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シリア・ロシア軍の攻撃でトルコ軍兵士多数が死傷する一方、反体制派はM4高速道路の要衝を奪還

青山弘之東京外国語大学 教授
Ebaa News、2020年2月24日

ナイラブ村一帯でのシリア軍との砲撃戦でトルコ軍兵士1人死亡(22日)

イドリブ県では、シリア軍が22日(土曜日)、M4高速道路沿線のナイラブ村一帯で、トルコ軍および「決戦」作戦司令室と砲撃戦を行い、トルコのガジアンテップ県の発表によると、トルコ軍兵士1人が重傷を負い、その後死亡した。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構、トルコの庇護を受ける国民解放戦線(国民軍)などならなる武装連合体。日本では「反体制派」、「自由シリア軍」と呼称されることが多い。

シリア軍がカフルナブル市近郊でトルコ軍車列を砲撃、兵士複数負傷(22日)

一方、トルコ軍は、ヒルバト・ジャウズ村やカフルルースィーン村の通行所から戦車や装甲車約70輌をシリア領内に進入させた。

だが、シリア軍は、カフルナブル市に展開するためにバーラ村近郊に停車していたトルコ軍の車列を砲撃、これを撤退させた。

この砲撃で、トルコ軍兵士複数が負傷した。

ロシア軍がトルコ軍監視所・拠点を爆撃(23日)

また、英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機が23日(日曜日)、トルコ軍の監視所・拠点が設置されているイドリブ県のバアス前衛基地一帯、ハマー県シール・マガール村一帯を爆撃した。

ロシア軍戦闘機はまた、イドリブ県のイフスィム村、カンスフラ村、カフルサジュナ村、カフルナブル市、アブディーター村、バーラ村、ダイル・サンバル村などを爆撃、シリア軍戦闘機もザーウィヤ山、アルバイーン山、アリーハー市を爆撃した。

トルコ軍が設置したばかりの拠点をロシア軍が爆撃、兵士10人死傷(24日)

トルコ軍はまた24日(月曜日)、戦車、装甲車など約100輌からなる増援部隊をカフルルースィーン村の通行所からシリア領内に進入させ、イフスィム村、カンスフラ村近郊、カンスフラ村・バーッラ村間、バサーミス村近郊に新たな拠点を設置した。

だが、シリア軍戦闘機がカンスフラ村に設置されているトルコ軍拠点を爆撃し、シリア人権監視団などによると兵士10人が死傷した。

反体制系のEldorarによると、爆撃を受けたのは、カンスフラ村・バーッラ村に設置されたばかりのトルコ軍の拠点で、シリア軍ではなく、ロシア軍戦闘機が攻撃を行ったという。

シリア軍がイドリブ県の複数カ村を制圧(23~24日)

また、国営のシリア・アラブ通信(SANA)によると、シリア軍は23日、「決戦」作戦司令室との戦闘の末、マアッラト・ヌウマーン市西北のシャイフ・ダーミス村、ハントゥーティーン村を制圧した。

これにより、シリア軍はカフルナブル市一帯地域の包囲・制圧とシャフシャブー山、ザーウィヤ山への進攻に向けた前哨地を確保した。

Step News、2020年2月23日
Step News、2020年2月23日

シリア軍は24日にも、「決戦」作戦司令室と交戦、タッル・ナール村、シャイフ・ムスタファー村、ナキール村、カフルサジュナ村、ウライニバ村、ストゥーフ・ダイル村、マアッラト・ハルマ村、マアッルズィーター村、ジャバーラー村、ウンム・スィール村、マアッラト・スィーン村を制圧した。

トルコ軍の支援を受ける「決戦」作戦司令室がナイラブ村を奪還(24日)

一方、トルコ軍がナイラブ村一帯に対して激しい砲撃を加えるなか、「決戦」作戦司令室は24日、再び攻勢をかけ、シリア軍との戦闘の末にナイラブ村とその周辺のマアッラト・ウルヤー村、サーリヒーヤ村、サーン村を奪還した。

Step News、2020年2月24日
Step News、2020年2月24日

ラッカ県でもシリア軍とトルコ軍の緊張高まる(22~24日)

ラッカ県では、クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いANHAによると、トルコ軍とその支援を受ける国民軍が22日、タッル・アブヤド市近郊のサールージュ村、クーバルラク村、カズアリー村にあるシリア軍拠点に対して砲撃を行った。

シリア軍は迎撃を行い、ビールカヌー村一帯で国民軍と交戦した。

一方、シリア人権監視団によると、シリア軍の装甲車、戦車など120輌からなる増援部隊が24日、アイン・イーサー市近郊に派遣され、トルコ占領地の境界地帯に展開した。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリア地震被災者支援キャンペーン「サダーカ・イニシアチブ」(https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』などがある。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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