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2度墜落の米ボーイング737MAXの運航がついに承認 株価上昇はワクチン開発も関連か

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
グラント郡国際空港に駐機中のボーイング737MAX(2020年11月17日)。(写真:ロイター/アフロ)

2度の航空機墜落事故があった、米ボーイング社の737MAX(737マックス機)。2019年3月より運航停止となっているが、FAA(米連邦航空局)により運航再開が承認されたことを11月18日、主要メディアが一斉に報じた。

1967年に最初に飛行した737マックス機の第4世代である同機。一般の乗客向けに初飛行したのはインドネシアのライオンエアで、2017年5月のことだった。しかし翌年10月にライオンエア、そして2019年3月にエチオピア航空と、5ヵ月の間に2度の墜落事故が起こり、計346人の乗客乗員が死亡した。これを受け、世界中の航空会社48社で登録されている387機すべてが運航停止となっている。

ニューヨークタイムズ紙によると、同機は不具合が見られたMCAS(操縦特性補助システム)などに関連するソフトウェアや飛行マニュアルの修正や更新がなされ、今年6月末より最終の安全点検段階である試験飛行が始まっていた。運航停止から20ヵ月が経ち、このほどFAAより米国内での運航許可を得たということだ。

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ボーイング社は今年6月末より、ワシントン州シアトル市で修正作業の最終段階である試験飛行を行っていた。

「ファイザーやモデルナによる新型コロナウイルスのワクチン開発のニュースも関連してか、ボーイング社の株価は今月40%以上上昇している」と同紙は報じている。

パンデミックにより、世界中の航空業界が打撃を受ける中、ボーイング社も例外ではない。ワシントンポスト紙によると、墜落事故による請求額は200億ドル(約2兆円)以上で、売り上げの損失を加えるとさらに打撃は大きい。

このたびの運航再開の承認で、同社は主力事業である737マックス機の製造や納品を復活させていく。購入のキャンセルなどで製造以来ずっと格納庫で眠っている同機が全部納品されるのは、2023年までかかるだろうということだ。今年初頭に比べ19%減少した13万人の従業員の雇用を、来年は確保できる見立てもある。

そして何より搭乗者にとって一番気になるのは、航空機の安全性だ。改良後の同機は、FAA当局長で自身もデルタ航空の元パイロット、スティーブ・ディクソン氏のお墨付き。「私は自分の家族が737マックス機で飛行することに100%問題はない」と、その安全性に太鼓判を押している。

乗客を乗せて実際に飛ぶのはいつ?

今後はFAAによって、737マックス機を保有する各航空会社のパイロット・トレーニングを承認するプロセスが待っている。前述の2紙によると、アメリカ国内で同機を最初に飛ばすのはアメリカン航空になるとされている。マイアミとニューヨーク(ラガーディア空港)を結ぶ12月29日から1月4日までのフライトにまず使用される計画のようだ。

また、ユナイテッド航空は来年の第1四半期に飛ばす予定(ちなみに同航空会社は今後、アプリもしくはウェブサイト上で予約しようとしている機体が何かを知らせる予定)。またボーイング機のみに依存しているサウスウエスト航空は、第2四半期まで同機の運航再開の予定はないという。

ヨーロッパ諸国はアメリカの措置に従って続くとされ、カナダやブラジルもそれに追随するだろうと見られている。同機の運航停止措置を最初に取った中国は、今後の明確なスケジュールを示していない。

日本では、ANAホールディングスが2021年度以降に最大30機の導入を計画していることが、以前より伝えられている。そのほか、運航停止まで日本と韓国や東南アジアを結んでいた同機の今後の運航再開状況についての公の情報は、日本でもアメリカでも今のところまだ見当たらない。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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