます。薬剤が身体の周りで揮散してブユに刺されなくなります。また、着ることで吸血昆虫から身を守る防虫素材の服もあり、虫が止まっても逃げていく仕組みになっているので、渓流や高原などよく行く方はこちらもお勧めです。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

昔もブユには困っていた?

「脚絆(きゃはん)」や「手甲(てっこう)」というものをご存知でしょうか? 長時間の歩行や野外での労働の際、脛(ふくらはぎ)や手の甲を保護するために着けられていたものですが、これが考案されたきっかけは、ブユをよけるためであったという説もあります。昔の人もブユには困っていたものと考えられ、歩行や作業時の保護以外にブユから身を守るためにも役立っていたのでしょう。

最後に…

最近、郊外の住宅地でもブユが生息しているという情報もあります。実際、昨年9月に私の知り合いは、郊外にある自宅付近を散歩中にブユに刺されました。特に渓流のそばを歩いたというわけでもありません。長ズボンをはいていたのですが、ヒラヒラした裾だったので、そこからブユが入り刺されたと見られます。とても赤くなってかゆかったそうですが、掻いたら跡が残ると皮膚科医に言われ、我慢したおかげで、刺された跡はきれいになっています。

夏は、キャンプや川遊び、渓流釣りなどアウトドアレジャーを楽しみたい季節です。野外は、ブユだけではなくいろいろな虫から狙われていることを忘れず、十分な対策をしてお出かけください。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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