【定年後・60歳からの働き方⑤】就職・転職に悩む人をサポートする「キャリアコンサルタント」。 56歳で国家資格を取得し、定年後はフリーランスで活動予定
相談者が自ら答えにたどり着くためのサポートをする会話術を習得
Q.キャリアコンサルタントの試験とはどのようなものですか? また、養成学校ではどのような勉強をするのでしょうか? 秋間:試験には学科と実技があります。学科は筆記試験で「四肢択一のマークシート方式」。 実技には、①論述(記述式回答。事例記録を読み、設問に解答する)と②面接(受験者がキャリアコンサルタント役となり、キャリアコンサルティングを行うロールプレイ」。学科試験と実技試験の論述に合格しないと、面接には進めません。 まず、学科。学ぶ科目にはいろいろありますが、ジャンルは大きく分けて3つ。「カウンセリング技法」のほかに、「キャリア発達理論」「労働に関する法律や人事関連の法令」などを学びます。どれも、キャリアコンサルタントの仕事においてとても重要なものです。キャリア発達理論は心理学をベースに、相談者が心の中に秘めていて本人も気づいていないような「本質的なニーズや目標」を、いかに引き出すかという会話術のベースになるもの。法律や法令は、労働法をはじめ、就職についてアドバイスするにあたって必要不可欠なものです。 実技の授業では、生徒3人がひと組になって、相談者役、キャリアコンサルタント役、そして1人オブザーバーがつく形で、それを順番に交代しながら繰り返します。この訓練は何時間もやったと思います。 私の場合、人事の仕事を長くしていたので、所得税法や社会保険等の知識はすでにあり、改めて勉強をする必要がなかったというのは少し楽だったかなと思います。逆に、苦労したのは実際の面談を設定したロールプレイングでの試験、「カウンセリングの実技」でした。 実は、カウンセリングの実技に関しても、会社の業務で社員の相談に乗る経験はかなり積んでいたので、法令の知識と同様、これまでの実務経験でほぼそのベースはできていると思っていました。ところが、最初の模擬試験ではC判定…。どこがダメだったのか、さっぱりわかりませんでした。 でも、思い起こせば養成講座に通い始めた当初、先生に「会社で人の相談に乗ることに最も慣れている秋間さんが、逆にある意味、いちばん苦労するかもね」と言われました。 というのも、確かに人事部の仕事では「こうしたらどう?」というような「解決策」を提案するアドバイスをしてきたと思います。でも、最初の授業で先生に言われたのは「キャリアコンサルタントは解決策を提供しない」ということでした。キャリアコンサルタントの仕事は「相談者自身が答えを出せるように支援すること」。この違いはとても大きいです。 キャリアコンサルタントは基本的に、「あなたはどうしたいですか?」ということを聞き出す姿勢に徹します。解決策は提供しませんし、「私はこうだったのよ」という自分の経験を話すこともしません。 人は悶々と悩んでいるようでいて、実は心の中にきちんと答えを持っているものなんです。ただ、そのことに自分自身が気づいていなかったり、明確に答えとして認識していなかったりするだけ。ですから、それに気づいてもらえるよう、ちょっと視点をずらしたり、立ち位置を変えてみたりするきっかけとなる質問を投げかけるようにしています。 養成講座の授業では、こうしたキャリアコンサルタントとしての「クライアントが本当はどうしたいのかを引き出す話し方」のセオリーをひと通り学んだつもりでしたが、人との会話というのはセオリー通りには行かないもの。それまでの会社での経験による「解決策を提供する」という思考が、自分が思っている以上に強く残っていたのかもしれません。 それで、これではまずいと思って、マンツーマンで特訓する講座を何回か受けて、その結果、無事合格することができました。