デンマーク国民投票でプーチンへ「私たちは中立ではいられない」
「今夜、デンマークは重要な信号を私たちの同盟国に送りました。そして私たちはプーチンにも明確な信号を送りました」
「プーチンが自由の国を侵攻し、ヨーロッパの安定を脅かす時、私たちは他国との絆をいっそう強めます」
「自由を妨げるものがヨーロッパのドアをノックし、私たちの大陸で再び戦争が起きる時、中立であることはできません。私たちはウクライナとウクライナの人々を支援します」
国民投票後の記者会見で、フレデリクセン首相は結果を喜ぶとともに、プーチン大統領の行為を批判するメッセージを発した。
デンマークの国民投票では、賛成多数で「EUの共通安全保障・防衛政策への参加」が決まった。
プーチン大統領のウクライナ侵攻が発端となり、デンマークのEUとの関係はさらに深くなり、EUの防衛はさらに強化される。
6月1日のデンマークの国民投票は、歴史的な転換期を意味した。
EU加盟国だが、「EUの共通防衛政策には参加しない」という、特殊な適用除外権を持っていたデンマーク。
だが、ロシアのウクライナ侵攻は、短期間でデンマークの世論を大きく変えた。
国民投票では、適用除外権を放棄するかどうかが問われた。
1日の夜23時、開票率100%。結果は
- イエス 66.9% =適用除外権の放棄にイエス(デンマークはEUの防衛政策に参加する)
- ノー 33.1% =適用除外権の放棄にノー(現状維持し、EUの防衛政策には参加しない)
1993年から続いていた「例外」=オプトアウト(適用除外)の権利のひとつは終わりを告げた。
これからデンマークは、EUとの共通の安全保障・防衛政策に共に参加していくことになる。
だが投票率は低かった
投票率は65.8%と、デンマークにしてはかなり低い数字となった。
これまでのEU関連の国民投票で、今回よりも投票率が低かったのは2014年の55.8%。
国民を十分に動員できなかった背景はこれから反省される必要があるだろう。
EU関連の国民投票の歴史でみると、66.9%の「イエス」は高いほうだ。1972年のEC(ヨーロッパ共同体)加盟を決定した国民投票の「イエス」は63.4%だった。
EU加盟国でありながら適用除外権を持っていたデンマークだが、これは防衛政策だけにとどまらない。ユーロ導入や司法内務の分野にも適用除外権は残るが、デンマークの首相は他の分野の国民投票の開催は否定している。
今回の防衛政策を問い直す国民投票は、ロシアのウクライナ侵攻という特殊な理由があったからだ、と。
デンマーク首相にとって大きな勝利
フレデリクセン首相にとって、この日の国民投票の結果は勝利を意味する。
長い間デンマークが維持してきた、「EU共通政策の適用除外権のひとつを放棄することに成功した、最初の首相」として記憶されることになる。
首相の手腕を証明する出来事にもなったわけだ。
デンマークでは遅くとも2023年6月までに国政選挙が開催される予定。首相にとっては選挙の追い風になったともいえる。
ロシアのウクライナ侵攻で、より強化されるEU
デンマーク国民が選んだ結果を、EU加盟国は喜んで迎え入れている。
スウェーデンとフィンランドのNATO加盟申請と、デンマークの国民投票によるEU共通防衛政策への参加は、ロシアのウクライナ侵攻という同じ出来事が理由だ。
プーチン大統領には、おもしろくないニュースがまた北欧から届いたことになる。