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NY「ワクチン接種義務化」が強化。飲食店〜公務員〜民間企業や子どもまで。市民の反応は?

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
ワクチン接種証明書の提示が求められるNYの屋内施設。(c) Kasumi Abe

新型コロナの変異ウイルス、オミクロン株の拡大により、ニューヨーク州では1日の新規感染者数がかつてないほど急増しており、27日は4万人を超えた。入院が必要なほどの重症患者数も昨春ほどではないが、それでも前日より647人増えて6173人(27日)と急増中だ。

そんな中ニューヨーク市では27日、すべての民間企業およそ18万4000社を対象に、ワクチン接種の義務化がスタートした。

市ではこれまでも公務員に対して、また屋内飲食や屋外アクティビティの利用者(今月14日以降は子どもも対象に。5〜11歳は1回以上接種し、27日以降は、12歳以上は接種「完了」していなければならない)に対しても、ワクチン接種義務化を推し進めてきたが、ここに来て民間企業の従業員に対しても義務化を設定した形だ。いわゆる(国民皆保険ならぬ)「市民皆ワクチン」のムーブメントの一環である。

この政策の通り、市内ではレストランの屋内やジム、映画館、博物館などの屋内アクティビティ、イベントの利用時において、入り口などでワクチン接種証明書の提示を「必ず」求められる。「当店は大丈夫です」なんていう店は存在しない。ここ最近は一般企業の訪問時や筆者の場合は取材時にも、企業の裁量において接種証明書の提示を求められるようにもなってきた。つまり今この街で、ワクチン接種証明書がなければ、ほとんどの屋内活動や業務が制限されるような状態だ。

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

市の資料によると27日以降、市内の一般企業で働く全従業員は、少なくとも1回(45日以内に2回目)のワクチン接種をしていなければ、そこで働くことは認められない。民間企業の代表者は必要な書類に署名し、職場の「誰もが見える場所」に掲示する必要がある。このような接種義務化の措置は、いずれも全米の自治体で初ということだ。

市内で会社を経営したり代表を務める人に話を聞いたが、この政策に対して「会社として、社員に対してそこまでの強制や締め付けは難しい」「ワクチンを打ってほしいのは理解できるが、このように民間企業を巻き込まないでほしい」というような驚きや戸惑いの声が聞こえてきた。また中には「在宅勤務を続けているので、詳しい情報が入ってきていない」という声もある。

これまで市内の飲食店で行われてきたようなことが、今後は一般企業でも起こる。検査官がオフィスや店舗に抜き打ちで訪問し、違反が見られる場合、初回の罰金1000ドル(11万円相当)が企業側に科されるという。

一方、デブラシオ市長は27日の会見で「企業側に違反が見られる場合、まず指導や通達から行う」と発表した。「きっぱり拒否でもされない限り、罰金をいきなり徴収することはほとんどない」と、線引きについてやや「曖昧な」説明に終始した。

また肝心のデブラシオ市長だがその任期は今年いっぱいであり、あと数日間しかないタイミングで発令された。来年1月1日に新たに就任するエリック・アダムス次期市長は、デブラシオ市長のこの政策を継続するか否かについては言及していない。これについても、民間企業の代表者や従業員からは「今後がいまいち見えてこない」「市は政策の方向性について、迷走しているのではないか」という声も聞こえてきた。

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(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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