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フル液晶デジタルメーターは、クルマのカラーユニバーサルデザイン実現の最強ツールとなりうる!

安藤眞自動車ジャーナリスト(元開発者)
ルノー・アルカナのフル液晶メーター(撮影筆者)。

 近年、メーターパネルにフル液晶を使用するクルマが増えてきました。機械式メーターと異なり、表示内容の切り替えは自由自在だし、微妙な発色も可能になるなど、多くのメリットを持っています。メーカーにとっても、車型間でハードウェアを作り分けする必要がありませんし、機械式ほど奥行きを取りませんから、搭載スペースに頭を悩ませる必要がないなどのメリットがあり、今後、より廉価なモデルにまで拡大していくものと思われます。

現状の液晶メーターは、色使いに課題も。

 そんなフル液晶メーターですが、カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)の副理事長を通じて、ある相談が寄せられました。同機構は、いわゆる「色弱」と呼ばれてきた人でも見分けが付けやすい色使いを世の中に広める活動をしている組織で、その会員のかたから「今度買ったクルマの液晶メーターが見にくくて困っている」という相談が寄せられたのです。

 まずは、下の写真を見て下さい。左が一般色覚(C型)、右が赤緑色弱(P型)の人による同じメーターの見えかたです(”色のシミュレータ”というフリーアプリを使用しています)。

BMW3シリーズの夜間モードは文字が赤くなるため、P型色覚には暗くて見づらくなります(撮影筆者)。
BMW3シリーズの夜間モードは文字が赤くなるため、P型色覚には暗くて見づらくなります(撮影筆者)。

 問題点については写真にも書いてあるとおり、P型色覚の人は赤色を暗く感じるため、夕暮れ時に夜間モードに切り替わると、表示が見えにくくなるのです。(問題提起されたかたの意見を要約して記載しています)

 つぎに、こちらを見て下さい。これはAUDIのフル液晶メーターを、ナビ中心に表示した例です。

AUDIバーチャルコクピットは、ナビ画面を大きく表示できるが、P型色覚の人には色調が同じに見えてしまう。半ドア警告は、ほとんど気付かない。(撮影筆者)。
AUDIバーチャルコクピットは、ナビ画面を大きく表示できるが、P型色覚の人には色調が同じに見えてしまう。半ドア警告は、ほとんど気付かない。(撮影筆者)。

 つづいて、国産車の例も挙げておきましょう。後者はメーターではなくバックモニターです。多様な配色のできる液晶メーターでは、こうした問題が起きているのです。

日産オーラのメーター表示(撮影筆者)。
日産オーラのメーター表示(撮影筆者)。

ホンダのバックモニター。P型の人には、誘導線が見づらいことがわかります(撮影筆者)。
ホンダのバックモニター。P型の人には、誘導線が見づらいことがわかります(撮影筆者)。

色覚が違うんだから仕方ない? そんなことはありません!

「そうは言っても、そういう色覚に合わせた配色にして、多数派が見づらくなったら本末転倒なんじゃない?」と思うかたもいるかも知れません(※)。しかし、フル液晶メーターの特徴を思い出して下さい。いかなる色調や明るさでも、表示させることが可能なのです。

 ならば、それぞれの色覚に合わせて専用の配色や明るさにした表示モードを用意しておき、ユーザーが任意に選択できるようにしておけば良いのです(スマホやパソコンにも展開可能ですね)。さらに、エンジン始動に使うスマートキーにその情報を記憶させておき、それぞれのキーに応じて、設定した色覚タイプ別の表示に自動的に切り替わるようにしておけば、誰も困ることなく、誰もが便利になるでしょう。

※:一般色覚(C型)以外の色覚を持つ人は、日本人男性の約5%、白人男性の約8%いるとされています。男女同数の40人学級なら、ひとりはいる計算です。

 人が多様な色覚を持つのは先天的なものであり、異常なものでも治療が必要なものでもありません。いわば、身長や手足の長さが多様であるのと同じです。ならば、クルマのシートの位置が体格に合わせて調整できるように、メーターなどの表示系も、色覚に合わせて調整できるようにしても良いはずです。それが既存技術で可能であるなら、対応しない手はないのではないでしょうか。

自動車ジャーナリスト(元開発者)

国内自動車メーカー設計部門に約5年間勤務した後、地域タブロイド新聞でジャーナリスト活動を開始。同時に自動車雑誌にも寄稿を始め、難しい技術を分かりやすく解説した記事が好評となる。環境技術には1990年代から取り組み、ディーゼルNOx法改正を審議した第151通常国会では参考人として意見陳述を行ったほか、ドイツ車メーカーの環境報告書日本語版の翻訳査読なども担当。道路行政に関しても、国会に質問主意書を提出するなど、積極的に関わっている。自動車技術会会員。

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