「幸せは冷蔵庫の残り物で作る料理にある」――秋元康が語るスター、ヒット、自分
46年間、締め切りがない日はない
半世紀近く、日本のエンターテインメント界を中心に活躍してきた。昨今は、韓国の音楽、映画やドラマが国際的に人気を集めている。違いをどう捉えているのだろうか。 「われわれはどうしても、明日、来週、来月、1年と、短いサイクルの中でものを作っていたと思うんですよね。10年、30年、100年単位で考えなければいけない。韓国はかなり前から世界のマーケットを意識して、映画学校をつくったり、語学やダンスに力を入れたりしてきた。意識を変えて、国策としてエンターテインメントを考えないといけないと思いますね」
近年は『あなたの番です』『共演NG』など、企画を手掛けたドラマが話題を呼んだ。自身も普段、夜中までさまざまな配信ドラマを見ているという。アルバイト感覚で始めた高校生のころから46年間、締め切りがない日はない。ここ30年ほど、日々の睡眠時間は約3時間。今も朝6時ごろに寝て9時ごろには起きる。 「挫折はないですね。自分は何が得意で、どんな理由でこの仕事をしているのか。そういう根拠がないまま、ずっとやってきている。根拠があったら、それが覆ると挫折になるけど、ないから何もない。失敗しても『もともとプロじゃないしな』と。落ち込むことはほとんどないですね。だから、才能のある人の作品に嫉妬はしないし、すぐ感心してしまいます」 今年、63歳を迎えた。老いは「愛おしい」と言う。好奇心が尽きたら引退しようと思っているが、今のところその兆しはない。 「どんなことも『面白そう』という言葉に変換すると、面白く思えてくる。どうしたら今日を楽しく生きられるかを考えてますね。幸せは、冷蔵庫の残り物で作る料理だと思うんですよ。作れないものを考えたら、きりがない。世界一大きな冷蔵庫に世界中の食材を集めても、作れない料理はある。残り物で『お好み焼きもどきは作れるね』とか、作れるものを考えたらすごく幸せだと思うんですよね」