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ロシアのショイグ国防大臣がシリアを訪問し、アサド大統領と会談する中、首都ダマスカスなどで爆破テロ発生

青山弘之東京外国語大学 教授
SANA、2022年2月15日

ショイグ国防大臣がシリアを訪問

ウクライナ情勢をめぐって米国とロシアの緊張が高まるなか、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣を代表とする軍事使節団が2月15日にシリアを訪問した。

ロシア国防省やシリア大統領府が発表したところによると、ショイグ国防大臣ら一行は、地中海東部のタルトゥース港(タルトゥース県)でのロシア海軍の軍事演習を航空視察、続いてフマイミーム航空基地(ラタキア県)を訪問し、同地を視察した。

タルトゥース港には、1971年にロシア海軍(当時はソ連海軍)が設置した補給基地(MTSP)がある。地中海域においてロシアが保有する唯一の軍事拠点であり、対NATO軍事戦略の要衝となっている。

一方、フマイミーム航空基地(殉教者バースィル・アサド国際空港)は、イスラーム国やシャームの民のヌスラ戦線(現在のシャーム解放機構)を主体とする反体制派に対する「テロとの戦い」を支援するとして、ロシア空軍(航空宇宙防衛軍)が2015年半ばに戦闘爆撃機などを配備、駐留ロシア軍の司令部が設置された。

ロシア国防省は、ショイグ国防大臣のシリア訪問と合わせて、Tu-22M中距離爆撃機、MiG-31迎撃戦闘機を地中海東部での軍事演習に参加させるためにフマイミーム航空基地に配備したと発表した。

インターファクス通信が2月15日に伝えたところによると、キンジャール極超音速ミサイルも併せて配備されたという。

アサド大統領と会談

視察を終えたショイグ国防大臣ら一行は、首都ダマスカスに移動し、シリアのバッシャール・アサド大統領と会談、「テロとの戦い」における両国の軍事技術協力にかかる諸問題、ロシアからの人道支援、欧米諸国によるシリアへの一方的制裁への対応などについて意見を交わした。

ショイグ国防大臣はアサド大統領に、テロを支援する諸外国がテロ組織を再生しようと試みているなか、シリアが全土で主権を回復するまで、ロシアが「テロとの戦い」でシリアとの協力を続けるとともに、シリア国民が制裁や封鎖の影響を克服するのを支援すると改めて強調したという。

首都ダマスカスなどでテロ発生

一方、SANAによると、シリアの首都ダマスカスでは、2月15日早朝(午前7時25分頃)、アブドゥッラフマーン・ダーヒル交差点(通称ジャマーリク(税関)交差点)近くで軍の夜行バスに仕掛けられていた爆弾が爆発し、乗っていた兵士1人が死亡、11人が負傷した。

英国で活動を続ける反体制系NGOのシリア人権監視団によると、前日の2月14日にも、シリア中部のヒムス市とマヒーン町(いずれもヒムス県)を結ぶ街道で、シリア軍兵士を載せた夜行バスの通過に合わせて仕掛け爆弾が爆発し、兵士1人が死亡、複数が負傷した。

いずれの爆破テロも実行犯は不明。

なお、ロシアは現在もなお、シリア中部の砂漠地帯で潜伏活動を続けるイスラーム国に対して連日爆撃を実施している。

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリア地震被災者支援キャンペーン「サダーカ・イニシアチブ」(https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』などがある。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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