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ノルウェーテロ犯人の犯行声明を1万円で販売 北欧の本サイト

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
ニュージーランド銃乱射の犯人が影響を受けたとされるブレイビク(写真:ロイター/アフロ)

北欧で頻繁に使用される本の通信サイト「Adlibris」が、2011年に77人を殺害したアンネシュ・ブレイビク受刑者の犯行声明「マニフェスト」を有料で販売していたことが判明した。

ニュージーランドの乱射テロでは、ブレントン・タラント容疑者がブレイビクから影響を受けていたとされている。

ノルウェー国営放送局NRKの報道によると、2018年から、3部に分かれたマニフェストが、本として合計およそ898ノルウェークローネ(約1万1700円)で売られていた。

NRKがサイトに問い合わせた直後、本はサイトから削除された。

「本はいずれにせよ売れていませんでしたが、そうだったとしても、収益は寄付していたでしょう」とサイトの責任者はNRKに答えている。

サイトでは誰もが本を販売することが可能で、自費出版サイトがマニフェストをAdlibrisで販売していた。

Adlibrisはノルウェー、スウェーデン、フィンランドで普及しており、ノルウェーでは最大規模の本の販売サイトのひとつ。

筆者も頻繁に利用しており、本の品揃えやサービスも良い印象を抱いている。本屋では見つけられない本も取り扱っており、セールをすることも多いので、便利なサイトというイメージだ。愛用している側としては、今回のニュースには驚いた。

NRKのニュース記事のコメント欄には、このような意見もあった。

  • 「マニフェストは隠そうとするのではなく、公開して、ブレイビクが何を考えていたか分析し、彼のような人物が増えないように使われたほうがいい」
  • 「どうして今まで誰も、その本が販売されていることに気づかなかったの?」
  • 「怖い!!!」
  • 「この本を買ったバカがいませんように」

ブレイビクの思想を広めまいとするノルウェー

ノルウェーでは、「ブレイビクの思想が拡散されてはいけない」、「第二のブレイビクがうまれないように」という議論がある。

映画化もされ、テロを経験しなかった若い世代へ歴史を伝えようともしている。

一方で、「話しにくい」・「もう忘れて、前に進みたい」という思いを抱く人もおり、学校の教育者にとっても扱いにくいテーマとなっている。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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