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待機による損失額は? 運航再開できないボーイング737マックス「安ければよし」の声も

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
空港で整列している無数のボーイング737マックス機。写真はサウスウェスト航空。(写真:ロイター/アフロ)

ライオンエア(インドネシア)とエチオピア航空の2つの飛行機墜落事故を受け、今年3月から世界中で運航停止中の米ボーイング737MAX(マックス)機。いまだ運航再開の見通しは立っていない。

ボーイング・マックス機が一般乗客向けに初飛行したのは、2017年。2度も墜落した737マックス機はマックス・シリーズの第4世代だった。今年4月の発表では、それまでに400機の737マックス機が納入され、5,000機以上の発注があったようだ。競合他社エアバスが2007年以降納品したA380は234機といわれているから、いかに多くの需要があったことがわかる。

そんな期待に応えられず世界中の空港でじっと待機し続けているマックス機。その数は世界中で350機以上とみられているが、飛行機も飛ばなければただの鉄の塊。まったく生産性のない地上待機は、損失を産むだけだ。

損失額について、豪ウェブマガジン『ザ・カンバセーション』はこのようにみている。

「145名の乗客を乗せた737マックス機が米国内を1日3往復したとして、国内の航空運賃は平均343.28ドル(約38,000円)なので、通常通り運航していたら1日あたり15万ドル(約1,650万円)の売上げが見込めていただろう」

  • 注:この数字から税金として10〜15%引かれるが、預け荷物の売上げなどは含まれていない

マックス機を保有する世界中の航空会社47社のうち、最大保有数(34機)を誇る米サウスウェスト航空も、運航停止措置以降、全機をいまだ待機させたまま。

これらの鉄の塊は1日につき「500万ドル(約5億5,000万円)相当の損失、(同機を保有する)航空会社全体では6,000万ドル(約66億円)相当の損失」と同誌はみている。

地上待機が長期戦になればなるほど、損失額は膨れ上がる。この先ボーイング社は訴訟を起こされる可能性も否定できないが、2018年、純利益が前年比24%増の105億ドル(約1兆1,500億円)となった同社にとっては雀の涙かもしれない。

3月10日以降、ボーイングの株価は18%下落しており、今後の同社の一挙手一投足にますます注目が集まっている。

「安けりゃ乗ってもいい」の声も

一方、米『ロイター』は消費者目線の記事を5月15日に発表。 同社が成人2,008人を対象に行った飛行機に関する最新の世論調査の結果として、「737マックス機の事故は、価格重視の顧客には悪影響を及ぼしていない」と結論づけた。

「航空券予約の際、飛行機モデルを気にする人はごく少数派。購買を決定づける鍵は手ごろな航空運賃の方だ」と同メディア。

世論調査の主な内容

  • 個人旅行で航空会社を選ぶとしたら(以下人気順):(1)サウスウェスト航空 (2)デルタ航空(3)アメリカン航空(4)ユナイテッド航空(5)ジェットブルー航空(6)アラスカ航空(7)そのほか
  • アメリカ国内の成人の半数は2つの飛行機事故について聞いたことがあるが、これらの事故にボーイング737マックス機が関連していることを知っていたのは43%
  • 個人旅行で航空券を購入する際、最重要視するもの:(1)航空運賃(2)航空会社(3)トランジットの数(4)座席の空き具合
  • 旅行予約サイト「KAYAK」では「2つの事故後に、飛行機モデルの検索機能を使う顧客が増えた」らしいが、調査結果では、飛行機の製造会社やモデル番号を重要視するのは全体の3%たらずだった
  • 航空会社が乗客の安全より利益を優先しているように感じている人は約半数

そのほかの世論調査結果

トランプ大統領は先月半ば、737マックス機というネーミングが定着させたマイナスイメージを懸念し、ツイッターを通して「今後名前を変えリブランディングした方がいい」と発信していた。

しかし(私も含め)実際にアメリカに住む人々にとってこの大国が飛ばす航空機と(一説には米空軍上がりのエリートが多いと言われている)有能なパイロットへの安全神話は確固たるものであるし、飛行機のモデルを意識するのは搭乗したときにたまに機内誌で確認するときぐらいかもしれない。今回、調査対象となった価格重視の消費者もおそらく気にしないだろう。

どちらにせよ国民から寄せられている信頼を裏切ることなく、今後の安全な運航の再開が待たれる。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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