シリア南部ダルアー県で元反体制派からなるシリア軍第5軍団兵士9人が爆殺…葬儀は反体制デモに発展
第5軍団兵士が乗ったバスが爆破され、9人死亡
シリア南部のダルアー県では6月20日、県庁所在地であるダルアー市東のキヒール村の街道で、シリア軍第5軍団の兵士を乗せた大型バスの通過に合わせて、仕掛けられていた爆弾が爆発し、乗っていた兵士9人が死亡、19人が重軽傷を負った。
第5軍団は、2016年11月22日にシリア軍武装部隊総司令部が、既存の部隊、予備部隊(国防隊、人民諸委員会などのシリア人民兵)、同盟勢力(ロシア、イランなど)と連携して、シリア全土で治安と安定の回復を実現するために新設した部隊。
教練はシリア駐留ロシア軍が主導、シリア政府との和解に応じたダマスカス郊外県東グータ地方やダルアー県の反体制武装集団の戦闘員を中心に構成されている。
爆弾を仕掛けた実行犯は不明だが、ダルアー県では、正体不明の武装集団によるシリア軍、治安機関、住民を狙った襲撃事件が続いていた。
葬儀が抗議デモに発展
ダルアー県東部のブスラー・シャーム市では6月21日、バス爆破事件で死亡した兵士の葬儀が行われた。
だが、葬儀に参列した住民や第5軍団の兵士が、政府を批判するシュプレヒコールを連呼、会葬者の列はデモ行進と化した。
会葬者は数千人に及び、バッシャール・アサド政権退陣、体制打倒のほか、「イランの民兵」やレバノンのヒズブッラーの退去などを訴えた。
シリア国内で数千人規模の抗議行動が行われたのは、2018年にダルアー県がシリア政府の支配下に復帰して以降では今回が初めて。
なお、ブスラー・シャーム市では6月20日にも、住民数十人が同様のデモを行った。
シーザー・シリア市民保護法に抗議するデモ
一方、シリア東部のダイル・ザウル県では、シリア政府の支配下にあるユーフラテス川西岸のダイル・ザウル市で、6月17日に発動された米国のシーザー・シリア市民保護法による一方的制裁に抗議するデモが行われ、多数の住民が参加した。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)