スーパーショットでツアー通算3勝目の古江彩佳がミレニアム世代のエース格へ…東京五輪代表争いにも参戦
今大会中には、「帰れま10」と名付けた居残り練習を自らに課した。8ヤードほどの位置からボール籠に「フェーズを開いて10球」「58度で10球」の計20球入れるまで帰らないという、遊び心を加えたユニークな練習で「得意でない」というアプローチを磨いた。 あわやイーグルの一打は、勝負どころでギアを上げた会心のショットに見えたが、「いつもと同じ。打つことだけを考えていた。きょう一番集中したところですか? あれ、ないな。うん、ないです」と、拍子抜けするほど淡々としていた。 9月の今季初勝利もプレーオフを制しての勝利。「プレーオフは嫌いではないですね。楽しいかなと思います。(アマチュア時代から)勝つことの方が多かったので、嫌いじゃないんです。緊張はしません」という強心臓。どんなときでもフラットでいられる明鏡止水のゴルフは、プロ2年目とは思えない域にある。 技術力と精神力が噛み合い結果につながり存在感を示し始めた古江だが、何も急成長したわけではない。 ジュニア時代からその実力は高く評価され、JGA(日本ゴルフ協会)のナショナルチームの一員としても活躍した。しかし、兵庫・滝川二高では同い年の安田祐香に次ぐ2番手の座に甘んじていた。入学当初は古江がエース格だったが、2年時に安田が「日本女子アマ」で優勝してからは立場が逆転。安田らと団体で全国優勝の経験はあるものの個人戦でのビッグタイトルはなく、注目度や人気の面でも安田の後塵を拝していた。 卒業後も2番手の位置からなかなか抜け出せず、昨年6月の「日本女子アマ」では最終組から出た最終日に、JGA幹部が運転するカートに3番ウッドを折られるという“事件”も発生した。 注目の安田らがプレーする前の組に追いつこうとしていたJGA幹部が、古江らのキャディーバッグを積んだカートを不用意に追い越す際に起きた不運な出来事は、当時の古江が置かれた立場を物語る象徴的な“事件”である。古江の中に燻っていた何かが目覚めたのか。 そこから彼女は吹っ切れたように快進撃を続けた。