9月のアイスランド国政選挙の前日、首都レイキャビクの国会前では市民が集まりデモに参加していた。

主催者はアイスランドの気候正義ムーブメント「フライデーズ・フォー・フューチャー」など、地元の環境や青年団体だ。若者だけではなく、政党や国会議員など大人の姿も目立った。

団体の代表のひとりであるエイエッド・ハルマンソンさん(21)は、アイスランド大学で政治科学を専攻する大学生だ。

「私たちの声を聞き、気候変動を止めるための行動を起こして欲しいと、政治家に訴えるためにデモをしています」

「アイスランド政府の現在の計画のままでは、気温上昇を1.5度に抑えることはできません。アイスランドはクリーンなイメージがある国かもしれませんが、排出量を多く出しています。でも私たちはその現象を逆にしたい。クリーンな国にしたいんです」

アイスランドでもグレタさんは象徴的な存在

ハルマンソンさんに「将来は政治家になりたい?」と聞くと、「できればなりたくない」と笑った
ハルマンソンさんに「将来は政治家になりたい?」と聞くと、「できればなりたくない」と笑った

「アイスランドでもグレタさんはアイコン的な存在です。(島国という)地理的な理由でグレタさんはアイスランドには来たことはありませんが。私たちのインスピレーションの源は間違いなくグレタさんです」とハルマンソンさんは話す。

「アイスランドにはグレタさんのような存在はいません。一人の人が目立って変化を起こしているわけではなく、ひとりひとりがこのような団体に所属することで変化を起こしています」

政治家に声を届けるために抗議をする

ハルマンソンさんは「アイスランドの政治家の半分ほどは、私たちの声を聞いてくれている」と感じている。

政治家に声を聞いてもらうために何をしているのかと聞くと、「国会前での毎週金曜日のデモ」と答えた。

「もちろん、国会前でのデモには効果があります。活動が大きくなるほど、気候へのダメージを少なくできると信じています」

彼にとって、今回の国政選挙は初めての投票となる。

「もう事前投票をしました。初めての投票は楽しかったです。アイスランドでは80%以上の人が投票します。投票は民主主義に参加するための義務、税金の使い道を知るための手段だと、市民はわかっているからでしょう」

「本当は選挙で投票したかった」

抗議をする若者の中には、今年の選挙でまだ投票権を持たない人も多い。

「政治家はもっと危機を感じて行動してほしい。本当は今年の選挙で私も投票したかった」と答えるユリアさん(15)。

ガブリエラ(17)「私も投票したかった」

ベロニカ(18)「私は投票できますが、どの政党にしようか迷っています。環境対策に熱心な政党が3政党ほどあり、迷っていますね」

3人は高校の「環境部」の部員だという。高校でリサイクルが行われているかなどの環境活動の推進をする部活があるそうだ。

抗議活動の場で食品ロス対策も

抗議の場ではテントの下で大量のパンなどが無料配布されており、何かと聞くと「廃棄予定だった飲食店の食品や飲料をもらい、参加者と分けています。食品ロス対策にもなっていいでしょう。抗議活動は体力と時間がかかるし。おいしいし」と係の人たちが話す。

国会前の抗議の場で、廃棄予定だった食品が配られているのを私は初めて見たが、これはいいアイデアだなと驚いた。

「政治家は象」

アイスランド青年環境協会の会員であり、ケンブリッジ大学で自然保護リーダーシップ学を学ぶフォルケドマリアさん(36)の抗議の紙には、動物の「象」が描かれていた。

部屋に大きな象がいたら、おかしい。「部屋の中に象がいる」は、「目の前に明らかにおかしい現象があるのに、誰もが見ないふりをしていること」を意味する。フォルケドマリアさんは、アイスランドの像は「政治家だ」と説明した。

「これは部屋に象がいるイラストです。象である政治家は前進しようとしない。前進しない政治家を押しているのが私たちです」

「アイスランドの政治家は十分な行動を起こしていないと感じます。私たちの不安を理解しているとは口にしながら、排出量を減らすための計画は提出するけれど、計画通りには実行できません。『パニックにならないで、大丈夫です』と言うけれど、私はそうは思いません。もっと動かない象の政治家を、私たちが押す必要があります」

政治家に絶望して政治や選挙と距離を置くのではなく、自分たちで団結して政治家の背中を後押しするんだ。そういう希望が参加者の瞳で輝いていた。