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ブラックフライデーで買い物するよりも、おばあちゃんたちと一緒に服を直そう

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

米国から始まったブラックフライデーはノルウェーですっかりと定着した。しかし、当初から懸念されていたように、「『なにか買わないと』とストレスを増加させる」人など、さまざまな社会問題が指摘されている。

他の時期のセールとブラックフライデーは同じではない。ブラックフライデーならではの社会現象とその問題は環境問題だけではなく、「10月に商品価格を上げ、11月にセール価格にする」などの企業による「詐欺ビジネス」も定番化している。

実は他の時期のセールのほうがお得だったり、実際はそれほどお買い得でなかったりもする。メディアはそのことも報じているが、それでも空気に流されて「とにかく何かをお得に買おう」という市民の心理が利用されている。

規制の必要性が叫ばれるなか、「グリーンフライデー」など、「ヴィンテージを買おう」などの対策がされたり、「何も買わない強さ」が呼びかけられたり、「我が社はブラックフライデーをしません」と価値観をPRする企業も出るなどの動きもでている。

ここ数年のブラックフライデーに対抗するための運動の甲斐あってか、今年は魅了されるような「環境に優しい」選択肢が首都オスロでは相次いだ。オスロ市はブラックフラーデーの週に「リユース週間」をあえてかぶせて、オスロ各地で「おもちゃ修理」「古着交換」「電化製品の修理」などの多くの無料イベントを展開。

北欧では図書館は「本を読む」だけの空間ではなく、さまざまなイベントも開催される 筆者撮影
北欧では図書館は「本を読む」だけの空間ではなく、さまざまなイベントも開催される 筆者撮影

図書館の一室は裁縫室となっていた 筆者撮影
図書館の一室は裁縫室となっていた 筆者撮影

25日(土)はオスロ大学キャンパス内にある公共図書館で「自分で服を直そう!」というイベントに筆者は足を運んだ。ちょうど手直しが必要な服がタンスの中でそのままになっていたので、3着を持参。

現場にはミシンが並び、年金生活者でボランティアをしている「裁縫が得意なおばあちゃんたち」がいた。単に服を渡して、まかせっきりにして修理してもらうのではなく、自分で「これからのスキル」として身につけられるように、ミシンの使い方などを丁寧に教えてくれる。

利用は無料、予約なども必要なく、気軽に立ち寄れる 筆者撮影
利用は無料、予約なども必要なく、気軽に立ち寄れる 筆者撮影

筆者の隣にずっと付き添ってアドバイスし続けれてくれたソールヴァイさんも「今の人はそうではないけれど、私たちの時代はみんな自分で裁縫して服を直していたのよ」とたくさんの思い出話をしてくれた。

筆者撮影
筆者撮影

このイベントの良さは「今ある服を大切に着ることが何よりもサステナブル」と改めて思うなど以外に、「高齢者と交流できる素晴らしさ」だった。

おばあちゃんたちと、これほどのんびりと、おしゃべりに夢中になるのも珍しかったので、筆者も心が和んだ。

裁縫の手伝いはおばあちゃんたちのほかに、学生もしていた 筆者撮影
裁縫の手伝いはおばあちゃんたちのほかに、学生もしていた 筆者撮影

ブラックフライデーが近くなると、広告が増え、買い物ストレスの影響をどうしても受けがちだ。この対抗策が社会で必要とされている中、「高齢者と裁縫をしながら交流する」選択肢はどの国でも応用できる事例のようにも感じた。孤独対策にもなる。

来年のブラックフライデーにもきっとこのようなイベントは開催されるだろうから、手直しが分からない服はそれまでタンスに溜めておこうと思う。

同じく図書館の別室ではサステナブルな服との付き合い方についてのトークショーも 筆者撮影
同じく図書館の別室ではサステナブルな服との付き合い方についてのトークショーも 筆者撮影

家の残り物などでたくさんのものが作れると見本も展示 筆者撮影
家の残り物などでたくさんのものが作れると見本も展示 筆者撮影

筆者撮影
筆者撮影

「こういう時は、こうするといいのよ」とアドバイスをたくさんいただいた 筆者撮影
「こういう時は、こうするといいのよ」とアドバイスをたくさんいただいた 筆者撮影

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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