「幸せは冷蔵庫の残り物で作る料理にある」――秋元康が語るスター、ヒット、自分
流行は自分の感覚でつかむ。「63歳のおっさんの耳に入ってくるくらいがちょうどいい」と考え、取材もマーケティングもしない。 「僕が女子高生たちに話を聞いて、はやっている言葉や考え方を知って詞を書いても、リアルなものにならないと思うんです。同じ立場で話を聞かないと理解できない。それよりも自然と耳に入ってきて面白いなと思うことが、皆さんに届けるちょうどいいタイミングかな、と」 「自分が釣りたいと思うところで釣り糸を垂らしているほうがいい。マーケティングをすると、みんなが同じ結論に至る。ここの海にどんな魚がいるかを調べて、それに合った餌で釣り始めたら、他の人がやっても同じになるじゃないですか。何本も釣り糸が垂らされて、競争率も高い」 人から聞いた話が材料になる。ものを作ることは「想像」だと考えている。 「ちょっとした1行から、何を想像するかが仕事のような気がするんです。昔読んだ新聞に、大みそかになると、上野駅のトイレのゴミ箱に履き古された靴が捨ててあるという記事があって。たぶん、出稼ぎに来た方がふるさとに帰る時、新しい靴に履き替えたんだと思う。それを詞にもできるだろうし、ドラマや映画、小説にもできる。その勝手な想像、妄想がクリエーティブだと思うんですよね」
大事にしているのはストーリーだ。オーディションでも同じである。 「ジャニー(喜多川)さんのように見抜く力はない。僕はその人が持っている何かを題材に、ストーリーを考える。0.1を1にすることがプロデュースだと思うんです。この人が持つ淡いブルーを明確にブルーにしたら魅力的だな、みたいに。まずは、0.1を見つける。例えば、オーディションの間、ずっと泣いてた女の子がいて。スタッフは『泣いてて何もできないんじゃ、話にならないので落としましょう』と言うんですけど、僕は逆に、そんな人は見たことがないので合格にしたいと思った。もう一度会いたくなる魅力っていうんですかね」 「スターというのは深読みをしたくなる人。普通なんですけど、どこかにダイヤモンドが入ってるんじゃないかと思わせる人が、いろんな人の手で磨かれて、ダイヤモンドになる気がします。僕はこの46年、昨日まで隣にいた人がスターになっていくのを見ている。だから、どんな人もスターになるという視点で見ています」