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2020年東京オリンピック・パラリンピックを画期的な取り組みを進めるうえでの起爆剤に

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
(写真:アフロ)

2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、海外から選手や観光客を受け入れることになりますが、人種や宗教、言葉、文化など様々な配慮が必要になってくると思います。ここでは2020年に向けてどのような取り組みが必要なのか考察していきます。

一つには、パラリンピックのためのインフラ整備が挙げられます。具体的には、車椅子のスペース確保などバリアフリーの充実などです。

例えばトイレのマーク(ピクトグラム)は1964年の東京オリンピックのときに設置されたものです。画期的な取り組みを進めるうえでの起爆剤になるのがオリンピックです。この機会にぜひいろいろな環境整備を行って欲しいです。

また観劇という視点からも見ていきましょう。「NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク」は、障害者当事者を中心として、文化芸術へのアクセシビリティの確保及び、障害者の観劇・鑑賞の環境向上を目指して活動しています。

2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、多くの文化プログラムが東京都内で実施されると予想されます。これらのイベントに、聴覚・視覚等に障害のある人も参加、鑑賞できるような環境整備が不可欠になります。

演劇やライブイベントに出かけても、なぜ周りの観客が笑っているのか分からず孤立している、とりわけ聴覚障害者、視覚障害者がいる現状があります。字幕や手話通訳、聴覚保障(磁気ループなど)、音声ガイド、舞台説明、触る模型などの観劇サポートがあれば、健常者と同じように笑ったり、感動したりすることができます。

観劇サポートには、設備や人材の確保に一定のコストがかかりますが、現状では、アクセシビリティ確保に向けた公的な財源、人的支援はありません。必要性を各劇場や劇団、主催者の自己負担となっていることから、観劇サポートの推進がままならない状況です。観劇サポートを充実させるために文化政策の一環として積極的に取り組むべきだと思います。

また、私は以前に『2020年東京オリンピックで海外からのお客様を「おもてなし」するために必要なLGBTの視点』という記事を書いています。

教育施策ではとりわけ国際的に活躍できる人材の育成を目指し、英語教育を充実させることが焦点にあてられているようですが、国際人というならば、語学よりもまず、多様な人々と向き合う姿勢を身につける必要があるでしょう。文化でも、民族でも、違いを理解し向き合う姿勢、いわば、人権を尊重する姿勢は、国際人の必須条件だと言えます。

子どもたちが語学だけではなく真の意味で、さまざまな視点を養えるようにすることが大切だと思っています。自分と異なる個性、言葉、文化を持つ人や国を認め合うことの大切さを学び、性にも多様性があるということも知って欲しいです。多様性とは何かという議論を「外国からのお客さまを迎えるため」だけにとどまらせず、きちんと教育にも活かしてもらいたいです。

ここではごく一部の事例についてご紹介してみましたが、2020年の東京オリンピックでは果たして日本は海外の選手や観光客を迎え入れられるだけの器が国民に身についているでしょうか。オリンピックの精神には人種であったり、肌の色であったりといろいろな差別を禁じています。そのような意味でも誰でも楽しく参加できるような環境の整備が必要になってきます。東京オリンピックという世界の注目が集まる大舞台。そこで“世界の多様性に通用する日本人”をアピールできることは、国際社会の一員として意義のあることではないでしょうか。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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