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意外や意外、東京都心の公園はノコギリクワガタの宝庫

天野和利時事通信社・昆虫記者
中央が大歯型、左右はイトノコと爪切りのような小歯型のノコギリクワガタのオス

 ノコギリクワガタやカブトムシは田舎より東京都心の方が圧倒的に見つけやすい?嘘のようだが、ある意味でこれは真実だ。

 都心の大きな公園は、クヌギ、コナラ、シラカシなどドングリができる木が多い。そして、この3種の木は、クワガタ、カブトムシが好む樹液を出す。こうした公園には、生き物が暮らしやすい環境を整えるため、朽木(クワガタの幼虫の餌になる)や腐葉土(カブトムシの幼虫の餌になる)が積み上げられていることも多い。このため毎年かなりの数のクワガタ、カブトが発生する。

 その上、散策路が縦横に設けられているので、クワガタ、カブトを見つけるのが比較的容易だ(田舎では危険な藪に入り込まないと見つけられないことも多い)。

下方のメスをめぐるノコギリクワガタのオス同士の決闘。新宿区の公園の木の洞の中での出来事。
下方のメスをめぐるノコギリクワガタのオス同士の決闘。新宿区の公園の木の洞の中での出来事。

 最近はクワガタやカブトをホームセンターや道の駅、高速道路のサービスエリアなどでも売っているが、やはり自然(都心の公園を自然と呼べるのかやや疑問ではあるが)の中で、自力で見つけることが、子ども時代のエキサイティングな思い出になる。

 ただし、こうした都心の大きな公園では、ほぼ例外なく動植物の採集が禁止されている。それでも、クワガタやカブトを自力で見つけ、観察したり、写真に撮ったりすることはできる。逃がしてやることを条件に、手でつかんでみるぐらいは、たぶん許容されるだろう。

 田舎でクワガタ、カブトを採集する際に一番手っ取り早いのは、灯火採集(街灯、終夜営業のコンビニの明かりなどに集まる虫を捕まえること)だ。しかし、灯火採集では、虫の生息環境を知ることはできない。なので、都心の公園での観察と田舎での採集が、ベストの組み合わせかもしれない。

覆いかぶさるようにメスを守るノコギリクワガタのオス。メスはちゃっかり食事中。今年7月、渋谷区の森にて。
覆いかぶさるようにメスを守るノコギリクワガタのオス。メスはちゃっかり食事中。今年7月、渋谷区の森にて。

メスを守る大型のオスの雄姿。今年7月、渋谷区にて。
メスを守る大型のオスの雄姿。今年7月、渋谷区にて。

 都心の公園の狙い目は、早朝か閉園間近の夕方。カブトは7月半ばからが本番だが、ノコギリクワガタはカブトの天下になる前の7月前半の方が見つけやすいようだ。

8月になるとカブトが樹液酒場の名店を独占するようになる。新宿区にて。
8月になるとカブトが樹液酒場の名店を独占するようになる。新宿区にて。

 店で売っているクワガタは大きいのばかりだが、自然の中のクワガタは大小さまざま。特にノコギリクワガタのオスは、爪切りのような小さい歯(大あご)のものから、通称イトノコと呼ばれたりする細長い歯のもの、湾曲した巨大な歯を持つものまでいて、まるで別種のように見える。樹液酒場で大きなオスが、小さなメスを腹の下に抱え込むようよう守る様子を目にすることも多く、そんな愛情深いオスは特に格好よく見える。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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