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真冬の公園にスーパーカー大集合。「マッハ号」にそっくりの虫なんて言っても、分かる人はいない。

天野和利時事通信社・昆虫記者
レース場でスタートの合図を待つフェラーリのようなプラタナスグンバイ。

 純白のフェラーリのようなレーシングカーが、真冬の公園に大集合。スーパーカー・ファンなら絶対見逃せない、めったに見られない光景…と思ったら何か変。フロント部分には、目のようなものがあり、触角のようなものが突き出ている。

 そう、これは虫。昆虫記者はスーパーカーになど興味はない。プラタナスの木があれば、ほぼ確実にどこにでもいる「プラタナスグンバイ」は、カメムシ目、グンバイムシ科の外来の害虫だ。

真冬にプラタナスの樹皮下で集団越冬するプラタナスグンバイ。
真冬にプラタナスの樹皮下で集団越冬するプラタナスグンバイ。

 プラタナスは外国から持ち込まれた木で、明治時代から「虫が付きにくい」街路樹として普及し始めたらしい。しかし、日本全国プラタナスだらけになったら、そんな豊富な餌を虫が放っておくはずがない。2000年前後から全国各地で確認され始めたプラタナスグンバイは、その後スーパーカーのようなすさまじい勢いで勢力を拡大。あっという間に全国制覇を成し遂げ、プラタナスの「害虫」として、その名をとどろかせるようになった。

 しかし、外国の木とともに、外国の虫を日本に招いたのは人間。海外から招かれたのに「害虫」として日々駆除されるプラタナスグンバイは、ちょっとかわいそうにも思える。

 なので、たまにはそのフォルムの美しさを鑑賞しよう。真冬には、はげ落ちかけたプラタナスの樹皮の下で、プラタナスグンバイが集団越冬している姿が見られる。体長3~4ミリの小さな虫だが、大集合すると、レース場でスタートを待つスーパーカーの一群のようにも見えて、なかなか格好いい。

ホワイトボディーの「マッハ号」のようだが、拡大すると虫だと分かる。
ホワイトボディーの「マッハ号」のようだが、拡大すると虫だと分かる。

夏場にプラタナスの葉がこんな風になっていたら、葉裏にプラタナスグンバイが山ほどいるかも。
夏場にプラタナスの葉がこんな風になっていたら、葉裏にプラタナスグンバイが山ほどいるかも。

葉裏のプラタナスグンバイ。黒いのは幼虫。
葉裏のプラタナスグンバイ。黒いのは幼虫。

コントラストを強くするとオブジェのように見えて格好いいプラタナスグンバイ。
コントラストを強くするとオブジェのように見えて格好いいプラタナスグンバイ。

 今から50年以上前に最初にテレビ放映された大人気アニメ「マッハGoGoGo」の主人公が乗るホワイトボディーの「マッハ号」にそっくりなので、昆虫記者はプラタナスグンバイをデジカメで拡大表示しながら「マッハゴー、ゴー、ゴー」歌い出してしまう。しかし、そんな話は、若者には全く通じないかもしれない(リメイク版もあるようなので若い人も知っているかも)。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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