西武がオリと傷だらけのドロー…勝利方程式の崩壊危機
二死から四球と、ルーキー若林楽人のこの試合4本目の安打で作ったサヨナラのチャンスは冒頭で記したようにものにできなかった。それでも球団タイ記録となる9投手を継ぎ込み、オリックスの7投手と合わせた16人が9イニングにおける合計の登板人数のプロ野球記録を更新した末の引き分けを、辻監督は努めてポジティブに受け止めた。 「いろいろあったけど、出し切りました。選手たちが精いっぱい頑張ってくれて、引き分けという形だったけど、これがいまの限界だからね」 ギャレットの左ひざにはすぐにアイシングの応急処置が施された。しかし、5日の登板について「いやぁ、厳しいかもしれないね」と顔をしかめた指揮官は、増田の代役を含めて当面の再編を余儀なくされた「勝利の方程式」をこう位置づけた。 「試合の流れで。いまは固定できないね」 ただ、ギャレットまで離脱すれば抑えは平良の一択となる。増田の配置転換も考えられたが、通算144セーブをマークし、昨シーズンには初めてセーブ王を獲得した33歳のプライドを尊重し、守護神復活を期してファームでの調整を決めた。目の前の敵と勝負がかかる秋の陣の両方をにらみながら、辛抱を積み重ねる時間が続く。 9連戦の最後となる5日の9回戦で、オリックスは防御率1.39でリーグ1位に立つ山本由伸が先発する。4月21日には京セラドーム大阪で、8回を2失点に抑えられて白星を献上した。その5回戦で先発し、再び対峙する今井達也には現時点のブルペンの状況を踏まえて、可能な限り長いイニングを互角に投げ合う仕事が求められる。 傷だらけとなったシーズン4つ目の引き分けが、借金「2」で5位にあえぐ西武に与えたショックは決して小さくない。それでもシーズン最多タイの15安打を放った打線、リリーフ陣にひと筋の光明を与えた森脇の力投、そして御法度のヘッドスライディングを介して源田が見せた執念を結集させて、球界最高峰の右腕へ真っ向から立ち向かう。 (文責・藤江直人/スポーツライター)