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ガソリンスタンドで見つけたCDで映画『アナ雪』に起用!無名のノルウェー女性合唱団とは

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
なぜ今まで話題にならなかったのか不思議な合唱団Photo:A Abumi

北欧ノルウェーは、大ヒット映画『アナと雪の女王』のモデルとなった国だ。ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ製作のスタッフは、リサーチでノルウェーを訪れ、自然風景などからインスピレーションを受けた。

世界遺産ブリッゲンがあるベルゲン、アーケシュフース城、民族衣装、木造教会、フィヨルド、雪山など、モデルとされるスポットを回る観光客もいる。

実は、そのインスピレーションのもととなったひとつに、あまり知られてこなかったものがある。ノルウェーの女性合唱団「カントゥス」(CANTUS)だ。

多くの人が耳にした、ディズニーのロゴが出てくるオープニングソングで「VUELIE」を歌っている。曲は映画用にさらに手が加えられ、その生歌がこちら

ディズニーのスタッフがノルウェーを視察している際、ガソリンスタンドでたまたま目に留まったCD。それはフローデ・フィエルヘイム(Frode Fjellheim)が作詞を手掛けたCANTUSのCDだった。

第三の規模の町トロンハイム出身の合唱団はおよそ30年前に設立され、約30人の女性たちでなる。プロの歌手の集まりではなく、音楽を「趣味」として楽しんでいる。本業は看護師、消防士、教師、建築家などの20~40歳だ。今回8枚目のCD「Northern Lights」をリリースしたばかり。

音楽を趣味として楽しんでいただけのノルウェー人女性たちの声が、ディズニー映画に起用されることになった。この珍しいエピソードは、なぜか今まで国内でも認知されてこなかった。

カラフルな模様や銀のアクセサリーが特徴的な民族衣装 Photo:A Abumi
カラフルな模様や銀のアクセサリーが特徴的な民族衣装 Photo:A Abumi

女性たちは、「ブーナッド」と呼ばれる民族衣装で歌う。実はこの民族衣装もディズニーのスタッフが影響を受けたもの。地域ごとに衣装のデザインは異なる。エルサやアナの衣装をじっくり見てみると、似たような模様を見つけることができるだろう。

Photo:Asaki Abumi
Photo:Asaki Abumi

「ディズニーが曲を使いたいと電話してきたときは、何が起こっているか理解できなかった」と語る合唱団一同。自分たちのサクセスストーリーに、いまだに実感がわかないようだった。

Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi

音楽は趣味であり、本業があることから、合唱団が国内外でツアーをすることは稀。

5月10日はオスロは雪で真っ白に Photo:Asaki Abumi
5月10日はオスロは雪で真っ白に Photo:Asaki Abumi

この日は木造教会で曲が披露され、5月にも関わらず、首都オスロでは大雪が降る。まさに、映画スタッフが影響を受けたという、雪国らしい舞台となった。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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