枯れ枝のような越冬トンボは、初夏に青く美しく大変身
成虫で越冬するトンボがいることは、虫好き以外にはあまり知られていない。知っていたところで、よほどの虫好きでない限り、わざわざ探しにはいかない。越冬中はまさに枯れ枝のような姿なので、発見が困難な上に、見つけたところで、誰に自慢できるわけでもない。
越冬トンボは日本に3種類いる。その中で昆虫記者のお気に入りはホソミオツネントンボだ。ホソミオツネントンボは、越冬を終え、春から初夏にかけて、結婚適齢期になると、青く美しく変身する。
冬の寒さに耐えて、華やかな姿へと大変身を遂げるという、アンデルセン童話の「醜いアヒルの子」のようなストーリーが、虫好き感動の涙を誘うのだ(昆虫記者は泣いたことはないが、きっと泣く人もいる)。そんな乙なトンボなので、「オツネン」と呼ばれるわけではない。越年するからオツネンなのだ。
日本の越冬トンボは、ホソミオツネントンボ、オツネントンボ、ホソミイトトンボの3種。どれも東京都区部ではかなり数が減っているらしいが、昨年は、葛西臨海公園でホソミオツネントンボとホソミイトトンボを撮影できたし、オツネントンボは以前、多摩川の河川敷でたくさん見かけたので、目を皿のようにして探せば、まだまだ東京でも出会いはある。だたし、先に指摘したように、見つけたところで、大した自慢にはならないので、「なーんだ、こんな地味なトンボなのか」とか、昆虫記者に文句を付けたくなるかもしれない。
しかし、春になって青く変身したホソミオツネントンボを目にした時に、このトンボに対する見方がガラリと変わる。そして突如、昆虫趣味に目覚める…などという話は、残念ながらこれまで聞いたことがない。
(写真は特記しない限り、過去記事を含めすべて筆者撮影)