自営業になって変わった「お金」への意識。お金を払うことは「評価を伝えること」であり「応援」である【フリーアナウンサー住吉美紀】
3日の日、生放送を終えてから初売りの催事に伺った。田谷さんとリアルでは初対面。挨拶より前に、田谷さんの第一声が「Blue Oceanを聴いた方が既に驚くほどたくさん来てくださっています! テレビで紹介された時よりもずっと多くの方です」と喜びの声だった。 私はホッとした。微力ながらも役に立てたことがとてもうれしかった。リスナーの皆さんが、買うことで応援の気持ちを表そうと思ってくださったんだと、リスナーの皆さんの優しい気持ちにも、感激が込み上げた。 会場には、お椀や重箱、ポップな柄のお皿やカフェオレボール、飾り箱や茶道具など、テイストも違う、思ったよりもずっとバラエティに富んだ展示品が数多く並んでいた。個々の展示品について田谷さんに伺う。 「これは、地震で欠けてしまったお椀の、欠けた部分に金継ぎをして、それを模様にした作品なんです。未来に、そして色々なご縁にも繋がれという想いを込めて『金繋(きんつぎ)』と名付けました」 「職人ごとに得意技術もセンスも違うんですが、敢えて揃えずに『好きなままに作ってください』と話しています。そのことでそれぞれの強みが出る。そして、色々な輪島塗が生まれる余白ができるんです」 そして「合鹿椀(ごうろくわん)」という少し高めの台が付いた、どんぶり大のお椀を見つけ、これは何用ですか、と伺うと 「これを気に留めてくださってうれしいです。昔、合鹿という農村地域があって、農作業の合間に床に置いて食事ができるようにと、高い台をつけたお椀があって。それを輪島塗に取り入れたお椀なんです。僕が、由来も形もとても気に入っているお椀です」 「輪島の小学校では、毎週金曜日の給食はカレー。輪島塗をどんぶりのように使ってカレーを食べていたんですよ。輪島塗は脂っこいものでもなんでも入れて大丈夫なんです」 田谷さんは愛おしそうに、そしてうれしそうに、輪島塗について語る。 「昨年は、地震のことを語る機会のほうが多かったんですが、自分は本当は、輪島塗について語りたい人なんです」 会場に訪れた方に、直接自分の言葉で語る田谷さんの眼差しは深く、輪島塗への愛情と地元への想いが溢れていた。本当に素敵な方だ。彼の存在だけでも、輪島の未来に希望を感じるほどに。 私は応援の気持ちを込めて、買い物をした。お味噌汁にぴったりのお椀。そして、形もストーリーも琴線に触れた、合鹿椀を注文した。 その晩、早速お椀でお雑煮の残りをいただいてみた。口当たりが柔らかく、心地よく、縁の角度が丁度飲みやすく、美味しかった。 お金は使い方次第で、コミュニケーション手段以上の可能性を秘めている。今だ、というタイミングで投じれば、ご縁を繋ぎとめ、強い絆を生んでくれることもある。買い物をしたことで、こんなに温かく、人生がふっくらと豊かになったような気持ちになれるなんて。間違いなく、2025年、良い買い初めとなった。 なるほど、と思った方はぜひ、今月の展示会に足を運んでみてください。
住吉 美紀