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日本一真っ赤なトンボ。それなのに赤トンボじゃないの?=ショウジョウトンボ#赤トンボ #昆虫

天野和利時事通信社・昆虫記者
こんなに真っ赤なのに、「赤トンボじゃない」なんて言われるのはなぜ。

 日本のトンボの中で、全身くまなく赤いトンボ、一番真っ赤なトンボは、たぶんショウジョウトンボのオスだろう。目玉、胸部、腹部、そして脚まですべて真っ赤だ。どう見ても赤トンボの代表だ。しかし、このショウジョウトンボは、正式には赤トンボの仲間に入れてもらえないのだという。

 トンボの一般的な分類では、いわゆる赤トンボとは、アキアカネ、ナツアカネなど「トンボ科アカネ族」のトンボとされる。ショウジョウトンボは真っ赤なのに、なぜかこのアカネ族に入れてもらえない。

どう見ても赤とんぼの代表に見えるショウジョウトンボ。
どう見ても赤とんぼの代表に見えるショウジョウトンボ。

お尻を突き上げたショウジョウトンボ。この格好いいポーズをよく見かける。
お尻を突き上げたショウジョウトンボ。この格好いいポーズをよく見かける。

 「あまりにも赤すぎて、意地悪をされた」わけではなく、アカネ族に共通する細かい特徴(黒く長い脚を持つものが多いなど)を備えていないのだという。そんな学術的な分類など無視して、「赤いトンボは全部赤トンボ」と解釈するのも、一般認識として決して間違いではない。童謡「赤とんぼ」の中で「夕焼け小焼けの赤トンボ(作詞:三木露風,作曲:山田耕筰)」と歌われている赤トンボが「アカネ族のトンボだ」と言い張る者はいないだろう。

 一方、アカネ族の正統派赤トンボの中には、全く赤くない(ナニワトンボは青っぽい)ものや、黄色いもの、腹部だけが赤いものなどもいる。

舞妓さんの化粧のような顔をしたマイコアカネ。こちらは正真正銘アカネ族の赤トンボ。
舞妓さんの化粧のような顔をしたマイコアカネ。こちらは正真正銘アカネ族の赤トンボ。

 ◆伝説の生き物「猩々」の血の色

 ショウジョウトンボの名前は、猩々(しょうじょう)という伝説上の生物から取られたという。ショウジョウトンボの赤色が、猩々の体色(黄色がかった緋色と言われる)、あるいは猩々の血の色(真っ赤なまま色あせないという)に似ているとか言われる。

 アキアカネのように群れを成すこともなく、真っ赤な猩々の血の色に染まったショウジョウトンボは「赤トンボの仲間に入れてほしい」などと意気地のないことを言わない、孤高の真っ赤なトンボなのである。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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