2020年東京オリンピックで海外からのお客様を「おもてなし」するために必要なLGBTの視点

2020年東京オリンピックでは日本の「おもてなし」を世界に広めましょう!

タイトルにもある「LGBT」という言葉をみなさんは知っていますか。日本では、自殺対策基本法のもと、自殺対策の指針が定められた自殺総合対策大綱のなかで「性的マイノリティ」という言葉で記載されています。

LGBTとは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)の頭文字をとった言葉で、大まかに言えば、同性や両性に恋愛・性愛の感情を抱いたり、心身の性別が一致しない人々などを指した概念です(※)。

※もっと詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

「セクシュアル・マイノリティ/LGBT基礎知識編」

ロシアのソチオリンピックで起きた事件

2014年2月、ロシアのソチで冬季オリンピックが開催されました。この世界的なスポーツの祭典の開幕式には各国の大統領や首相が出席していましたが、アメリカのオバマ大統領、フランスのオランド大統領、ドイツのガウク大統領など、欧米の主要国要人は欠席しました。理由は明言されていませんが、MSN産経ニュース(2014年2月7日記事)や、東洋経済オンライン(2014年2月19日記事)では、人権問題がひとつの要因である可能性を示しています。その人権問題のキーワードがLGBTなのです。

ロシアでは2013年6月に「同性愛プロパガンダ禁止法」(以下、禁止法)が制定されました。この法律は「未成年者に対して同性愛の助長」を行った者を罰する法律であり、入国した外国人にも適用されます。まさにLGBTの人権を無視した法律なのです。人権問題に取り組むNGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によれば、LGBT当事者が襲撃に遭うなどの暴力被害が実際に出ているといいます。

オリンピックに政治を絡めることが問題視されることもありますが、人権問題に注力し、かつ、同性婚を支持することを公にしているオバマ大統領の欠席に、こうしたロシアの人権問題の背景があるとすれば、相当に強い意志をもった欠席表明だったと言えるかもしれません。

2020年東京オリンピックではLGBTも安心して参加できる環境を

誰もが安心して参加できる東京オリンピックをみんなで作っていきましょう。
誰もが安心して参加できる東京オリンピックをみんなで作っていきましょう。

ところで、日本においてLGBTがどれだけいるか知っていますか。電通総研が2012年に行った調査によれば5.2%という数字が出ています。20人に1人はいる計算になります。2014年のソチオリンピックの参加者数に当てはめてみると、約2,800人中約140人はLGBTだということになります。日本の数字を世界に当てはめて考えるのは適当ではないかもしれません。しかし、事実として、10人弱の参加選手が、禁止法があるにも関わらず、LGBTであることを公表して参加していました。もしかすると、LGBTの選手たちはロシアに入国した途端に処罰の対象になったかもしれません。襲撃の対象になったかもしれません。そういう不安は少なからず当事者の本人たちも感じていたのではないでしょうか。

2020年の東京オリンピックでは、果たして日本はLGBT選手を迎え入れられるだけの器が国民に身についているでしょうか。

国際人権法ではすべての国にLGBTを拷問・差別・暴力から保護する義務があるとしています。にも関わらず、日本では、公人が公の場でLGBTに対して差別的な発言をし、また、それに便乗するようにWEB上ではLGBTを叩く言葉や差別発言を支持する声が上がってきています。これを表現の自由だと権利を主張する者もいますが、ならば、LGBTの、法の下の平等、差別から保護される権利も認めるべきだと思います。どちらとも、基本的人権の主張であるのですから。

「オリンピック教育」にLGBTの視点を

今こそ日本人の国際性を世界に示すチャンスです!
今こそ日本人の国際性を世界に示すチャンスです!

国際社会の一員として、日本の人権教育は充分と言えるでしょうか。少なくとも、LGBTに関していえば不充分だと言えます。

2013年に、LGBTなど性的マイノリティの自殺対策に取り組む「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」はLGBTの学校生活に関する実態調査を行いました。調査によれば対象の68%が学校生活を送る中で、なんらかのいじめを受けたことがあるという結果でした。いじめを受けた理由に、LGBTであることが影響していることも指摘されています。

私は、いじめをしてはいけない理由を、基本的人権の尊重という言葉で教わりました。だとすれば、この調査結果は、基本的人権が守られていない事実を示したとも言えます。

もう一度、国際人権法を確認したいと思います。国際人権法ではすべての国にLGBTを拷問・差別・暴力から保護する義務があるとしています。「拷問・差別・暴力」と強い言葉が並びますが、世界的に見てLGBTであることを理由に拷問を受けたり、暴力被害を受けたりという事例は多いと言えます。LGBTであるだけで死刑に処される国も存在します。

日本にはそういう事実がない、と思われるかもしれませんが、実際、差別や暴力は存在していますし、殺人事件も起こっています。LGBTであることを理由に差別を受け、自殺に追い込まれる命も存在しています。

冒頭に取り上げた自殺総合対策大綱には、教職員へのLGBT理解促進が必要であることが明記されています。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」の調査の結果を見ても、その必要性は大きいと言えます。

LGBTへの理解促進は、国際人教育として必要な分野です。同性婚や、パートナーシップ制度が欧米主要国で認められ始めている今、LGBT理解促進教育は“世界の多様性に通用する日本人”をアピールする良い機会です。

タイミングの良いことに、文部科学省は2年後の2016年度に小学校・中学校・高校の教育内容を定める学習指導要領を全面改定する方針を固めました。

『16年度、指導要領改定へ  英語充実、小学校で授業増  日本史必修化が焦点』

(共同通信 2013/12/29)

国際的に活躍できる人材の育成を目指し、英語教育を充実させることが焦点にあてられているようですが、国際人というならば、語学よりもまず、多様な人々と向き合う姿勢を身につける必要があるでしょう。文化でも、民族でも、違いを理解し向き合う姿勢、いわば、人権を尊重する姿勢は、国際人の必須条件だと言えます。

LGBT理解促進教育という素材、学習指導要領の改定のタイミング、そして2020年の東京オリンピックという舞台。3つの要素が揃った今こそ、日本の国際性を世界に示すチャンスです。

東京オリンピックという世界の注目が集まる大舞台。そこで“世界の多様性に通用する日本人”をアピールできることは、国際社会の一員として意義のあることではないでしょうか。

(いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン共同代表 明智カイト)

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●執筆協力

「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」メンバー

蔵-kura-(日本心理学会認定心理士、産業カウンセラー)

「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」

LGBTの子ども、若者に対するいじめ対策、自殺対策(=生きる支援)などについて取り組みをしている。LGBT当事者が抱えている政策的課題を可視化し、政治家や行政に対して適切な提言を行い問題の解決を目指すことを目標としている。

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