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食品の販売禁止後、再び揺れる米CBD業界 リスクあり? FDAが研究不足と発表

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
今月13日にマイアミで開催されたヘンプエキスポでCBDキャンディを試す参加者。(写真:ロイター/アフロ)

今年の米美容・健康分野のトレンド、CBD。

筆者が最近の記事でも現地取材・掲載した通り、CBD商品はそこら中で購入でき、グーグルの検索ワードでもトレンド入りになっているくらいだ。

そんな中、アメリカ食品医薬品局(FDA)による11月25日付けの最新の報告書が、今年のウェルネス・トレンドに水を差すものとなり、再び業界が混乱している。

大麻草(カンナビス、キャナビス)、特にCBDを使った治療について「FDAは、CBDの安全性について限られたデータしか確認しておらず、無害を裏付ける確証がまだない。リスクを伴うこともあり、使用の場合は細心の注意を」と発表した。

参照記事:

今年7月には、CBD入り飲食物がニューヨークで販売禁止となったばかり。

飲食業界で大ブームの大麻草成分「CBD入り」 NYで販売禁止に

今回の新たな発表によりニュース番組のCNBC局は、「CBDはクリーム、オイル、食品、飲料などに添加されているが、CBD添加飲食物の販売や、FDAが認証していない健康補強表示のあるCBD製品の販売は違法」と報じている。

また、ABC局の朝の情報番組『Good Morning America』でも同日、「FDA concerned people mistakenly believe CBD 'can't hurt' them」(CBDを「害なし」と誤信している人々にFDAが懸念)という見出しで、次のように取り上げた。

CBDに健康的な効果がないということではない。しかし・・・

報道の趣旨はこちら。

FDAは、大麻草やCBD製品が健康的な効果がないとはまったく言っていない。ただ、CBDの安全性に疑問を呈している。これは薬と同じ考え方。薬を服用する際、薬の効用とともに必ず副作用が伴うことを理解するのとまったく同じ。

出典:Good Morning America

FDAはCBD製品によるリスクの「可能性」として、以下の点を挙げている。

  • 肝障害
  • ハーブやサプリメントとの相互作用
  • 男性の生殖機能に関する健康上の懸念

CBD使用のガイドライン

  • 自然療法だからリスクフリーとは限らないことを理解する
  • 摂取において、ヘルスケアのプロバイダー(主治医など、認証された医療提供者)に相談する
  • 使用において心身の変化に注視すること

番組のコメンテーターは、「CBD製品は現在そこらじゅうにあふれているものだが、まだこれから解明していかなければならないものでもある」と結論づけた。

また先の報告書では、FDAがCBDの違法販売を行う15社に警告レターを送付したことも伝えられた。

15の社名:

  • Koi CBD LLC, of Norwalk, California
  • Pink Collections Inc., of Beverly Hills, California
  • Noli Oil, of Southlake, Texas
  • Natural Native LLC, of Norman, Oklahoma
  • Whole Leaf Organics LLC, of Sherman Oaks, California
  • Infinite Product Company LLLP, doing business as Infinite CBD, of Lakewood, Colorado
  • Apex Hemp Oil LLC, of Redmond, Oregon
  • Bella Rose Labs, of Brooklyn, New York
  • Sunflora Inc., of Tampa, Florida/Your CBD Store, of Bradenton, Florida
  • Healthy Hemp Strategies LLC, doing business as Curapure, of Concord, California
  • Private I Salon LLC, of Charlotte, North Carolina
  • Organix Industries Inc., doing business as Plant Organix, of San Bernardino, California
  • Red Pill Medical Inc., of Phoenix, Arizona
  • Sabai Ventures Ltd., of Los Angeles, California
  • Daddy Burt LLC, doing business as Daddy Burt Hemp Co., of Lexington, Kentucky

今回の新たな発表に対して、CBD使用者からは「(CBDにより)大手薬局で薬の売り上げが減少するのを懸念してのことだろう」「ADHDの医療を受けながら育ち、ハーブ系によって救われた者だが・・・」「タバコががんの、アルコール飲料が肝障害の起因になることは周知の事実だが、それについてのコメントは?」など、2000以上のコメントがツイッターなどに寄せられ、人々の注目度が浮き彫りになった。

CBDというものがこれまでに存在しなかったまったく新しい分野ゆえ、開拓派と慎重派の攻防となるのは致し方ないことだろう。薬やサプリと同じように、その成分について知り、摂取する責任はいつも自分にある。

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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