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NY州新型コロナ感染者89人に急増 知事が緊急事態宣言、高額販売取締りへ(旅行はいつまで大丈夫?)

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
7日、薬局で。NYでは風邪も流行っている。(c) Kasumi Abe

Updated: 感染者の人数の最新アップデート

ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は7日正午、COVID-19(新型コロナウイルス)に関して緊急事態宣言を出した。

州では3月1日に初めて感染者を確認して以来、ここ数日で感染者がいきなり増え続け、7日には前夜から+32人(+13人)で、計76人89人に達した。

この緊急事態宣言の発令により、州は3000万ドル(約31億6000万円)の予算を確保でき、ウイルスの拡散を抑えるための必要物資の調達や配給、ラボスペースやスタッフの迅速な確保などが可能になり、各地方自治体の保健衛生局の支援に繋げるという。

NY州内の感染者数76人89人

(NY時間3月7日現在)6:22pmの発表

76人89人の内訳は、ニューヨーク市内の感染者が11人、同市を除く州全体の感染者が65人78人となっている。詳細

  • 57人70人(ウェストチェスター郡)←前日は34人
  • 11人(ニューヨーク市)←前日は4人 感染者にクルーズ客2人とクイーンズのタクシー(ウーバーという情報もある)運転手1人を含む
  • 4人(ナッソー郡)
  • 2人(ロックランド郡)
  • 2人(サラトガ郡)
  • (NY近郊)ニュージャージー州ではバーゲン郡2人、ペンシルベニア州ではウェイン郡1人、デラウェア郡1人

知事はこの日の記者会見で、「感染が判明すれば、感染者は隔離され他人への感染を防ぎ、封じ込めに繋がるため、ウイルス検査の数を積極的に増やしていく」と発表。

また以下が記者会見で強調された、いくつかのポイント

  • 「検査とは感染している人を見つけるために行うものだ」(元気ならば検査は不要という意の裏返し)
  • 「多くの感染者が見つかったからと恐れてはいけない。これは良いニュースだ。なぜなら隔離する人がわかり、感染の封じ込めに繋がるからだ」
  • 「感染者76人中病院で治療を受けているのは10人=15%」(残りの多くは自宅隔離で快方へ)
  • 「感染する数より完治の数の方が多い」
  • 「事実を知り、落ち着くこと」

また6日の記者会見では、世界中から観光客が訪れ、人口密度の特に高いニューヨーク市について、記者からの「具体的に何人が検査を受けているのか?」との質問に茶を濁し、具体的な数字の明言を避けた。

州の感染者が76人だった7日の時点での会見はこちら。

感染の広がりを防止するため、州内で4000人(ニューヨーク市2700人、ウエストチェスター郡1000人、ナッソー郡70人)が自宅隔離されている。(うち強制隔離は、ニューヨーク市9人、ウエストチェスター郡33人、ナッソー郡1人の計44人)詳細

感染者が急増中のNY市内の様子

感染者は増えているが、相変わらずマスクをしている人はごく一部の人だ。街を行き交う人々の様子は特に深刻さもなく、普段と変わりない。店やレストランも土曜日らしく、どこも顧客で賑わっている。ただし、会社がテレワークを推奨していて、自宅勤務の数は少しずつ増えていると感じる。また人々はちょっとした瞬間に「コロナ感染が増えているよね」と会話に挟むようになった。

この日薬局を覗いてみたが相変わらずマスクは売り切れだった。アルコール消毒液や抗菌用ジェルも姿を消していた。水などは潤沢に在庫があった。

しかし何よりも驚いたのは、風邪薬がほとんど売り切れだったことだ。あまりこのような光景を筆者は見たことがなく、市内では新型コロナウイルスの患者より、風邪(フルー)の患者の多さを実感する。

7日、薬局の風邪薬はほとんどが売り切れだった。(c) Kasumi Abe
7日、薬局の風邪薬はほとんどが売り切れだった。(c) Kasumi Abe

5日には歌手セリーヌ・ディオンが、ブルックリンのバークレーズセンターで大規模なコンサートを行った。映像を見る限り、誰もマスクをしていないようだ。

クオモ知事は「高齢者や持病持ちの人がこの時期、大規模な人の集まりに行くことは奨励しない」と会見で話した。

また全米各地では感染の広がりを懸念し、全米ではSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)などのような毎年恒例の大規模なイベントが続々と中止になっている。市内も同様だ。今後イベント行事はさらに縮小される可能性がある。

州内の不当高額商品NO!州が摘発へ

また知事は記者会見で、この非常事態の中において、州内で不当な価格で販売されているマスクやアルコール消毒液(ハンドサニタイザー)などを摘発の対象とし、販売者は販売ライセンスを失うことになるとも警告した。

州ではFacebookやeBayなどオンライン上ではびこっている高額販売や、医療機関で盗まれたマスクや消毒液などの転売についても調査をするとしている。市民には、それらを見つけ次第、消費者ヘルプライン(800-697-1220)まで届け出るよう通達した。

ニューヨークへの旅行、いつまで大丈夫?

ニューヨークのビル・デブラシオ市長は5日、日本、中国、韓国、イタリア、イランを訪問し帰国した市民に対し、14日間の自主隔離を要請。またその前日には、クオモ知事が5ヵ国(日本、中国、韓国、イタリア、イラン)に留学中の対象大学生300人を帰国後14日、用意した施設に隔離すると発表している。

観光客など日本からの訪問者については、特に言及されていない。

在ニューヨーク日本国総領事館による7日の発表では、「日本からの観光客などが対象となるかについて、当館からニューヨーク市当局に引き続き照会中です。」「なお本日(6日)も日本からの観光客がJFK空港に到着しましたが、入国時の手続について問題があったとの報告は受けておりません。」(原文ママ)

ただしトランプ大統領が3日にした「日本の状況を注視している」という発言通り、状況や数字は刻一刻と変わっていく。

ニューヨークの日系企業で働く筆者の友人は会社の人事部から、日本への一時帰国を避けるようにとの通達があったという。筆者をはじめ多くのニューヨーク在住日本人は、予定していた日本への一時帰国を取りやめている。旅行やビジネス、留学などでニューヨークを行き来する予定がある人は、引き続き注意が必要だ。

ニューヨークタイムズ紙による、現在の症例数がわかるアメリカおよび世界のマップ(アップデート中)

(Text and some photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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