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木に登るウジムシは正義の味方=アブラムシ駆除に大活躍するヒラタアブ幼虫

天野和利時事通信社・昆虫記者
交尾中のホソヒラタアブの様子は実に可愛い。幼虫はアブラムシ退治に大活躍する。

 庭やベランダで大切に育てている植物にアブラムシが大量発生すると、実に気味悪い。そのアブラムシの集団の中に、時々ウジムシがいて、それもまた実に気味悪い。殺虫剤による大虐殺という最終手段に訴える人も多いのではないだろうか。

 しかしこのウジムシは、アブラムシ駆除に大活躍するヒラタアブの幼虫だ。このウジムシの姿があちこちに確認できれば、アブラムシは激減していく可能性が高い。

アブラムシの集団を襲うホソヒラタアブの幼虫。
アブラムシの集団を襲うホソヒラタアブの幼虫。

ホソヒラタアブ幼虫のアブラムシ捕食の瞬間。
ホソヒラタアブ幼虫のアブラムシ捕食の瞬間。

ホソヒラタアブ幼虫の攻撃を受けた後のアブラムシ集団の惨状。
ホソヒラタアブ幼虫の攻撃を受けた後のアブラムシ集団の惨状。

 昆虫記者はベランダの植物でこのウジムシを見つけると、アブラムシ退治を一時中断する。アブラムシの集団はこのウジムシにとっては大切な餌だ。自然にも人体にも悪そうな殺虫剤はなるべく使わずに(昆虫記者のアブラムシ退治は指でつぶすだけだ)、生物農薬とも呼ばれるテントウムシ(幼虫、成虫)、クサカゲロウの幼虫、ヒラタアブの幼虫などに頼ってアブラムシを駆除できるなら、それが一番自然の摂理にかなっていると思う。

 ヒラタアブの仲間で一番多く見かけるのは「ホソヒラタアブ」だ。ホソヒラタアブの成虫が花にとまっていたり、交尾していたりすると、すごく可愛い。年に何回も発生し、真冬でも暖かい日にはその姿を見かけることがある。

 成虫は花の花粉のほか、アブラムシの出す甘い汁も餌にしているという。また、アブラムシの集団の中に産卵するため、アブラムシの多い植物の近くで見かけることが多く、わが家のベランダには1年中いる。

空中で交尾中のホソヒラタアブ。
空中で交尾中のホソヒラタアブ。

アブラムシの集団の中のホソヒラタアブ幼虫。「がんばってアブラムシを駆除して」と応援したくなる。
アブラムシの集団の中のホソヒラタアブ幼虫。「がんばってアブラムシを駆除して」と応援したくなる。

ヒラタアブの仲間の蛹。アブラムシの多い葉の近くで見つかる。
ヒラタアブの仲間の蛹。アブラムシの多い葉の近くで見つかる。

 ホソヒラタアブの姿は蜂に似ているが、ハエに近い仲間なので、翅は2枚(蜂は4枚)しかない。人を刺すこともなく、人畜無害なおとなしい虫だ。

 ヒラタアブの仲間を蜂だと思って、怖がったり、追い払ったりする人もいる。しかし昆虫記者は、冬の陽の光が差し込むわが家のベランダで元気に飛び回るこのアブを見かけると、可愛い姿にみとれ、幼虫のアブラムシ駆除での活躍を期待して、つい「がんばって産卵して」などと応援したくなる。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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