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評判&働きがいのある会社上位の米優良スーパー「ウェグマンズ」人気の理由【徹底解剖】

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(c) Kasumi Abe

ニューヨーク・ブルックリン区の再開発地区ネイビーヤード(Navy Yard)は、都市型屋上農園、ウィスキー蒸溜所、ハードウェア企業に特化したコワーキングスペースなど個性的なスポットが集まり、当地で今もっとも注目されているエリアの1つ。

この一角に10月27日、全米でもっとも注目すべき大型スーパーマーケット・チェーン「Wegmans」(ウェグマンズ)が、市内初の店舗としてオープンした。

オーガニックのラインナップも幅広い。(c) Kasumi Abe
オーガニックのラインナップも幅広い。(c) Kasumi Abe

ブルックリン店は同社の他店舗と比べると規模が小さめだそうだが、それでも6,874平方メートルあり広々としている。「一般的なスーパーの平均的な商品取り扱い数は4万点前後と言われているが、当店には5万点から(敷地面積の広い店舗では)最大7万点の商品が並ぶ」と同社。

全米で大人気のWhole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)やTrader Joe's(トレーダー・ジョーズ)を超えて「全米の企業評判トップ&働きがいのある会社3位」になった優良企業、Wegmansの人気に迫る。

ウェグマンズの歴史

Wegmansは、創業103年の老舗スーパーマーケット。チェーン展開は米東海岸にこだわり、現在101店舗をニューヨーク州、ペンシルベニア州、ニュージャージー州、バージニア州、メリーランド州、マサチューセッツ州に出店している。

 

ニューヨーク州北西部のロチェスター市で1916年、ウォルター&ジョン・ウェグマン兄弟が、前身の「Rochester Fruit & Vegetable Company」をオープンしたのが歴史の始まり。

創業以来100年以上、ずっと家族経営でここまで来た。現在はウォルター氏の孫ダニー氏が会長として、ひ孫のコリーン氏が社長兼CEOとして、経営の実権を握っている。

ウェグマンズ家。(左から)シニア・バイスプレジデントのニコール氏、会長ダニー氏、社長のコリーン氏。出典:wegmans.com
ウェグマンズ家。(左から)シニア・バイスプレジデントのニコール氏、会長ダニー氏、社長のコリーン氏。出典:wegmans.com
前身の「ロチェスター・フルートゥ&ベジタブル・カンパニー」。出典:wegmans.com
前身の「ロチェスター・フルートゥ&ベジタブル・カンパニー」。出典:wegmans.com

全米企業評判1位、働きがいのある会社3位

Wegmansは「カルト・グロッサリーストア」とも呼ばれていて、熱狂的なファンが多い。

優良企業としての実績の高さが、顧客への信用にも繋がっている。同社は今年、The Harris Pollの調査「Corporate Reputation Rankings」(企業評判ランキング)で100社中第1位に選ばれた。

2019年「企業評判ランキング」でアマゾンを抜いて1位。出典:theharrispoll.com
2019年「企業評判ランキング」でアマゾンを抜いて1位。出典:theharrispoll.com

また、ビジネス雑誌『フォーチュン誌』による「100 Best Companies to Work For」(働きがいのある会社ベスト100)では1998年以降21年間、毎年ランクインしており、今年も第3位に選ばれている。

2019年「働きがいのある会社TOP10」。出典:fortune.com
2019年「働きがいのある会社TOP10」。出典:fortune.com

スタッフから職場満足度の高さが伝わってくる

店内は明るく非常に活気がある。昨今はどの店も人件費削減のため人手不足になりがちながら、Wegmansでは各所に配置されたスタッフの数が多いことに気づく。顧客と積極的にコミュニケーションを図ったり、必要とあらばその場でスタッフ同士が話し合ったりと、一人ひとりが責任を持って生き生きと業務に取り組んでいる印象だ。

質問にも親切に答えてくれる。全店で4万9,000人いると言われている従業員だが、その職場満足度や幸福度の高さは自然と顧客側にも伝わってくる。

顧客として利用した感想

店内で日本人の利用者を見かけたので、話を聞いてみた。

「この後ミーティングがあるので夕食を手軽に済ませようと、ロティサリーチキンやチーズ、オーガニックサラダなどを買いに来ました」と言うのは、オープン日に来て今日が2度目という、区内在住の会社経営者、瀧上妙子さん。「オーガニック食品も充実していて、他店よりも安いようです」

また、優良企業という前評判について、「オープン日の混雑ぶりはすごくて、いかにこのスーパーのオープンを人々が待ちわびていたかがわかりました。いろんなメディアに書かれていますが、隅々まで清掃が行き届いているなど、店舗運営の細かいところにまで従業員の満足度が反映されているように感じます」。

筆者も顧客として利用してみた。感想はこちら。

  • スタッフがフレンドリーで親切。
  • 市内他店と比べて店内&駐車場が広く、品ぞろえが豊富。
  • 特に商品ラインナップが多いと感じたのは、(1)チーズ(2)パンなどのベーカリー類(3)鮮魚(4)自然系の健康食品。
この一角すべてがチーズ売り場。(c) Kasumi Abe
この一角すべてがチーズ売り場。(c) Kasumi Abe
  • 魚がとにかく新鮮。生きたロブスターの生簀(いけす)も。
(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe
ロブスターの生簀。(c) Kasumi Abe
ロブスターの生簀。(c) Kasumi Abe
  • 肉売り場には、神戸牛も(価格は高め)。
  • オイル、ドレッシング、コーヒー類など「パッケージ化」された食料の種類は少ない。(倉庫のような棚に陳列し、注力していない)
  • 自然系の健康食品&ウェルネス系のロウには特に当地で大注目のCBD、オーガニック、グルテンフリー、アレルギーフリー、ビーガン、プロバイオティクス商品がたくさんそろっている。
グルテンフリー商品の品ぞろえも豊富。(c) Kasumi Abe
グルテンフリー商品の品ぞろえも豊富。(c) Kasumi Abe

 

注目のCBD商品も充実。(c) Kasumi Abe
注目のCBD商品も充実。(c) Kasumi Abe
  • ランチやディナーにも便利(1)寿司や量り売りの惣菜(2)ピザやハンバーガー類の販売店(3)バーがある。
(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe
2階の飲食&休憩スポットは広くゆったりした作り。(c) Kasumi Abe
2階の飲食&休憩スポットは広くゆったりした作り。(c) Kasumi Abe
  • ファミリーレストランのような雰囲気の飲食&休憩スポットあり。
  • パーティー用のオードブルやローストチキン、ピザなどの大サイズがたくさんあり、大家族はもちろん、感謝祭やクリスマスが控えているこれからの季節は重宝しそう。
  • 他店より高いものもあるが、入会金無料のメンバーシップになるとさまざまな割引がある。
(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

売っているものが美味しくて新鮮で品ぞろえが豊富、店内は明るくて清潔、そしてそこで働いている人が何よりも生き生きとしている。こんな店に人は何度も通いたくなるものだ。

ウェグマンズの優良企業たる実績 

  • 2018年の年間売上高は92億ドル(約9,953億円)。
  • 全店で4万9,000人の雇用を創出。ブルックリン店に従事するスタッフ数は約500人(フルタイムは150人)でそのほとんどを現地雇用。
  • 昨年、約1,450万ポンド(660万キログラム)の食料を、地元のフードバンクなどの団体やプログラムに寄付。

上述の「全米企業評判1位」、「働きがいのある会社3位」に加えて

また、同社の福利厚生にも注目が集まる。特に評判が良いのが、毎年450万ドル(約4億9,000万円)の授業料を援助している奨学金プログラム。1984年にスタートして以来、3万6,500人以上の従業員に、115ミリオンドル(約120億円)を授与してきたことなども、業界で高い評価を得ている。

出典:wegmans.com
出典:wegmans.com

最後に最優良企業Wegmansの社訓も載せておこう。

重きを置く価値

  • 大切なことは、一人ひとりのウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)と成功です。
  • 人生の高水準化。当社が行うサービスには卓越性を求めています。
  • サービスを提供するすべてのコミュニティに違いをもたらします。
  • 私たちのもとで働く人々を尊重し、耳を傾けます。
  • 私たちのもとで働く人々の仕事が改善されることは、お客様やコミュニティへの良い影響にも繋がるため、彼らが意思決定できるようにサポートします。

企業理念

  • 私たちのもとで働いている素晴らしい人々が共通の目標に向かって努力することで、彼らがやろうとしていることは何でも達成できると信じています。
  • この信念のもと、私たちはお客様のニーズに応えるべく、高い目標を設定しています。 私たちのすべての行動は、これを念頭に置いて行われるべきです。
  • 設定したこの高い目標は、私たちのもとで働く人々のニーズを満たして初めて達成できるものと信じています。
  • お客様と私たちのもとで働く人々に、私たちは継続的な改善を誓います。また、毎日私たちのベスト(誓ったことを達成するための最善策)を手に入れることをコミットメントします。

ウェグマンズは働いてくれている人々を「従業員」と呼ばずに「私たちの人々」と表現し、同じ目線で寄り添っている。

働き方改革が叫ばれる日本だが、経営者は彼らの経営哲学や企業理念に少しでも参考になることはあるだろうか。

(Text and photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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