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2度墜落も低迷する航空業界の救世主となるかボーイング737 いつ再開?日米間の運航予定は?

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
2度の墜落でキケンなイメージとなった、ボーイング737MAX。(写真:ロイター/アフロ)

2018年10月のライオンエア(インドネシア)、そして2019年3月のエチオピア航空と5ヵ月以内に2度も墜落し、計346人の乗員乗客が死亡した、米ボーイング社の最新鋭機「737MAX」(以下、737マックス機)。

エチオピア航空機の墜落以降、同型機は世界中で運航停止となり、16ヵ月以上も空港での待機状態が続いている。生産の方も今年1月から停止となったまま。

同社はこの1年間、墜落原因とされる飛行制御ソフトウエアの不備の修正に取り組んできた。待機命令の解除にはアメリカ連邦航空局(FAA)の承認が必要だが、最近になって少し動きが見られ始めた。6月末からボーイング社は、ワシントン州のシアトル市で修正作業の最終段階である試験飛行を開始した。

737 MAX Certification Flights on 6/29 - 7/1/2020 by FAA

運航再開の時期については、アメリカの各主要メディアは専門家の意見を交えながら、今年の半ばごろになるのではないかと見ていたが、時期はずれ込んでこのまま行けば早くても秋以降で、今年の年末ごろになるのではないかとの見方がされている。

墜落事故を起こした737マックス機は2017年にリリースされた当初、期待を一身に集めていた。最大230席と以前のモデルより大きいながらも、燃料効率の高いエンジンを備えているからだ。

ニューヨークタイムズ紙はBoeing’s 737 Max is Being Readied for a Comeback. What Travelers Need to Know.(再開の準備が進んでいるボーイング737Max 旅行者が知っておくべきこと)とする記事を発表した。

記事には、コロナ禍により航空業界の低迷が長期化する中「この737マックス機を保有している航空会社は世界に47社あり、そのどれもが運航再開を待ち望んでいる」とある。この最新モデル機は同じボーイング社の古い737機より約17パーセントも燃料効率が高いという。だから資金不足の航空会社にとって燃費の節約になってありがたいというのだ。何しろ、待機だけでも相当な損失額である。

保有している47社のうち、737マックス機を34機保有する米サウスウエスト航空は、アメリカ国内最大の同型機保有会社だ。次にアメリカン航空(24機)、ユナイテッド航空(14機)と続く。

米デルタ航空は、737マックス機を保有していない。

運航再開後、737マックス機が日米を繋ぐ可能性は?

今後、737マックス機が日本とアメリカを繋ぐ可能性についてはなさそうだ。そもそも737マックス機は中距離フライト用に設計されていて、アメリカと日本間など長距離飛行には導入されないと見られている。ただし、日本と近隣国を繋ぐ中距離フライトに導入される可能性はある。

737マックス機を保有する47社はこちら

  • 運航再開後も同最新機に搭乗したくない場合は、表を参考にするのも一つの手。

ほかにも先述の記事は、Q&A形式で「737マックス機を避ける方法」をいくつか紹介している。

予約時に搭乗する飛行機が737マックス機かどうかを知る方法

「航空会社のサイトから航空券を予約する際、予定使用機種名が表示されるので、クリックすると機種についての詳細を確認できることがある」という。例えばアメリカン航空は以前、737マックス8機を「7M8」と予約ページに表示していた。(ただし悪天候による遅延などで機種は変更されることもあり、予定機種と搭乗機種は必ずしも一致するものではない)

また素人には少し難しいが、飛行機の外観も特徴的だという。737マックス機はほかの機種とは少し違う、独自の特徴的なウイングレッド(両翼の端に取り付けられる小さな翼端板)を備えているそうだ。ゲートでこれから搭乗する飛行機のウイングレッドを確認してみるのもいいかもしれない。

航空券の予約後、やはり737マックス機に乗りたくない場合は?

「基本的に再予約は可能だが、返金はできない」とある。例えばユナイテッド航空は、飛行機の機種について情報の透明化に努めたいとし、顧客が乗りたくない場合は無料で再予約を受け付けたい意向を示している。ただし航空会社各社によって方針が異なるため、各社の方針をチェックするといいだろう。

737マックス機の運航再開はFAAによる厳重な審査、承認後であるから、再開したらほぼ100%安全なはずだ。しかしいまだこのように懐疑的な見方をし、不安に思う読者に情報提供をしているメディアもある。一般の乗客の信頼回復まで時間がかかりそうだ。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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